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今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第6回/全8回)

こんにちは。弁護士の紙尾浩道です。

今日もスポーツ団体ガバナンスコード(以下「GC」といいますね)のお話の続きです。

これまでの講義は、末尾にリンクを掲載したので、そちらをご確認ください。

さて、今日は原則5をご紹介します。
早速見てみましょう。

原則5 

法令に基づく情報開示を適切に行うとともに,組織運営に係る情報を積極的 に開示することにより,組織運営の透明性の確保を図るべきである。

法令に基づく情報開示の代表的なものは、そう、決算書です。

他にも、次のようなタイトルの書類が、会社の形態や規模によって開示義務化されています。


○正味財産増減計算書(損益計算書、活動計算書も同じです。)
○財務諸表に対する注記
○附属明細書


法人格を取得すると、これらの義務がかかってくるのです。
特に、株式会社はあくまで営利目的(※)ですので、規模が大きくなるまでは、その決算書の公表のみで大丈夫ですが、一般社団法人・財団法人については、もともと、行政に監督されていたのが自由化された代わりに、きちんと決算書等を開示すべしとなりました。

※ここでの『営利』の意味
「もしも儲けが出れば、制度上、株主さんに利益を配当できる」という意味で、反対語である『非営利』は「仮に儲けが出ても、社員さんに利益を配当することは制度上できない」という意味です。
例えば、株式会社カミオという会社が、野菜を売って利益を出し、それは慈善事業に全額寄付するとしても、『非営利』ではありません。なぜなら、カミオの気が変わって利益を溜め込んで、株主の皆様に配当することも制度上できるからです。
反対に、一般社団法人カミオという法人が、野菜を売って利益を出し、それを慈善事業に全額寄付すると、『非営利』です。ただ、理由は、「全額慈善事業に寄付するから」ではなく、「一般社団法人という形態では、社員に利益を分配することができないとされているから」なのです。


※法人って何?株式会社と社団法人?なんやそれという方は、末尾から第2回の記事に飛んでね!

つまり、法人格はあげるけど、その代わりきちんと毎年、法人の資産(手持ち財産)と負債(借金・未払金)の状況は、きちんと対外的に公表しろよ、 となっています。

お仕事で、決算書類を読むことがある方はもちろん、「たった〇〇日で決算書がみるみる読める!」みたいな本を教養として学ぼうとした方も多いと思いますが、あれ、実は開示が義務になっていたりするからこそ、それを見る側の知識が必要になるんです!

ここまで読んで、勘の鋭い方(かつ、過去のこのシリーズの記事を読んで下さった方)はお気づきかもしれません。

おそらく、この原則5を最終目的にして、原則4(適切な会計)が組み込まれたんだと思います。

だって、適切な会計原則に従っていない手書きのお小遣い日記見せられても、困っちゃいますから。

さて、本論に戻すと、原則5では、決算書等以外にも、組織運営に関する情報の公表を求めており、典型的には、役員の紹介、組織図や指揮系統が記載されることが多いです。

バスケットボール協会


テニス協会


他にも、透明性確保をしろと書いてありますが、細く説明にはこんなことが書いてありました。

・ また,法人格の有無にかかわらず,以下のような情報について積極的に開示する ことが望まれる。
1 組織運営に重要な影響を及ぼし得る役職員の選任に関する情報

2 各団体のステークホルダーに重要な影響を及ぼし得る情報(例えば,選手選考を行っている団体においては選手選考に関する規程等が考えられる。)

3 ステークホルダーに対する説明責任を果たす観点から開示することが適当と 考えられる情報(例えば,団体の活動に当たって会費の徴収や寄附の募集等を行っている場合,これらの会計処理(使途等)の状況等が考えられる。)

・ さらに,組織運営の透明性を確保し,適正なガバナンスを実現するとともに,開か れた一般スポーツ団体としてステークホルダー及び国民・社会から信頼を得るた めには,ガバナンスコードの遵守状況に関する情報についても積極的に開示する
ことが求められる。

ここは、すごく難しいです。

そもそも論として、今論じているのは、「一般向けGC」であり、中央競技団体(NF)向けのGCではないのです。

なので、対象にはプロスポーツチームなんかも含まれてます。

例えば、Jリーグの1チームに、選手選考に関する規程を作れと言っても、その日の調子だとか、他のメンバーとの兼ね合いとか、試合日程も全て込み込みで考慮せざるを得ません。

こう見てくると、この辺の補足説明は、どうやら、都道府県協会や、その下部団体に向けたメッセージに近いように読み取れます。

ついでに、ガバナンスコードへの対応状況も自分で公表するのが望ましい、、、と。

やっぱり、これを実現するには、弁護士が手伝う必要しかない!

手始めに、JPAでのガバナンスコード対応を頑張りますが、もっと広く、支援でき、ついでにその支援がその団体の有形無形の財産になるように頑張ります!

以上、今更聞けない、スポーツ団体ガバナンスコードって何?の話(第6回/全8回)でした。

では、また。

↓↓↓↓過去シリーズ記事のリンク↓↓↓↓


【第1回 全体像(NF向けと一般向けがある!)】

【第2回 一般向けGC原則1 対象となる団体】

【第3回 一般向けGC原則2 基本計画】

【第4回 一般向けGC原則3 コンプライアンス】

【第5回 一般向けGC原則4 公正な会計】

記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。