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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第57回]


楓橋夜泊 礒部晴樹・画


楓橋夜泊         ふうきょうやはく

月落烏啼霜満天      月落ち カラスないて 霜天に満つ
江楓漁火対愁眠      こうふう ぎょか 愁眠に対す
姑蘇城外寒山寺      こそ城外 寒山寺
夜半鐘声到客船      夜半のしょうせい かく船に到る

張継

月は沈み カラスが啼き 霜が満天に
河むこうの楓ごしに漁火が 眠れぬ目にまたたく
姑蘇の城外 寒山寺から
明け方の鐘の音が 客船にとどいた

*姑蘇=蘇州の古名
人口に膾炙した、有名な詩です。
日本人に最も好まれた漢詩のひとつではないでしょうか。
私も旅先の旅館の掛け軸で、この詩の書をみたことがあります。
絵心を誘う詩で、いままでに多くの絵が描かれたことでしょう。

月が落ちて沈んでしまったのに、この絵では丸々と描いてますが、
この月のワンポイント効果がおおきく、ここは詩と異なります。
また夜半なら、まだ真っ暗なはずですが、それだと絵にならないので、
詩の内容の忠実な説明画ではなく、
独立した絵として自由に制作しています。

蘇州の動画をみると、
運河をはさんで両岸に居酒屋などが、赤い提灯をたくさんかかげ、
太鼓橋の下を小さな舟が行きかい、まさに東洋のベニスです。
旅情を誘う風景は、まだまだたくさん絵が描けそうです。









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