甲斐よしひろ Billboard LIVE 2017 EAST to WEST @ TOKYO
1曲目は「クール・イブニング」だった。
後期サウンドストリートのオープニングテーマだった曲。ノスタルジーとともに一瞬で甲斐よしひろの世界に引き込まれていた。
Billboard LIVE も今回で3回目。
最初の年、映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』の中に出てくるセリフ、
”古くて新しければフォークソングだ”
にインスパイアされて「フォークをやろう」ということで始まった。
今年のメンバーは昨年と同じ、ギター:鈴木健太、ダブルベース:木村将之、フィドル:磯部舞子。
アコースティック GIGの形にはなっている。しかし、鳴り響いていたサウンドはまぎれもなくロックだった。
甲斐よしひろが新譜を書かない、ということが一部で批判されている。その気分はわからなくはない。だが、彼のライブは、昔の曲をやってもただの焼き直しではない。スタイルの上では常にチャレンジを続けている。90年代後半、新宿のパワーステーションを中心に開催された『ROCKUMENT』。2000年に行われたアコースティックライブツアー『一人きり甲斐よしひろ・My name is KAI』。
さらに言えば、カバー曲も聞き逃せない。今回は、ジャックスの早川義夫の『サルビアの花』を演じて見せた。多くの人がカバーしている名曲である。甲斐自身も78年に発表したソロアルバム『翼あるもの』でカバーしている。ただ、ライブで演奏されたことは記憶にない。今回初めて聞いたのだが、絶品だった。僕が知る限り、ベストカバーだと思う。オリジナルの早川義夫と違うテーストを醸し出し、あたかもオリジナルであるかのように歌いあげる、秀逸な歌だった。
だから、新譜を書かないことに寂しさは覚えても、それだけでダメだという気にはならないのだ。
そんな中、今回強く印象に残った曲がある。ラストに歌われた『ランナウェイ・ブルース』だ。この曲は、甲斐バンド40周年記念のツアーでお土産としてついてきた、マキシシングルに収録されていた曲である。つまり数少ない新譜だ。それをラストに持ってきたことに、ちょっとした意気込みを感じ取ったのだが、それは考え過ぎか。そういえば、昨年のBillboardでは同じマキシシングルに入っていた『黄昏に消えた』をアンコールで演っていた。次に向けて何かを考えているのではないだろうか。
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