2023.04.29
「どちらが正しいか正しくないか、どちらが良いか悪いかではなくて、」というのはわたしの口癖である。
とにかくことあるごとにこれを言っている。言ってる日は1日に4,5回言ってるレベルで。
予防線と言ってしまえばそこまでだけれど、実際のところあらゆることに関して正しいとか間違ってるとか良いとか悪いとか、そういう二元論を持ち出すことを避けている。そんなの視点がどこにあるかによって違った見え方をするに決まっているからだ。
インターネットをやっていると(インターネットに限った話じゃあないが)、いろいろな論争を目にすることがある。
「〇〇はマナーとして正しくない」とか、まあ言い分はわかる。
でも別にそれって誰かに迷惑かけてるわけでもないしいいんじゃねっすか、みたいな、なんか不毛だなあ、たまたま自分が好きだと思えないものが目について不快だったからマナーを持ち出してるみたいに見えちゃうなあ、みたいなことがしばしばある。
最近、そういった論争を見るたびに決まって思い出すのがこの話である。
題名が小難しいが、ざっくり言うと昨今のTwitterの“改悪”と呼ばれている改修に関する考察記事である。
興味があれば全文読んでほしいのだけれど、わたしが話題に上げたいのは元Twitter社のエンジニアだったというユーザーのこのツイート。
わたしはインターネットで謎の表現思想日常その他いろいろな話題に言及するアカウントとして存在する傍らWebエンジニアとしてお仕事をさせてもらっている。
そのためTwitterの最近の改修についてはいちエンジニア、サービスの作り手として、「効果測定とかしたのかな」「せめて機能のテストぐらいやらんですか?」などと思っていたのだけど、問題はそうではなかったわけだ。
このツイートに登場する「A/Bテスト」というのは恐らくこのnoteを読んでくれている多くの人にとって馴染みのない言葉だと思うので軽く説明すると、改修前のアプリを使うユーザー群と改修後のアプリを使うユーザー群をランダムに振り分け、どの程度アプリや機能を利用したか、のようなデータを計測するユーザーテストのことをいう。
わたしは放っておくと本当にずっとTwitterに張り付いているしTwitterをはじめてもう10年以上になるけれど、率直にTwitterの「ホームタイムライン」機能は邪魔でしかない、と思っていた。
思っていたけれど、実際のユーザーテストの結果、タイムラインはデフォルトで「ホーム」の方が、時系列が並べ替えられたおすすめ順の方がユーザーの定着率が良いという数字が出ていたのだそうだ。
ちなみにこのA/Bテストというのももちろん「どの数字を見るか」とか、テストの指標自体が間違っている、みたいなこともあるので「A/Bテストの結果こちらの方が優れていた」と断定できるわけではない。
ではないにしろ、「ある視点から見ればこちらの方が人に受け入れられた」というひとつのデータとしては価値を持ったものになる。
つまり、自分が「明らかにこんな改修は間違っている」、もとい「明らかにこんな主張はモラルに反している」みたいに思ったとしても、それは「自分」というひとつの視点から見たときの結果に過ぎなあ。
別の切り口から見たら?別の人から見たら?数字で見たら?
見る角度によって違う結果が出ることはどんな人にだってある。
「だから自分は間違っていたらしい」というのではなく、「自分はこう思う、でもそれが絶対に正しいかと言えばそうじゃないかもしれない」と考えられる人が増えるといいな、と思う。
人と言い争いをするときだけじゃなくて、イベントの運営に文句を言いたくなるときとか、アプリに文句を言いたくなるとき、一瞬立ち止まって「作り手側の視点では違うのかもしれない」に思いを馳せられる人が増えるといい。
もちろん作り手だって苦労してるんだから我慢しなさいよ、みたいなことではなくて、「自分の正しさ」だけに囚われないこと、相手を敵だと思わないこと。月並みだけれど、どちらの意見も尊重できる柔軟な思考力を持つこと。
人にとって「議論」というものがもっとあたたかく、柔らかく、それでいて生産的なものであることを願う日々である。
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