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白と青の衝撃  『夏葉社日記』

                                                                            


 いりえさんでの『こだまさんとの読書会』の参加権(?)を手に入れてから実際にイベントに参加するまでの間にも、いりえさんにはお邪魔した。
 Xでいりえさんのポストするおすすめの本で気になるものがあったからだ。


 秋 峰善さんの『夏葉社日記』。シンプルなトーンの表紙が昔のインディーズバンドのCDのジャケットみたいだ。予想以上に売れてるらしい。
この本と、もう1冊気になる本があったので、神保町に向かう。
 

 大きな看板が目印の雑居ビルに着くとエレベーターのボタンを押し、目的の階に降りる。小さな看板が掛かった白いドアを心持ちゆっくりと開ける。

「こんにちは」と店主が驚いた様な表情で出迎えてくれた。
短い期間に店に来過ぎだったろうか?(この時はまだ自分のタイミングなりに問題があると思っていた。 ※「いりえ にまつわるエトセトラ」参照)

「『こだまさんとの読書会』の予約取ってもらえてよかったです!」と店主は言ってくれた。 
 応募方法の確認の為だけに、1時間くらいかけて店まで来てた自分が落選したら申し訳ないと思ってくれてたらしい。
『こだまさんとの読書会』当日について2,3の質問をした後、この日の本題に入る。

「気になる本があったので、ちょっと試し読みさせてもらおうと思って。」
「ああ、どうぞ。」
先に手に取ったのは他のもう1冊の方だった。透明な袋に入っている。
「この本、袋から出してもいいですか?」と店主に遠慮がちに聞くと
「はい、どうぞ。」と帰って来る。太っ腹である。

 読んでみると、残念ながら今の自分には響かなかった。
丁寧に本を袋に入れ戻して、「すみません、ちょっと思ってたのと違いました。」と言って棚の元あった場所に置いた。 
『夏葉社日記』の方はどうだろうと、棚をしばらく探すが見当たらない。

「『夏葉社日記』ってありますか?」
「あ、『夏葉社日記』は表紙が白くて汚れやすいんで、お求めになる方がいたらお出ししてるんです。」と店主は何やら小さな段ボール箱を、少し奥まった所から引っ張り出した。 
箱を開けると白地に青の線でデザインされた背表紙が目に飛び込んできた。

「試し読みさせてもらってもいいですか?」
「はい、どうぞ。」と1冊渡してもらう。

 少しピリピリとした雰囲気の冒頭から次のページに読み進めると、いきなり作者から憧れの人への手紙の文章が始まる。 
個人的には人が心の底から敬意を表しつつ、好きなものを語っているのを見聞きするのは好きだ。そして、なんだかすらすらと読める。自分が本を買うときの条件だ。

「これください。」と店主にいうと、本の値段を告げられた。
「1,650円です。」 
一瞬、戸惑った。 本のサイズ感から自分の脳は文庫を買うようなつもりでいたのだ。 本の作りはハードカバーの単行本と同じでありサイズ感だけで油断しきっていた。

しかし、この本はどこの本屋にもあるわけではないし、今、読まなければいけないような気がしてそのまま買った。

(長くなりそうなので、つづく。)

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