嵐の季節

嵐の季節 / 石田伸也著

一気に読んでしまった。
甲斐バンドの40周年ではあるけど、甲斐よしひろは出てこない。バンドのメンバーを含む、周辺で関わりを持った24名への取材を通して構成されている。

結成40周年ではあるが、その間、甲斐バンドクレジットで活動した期間は20年強。あとはソロであったり、(短期間ではあったが)「KAI Five」っであったりしたわけである。ただこの本で取り上げられているのはあくまで「甲斐バンド」だ。それもほとんどが、86年の解散以前の話で占められている。解散以降、活動再開後のことは、最終章の終わりにちょっと触れられているだけである。

そうなると思い出されるのが、田家秀樹氏の『ポップコーンをほおばって』(単行本1985年、文庫1987年)である。取材対象は重複している人もいれば、まったく違う人もいる。

『ポップコーンをほおばって』では重要な証言者であった佐藤剛や井出情児は今回は登場しない。一方、舞台監督の諌山喜由、初期のマネージャーであった武石輝代、照明の前島良彦は同じように重要な証言者として登場する。

そこにどんな意図があったのか、残念ながら私には読み取ることはできなかった。取材内容に重複した部分があったのか?それとも取材スケジュールの都合なのか、そのへんは著者である石田伸也氏に聞いてみない限りわからないことだろう。

ただその分、『ポップコーンをほおばって』には登場しない人のエピソードもふんだんに盛り込まれており、それは興味深い。『ポップコーンを~』はバンド活動と同時並行的に書かれたものだが、今回は過去をじっくり振り返えりながら書かれている。いまだからこそ明かされることも多いと感じた。

甲斐バンドの衣装をピーコが担当していた時期がある、というのは初耳だった。楽曲を提供した、鹿取容子、高樹澪などの回想も興味深い。デビュー当時のメンバーである、ベースの長岡和弘や松藤英男の証言も貴重だ。
また、プロレスラー・小橋建太がガンからの復帰を目指す過程で『熱狂(ステージ)』を聴きながらリハビリをしていった話は感動的である。

ここから先は

844字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?