怠惰 意味

六月中頃の昼下がりは既に鋭さを帯びた日差しに満ちる。快晴の最中の街並みは明朗快活な藍色の様相を呈して、ああ、馴染めないな、と思う。季節が夏に向かうに連れて汚泥の心中に希死念慮を燃やすのは、輪郭を拐かす濁りが鳴りを潜める内に自分の孤独が浮き彫りになるからだろう。

チー牛の彼は自身の陰茎を親指の腹で擦りながらVtuberのコメント欄にそう書き残した。480円のスーパーチャットである。彼にとっては昼食一食分に値する大金であったが、足ピンポエニー(足をピンと張らせたポエムオナニー)の快感とのトレードオフと思えばそのクソデブな腹の虫も鳴りを顰める。自慰行為の為のその端金を画面の向こうで誰が何の為にどの様に使おうとも、つまるところ何の関係も無く、どうでもいいのだ。

彼の愚息は甘勃起の様相を呈している。もう随分と外に出る事もなかった肉体は、フル勃起しうるほどの気力を持ちえないのは自明の理であろう。円を描く様な指先から伝う淡白な快感は、魂さえも薄めてしまう錯覚をもたらす。溶けゆく自我が子供部屋にてスープになっても、世界の形は何も変わらない。

ガラス玉のような無垢の瞳でYoutubeを眺め続ける彼は確かに孤独であった。それは社会が彼を弾き出したのか、彼自身が世界の一欠片である事を放棄したのか、果たして何方であったろうか。それでも、居ても居なくても良い彼にも、その自認の通りに、光は平等に降り注ぐ。

ある日その平等が空虚に思えて、僕はあれもそれも辞めてしまった。それが。

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