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マーケター、プランナー、ライターの皆様に贈るちょっとした商標のお話 #ホットリンク

※このnoteは、3月10日に配信したホットリンク満月メルマガのバックナンバーです。

ごきげんよう。ラブレター石渡です。2020年に入り、毎月満月の日の配信になったホットリンクのメルマガ。今回は、弁理士っぽく「商標」の軽いお勉強ネタをお届けします。

マーケター、プランナー、ライターの皆さんが、一度は、遭遇したことがある(かもしれない)「商標」。

例えば、新商品のネーミングを決めるとき、ロゴマークを作るとき、イベントの企画名を考えるとき、「このネーミングって、誰か使ってないの?」とか「この言葉って、使っていいんだよね...??」と思ったことはないでしょうか。


そもそも商標とは何でしょうか。語弊を恐れず(法的な正確性を度外視して)シンプルに言うならば、文字やロゴ等で、商品やサービスの名称等に使用されるもの、となります。「商標」と言われてすぐに思いつくのは「文字」や「ロゴ」だと思いますが、他にも、ペットボトルの形状や屋外宣伝用人形の形状といった「立体的形状」もありますし、5年前には「音」や「色彩」等も商標として保護されるようになりました。「商標」は、文字等に蓄積される信用(ブランド)を保護するものですので、信用が蓄積し得るものとして、音や色彩等が商標の対象として追加された、ということです。


この商標についての権利が「商標権」ということになるのですが、商標権をかたち作るものとしてもう一つ重要なものが「商品と役務(サービス)」です。制度上、商品が1から34、サービスが35から45とジャンル分けされており、この各ジャンルの商品・サービスと商標の組み合わせで、商標権の内容が決まります。そして、この商標権の範囲で、勝手に商標を使用すると商標権を侵害してしまう、ということになりなす。


商標権を侵害するか否かという話は、まず「商標が似ているか」と「商品・サービスが似ているか」という二つの基準で判断されます。例えば、医薬品は「5」、バッグは「18」、ビールは「32」、広告業は「35」、デザインは「42」とジャンルが分かれており、このジャンルと同じジャンルで勝手に商標を使用すると商標権を侵害してしまう、ということになります。ですので、例えば、医薬品の商品名をビールの商品名に使用しても、医薬品の商品名に関する商標権は侵害しない、ということになります(実際は、こういうシンプルな話にはならないケースもあります。また、そもそも、本当は、「類似群」というグループを基準に考えるのでジャンルを跨いで商標権を侵害することもありますし、同じジャンルでも問題がない場合もあるのですが、分かりにくくなるので割愛します)。


さらに、商標権を侵害するか否かを考えるときに重要なポイントとして「商標の機能を侵害しているか」があります。商標の機能は大きく二つあり、一つは「生産者、提供者が誰かを示す機能」(出所表示機能)で、もう一つは「商品・サービスの品質を保証する機能」(品質保証機能)です。ここで大事なのは、実は、「商標が似ているか」と「商品・サービスが似ているか」という二つの基準を満たしたとしても、この「生産者、提供者が誰かを示す機能」と「商品・サービスの品質を保証する機能」を侵害していなければ、商標権は侵害しないと考えられている点です。


この点で思い返すのが、昨年、度々話題になった、「日常生活で使われる言葉なのに商標がとられていた」問題です。一見すると、商標がとられた時点で、もう日常生活でその言葉を使うことができないように思えるのですが、商標権を侵害するか否かのポイントは先述のとおりです。特に、「生産者、提供者が誰かを示す機能」と「商品・サービスの品質を保証する機能」を侵害しているか否かという視点で考えると、あまり問題にならないことがわかります(個別具体的な案件は、周りの専門家に相談してくださいね)。

上記のような専門的なお話は、きっかけがないと、なかなか触れることがないかと思いますので、この場を借りてお話ししました。


満月の日に、私から貴方に贈るラブレター。では、またいつかの満月の日に。

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