2023.01.07



商店街


地元・山口に帰省すると必ずと言っていいほど決まって歩く場所がある。
子供の頃、本当に幼稚園とか小学校の頃から馴染みのある、そして上京する直前まで通っていた商店街。

特に栄えているわけでもなく、多分地元の人100人に聞いたら60人はシャッター街と形容するんじゃないかな、といった具合のアーケードである。

とは言え夏には大きな祭りがあったり、時折新しいきれいなカフェができたり、記憶から手放すには惜しいという絶妙な塩梅の町なのだ。


とにかく何度も歩いた商店街。

思い出があるのかと言われるとまあ正直そんなに大層な思い出は特にないし今更そこで買いたいものも特にないんだけど、それでも何故か地元に帰ってくると「行かなきゃな」という気持ちになる。



店のガラスに反射して映る自分が今の自分の姿をしているのがものすごく不思議なように思える。


見慣れた店の並び、寂れたシャッター、ガラス窓、堂々とまっすぐ歩く社会人の自分。

見慣れた通りを歩いていると5年も10年も前に戻った気がしてくる。
でも映っているのは紛れもなく2023年の自分である。


5年前、10年前の自分に見られているような、むしろ当時の目線で5年後、10年後の自分を見ているような。

14歳ぐらいの自分が今のわたしの身体を使って歩いているみたいな、そういう不思議な気持ちがしてくる。いつもそう。



自慢気に話すことでもないけど中学校の頃は学校に行ってない時期もあったし、そのあともかなり精神的に苦労した方だと自負している。


中学校の頃は進路指導の「高校を卒業したらどうする?」という問いに何も答えられなかった。
社会に出てやっていける自分の姿が見えなくて「高校を出たら人生やめるしかないな」と本気で思っていた。

高専に入って友達に囲まれた時間があまりに嬉しくて、卒業後の自分の姿が見えなくて「卒業式を終えたら入学式に時間が戻ってくれるんじゃないか」とか今考えると意味のわからないことを本気で考えていた。

それでもまた数年後には友達と上手く仲良くできなくなった。
学校で人の近くにいると恐怖が収まらなくなって授業中にパニックになって逃げ出して、手の震えで文字もまともに書けなくなった自分に絶望したこともあった。



それでもその先の未来で見慣れた商店街を歩いている自分は、堂々として、きれいで、まっすぐ立っている。

その姿を見ただけで「この人はちゃんと自分らしい人生を送ってるんだな」っていうのがわかるような気がする。
それは自分を見てるのが自分だからかもしれないけど、多分それだけじゃないと思う。


ガラスに映る今の自分の姿を昔の自分が「これが自分だって信じられない」って疑ってる声が聞こえてちょっと混乱する。

紛れもなく今自分が考えてることのようで、今の自分は自分のこと自分だってわかってるはずで、だからそう言ってるのは昔の自分で、でも昔の自分は今ここにいるわけがなくて、
じゃあ今何か言ってるのって誰ですか?


鏡に向かって「あなたは誰?」と声に出し続けると気が狂う、みたいな話をずっと昔インターネットで見たことがある。
やったことはないけど、そういう感覚に似てるのかもしれない。





親友


中学校の頃の帰り道を歩く。

当時毎日隣にいたのは同じ女の子だった。


中学校に入る少し前に知り合って仲良くなって、3年間ずっと一緒にいた。
親友と呼んで差し支えない仲だったと今でも思う。


中学3年生の秋、雨の中催行された体育祭。
夕方誰もいなくなったグラウンドで2人、水溜りに転がって全身めちゃくちゃになるまで遊んで帰った。

中学生の頃のわたしと言えば絵に描いたような真面目キャラだったし、自分がそういう性格である、という自認も強かった。

家に着いたら急にその自認が戻ってきて、枷を外したことが気恥ずかしくなって、翌日は彼女と話せなかった。



それから約半年、中学校を卒業する日になってもわたしが彼女と言葉を交わすことはなかった。

彼女と話した最後の思い出は中学校最後の体育祭の日だ。


卒業したあと、何度も彼女と元通り仲良くする夢を見た。


中学校を卒業した次の年、地元の夏祭りで高校の友達と思われる女の子に挟まれた元親友とすれ違った。
あの日のどうしようもないほど陰気な笑顔を今も覚えている。


何にしてもわたしに付いてきてくれる彼女は同じ部活に入って、同じようにサボって、同じように転部して、同じものを好きになって、進学先までわたしと同じ高校を志望していたのが怖かった。

わたしがいることが友達の選択肢を奪うような気がしていた。


それを本人に言うこともできず、黙って志望校を変えて、その上あんな風に別れることになったのは自分の甘えだったと思っている。

結局どこかのタイミングで向こうからわたしのことを追いかけてきてくれるような気がしていたんだと思う。


彼女は元気だろうか、毎日並んで帰った道をひとりで歩いてふと思い出した。
思い出したくなかったなあ、とも思った。親友のことを?薄情すぎるだろ。


最後に彼女を見たあの日の不気味なほど下手な笑顔を思い出す。

もうどこにもいなかったらどうしようとかちょっと不安になった。
生きててほしいとか元気でいてほしいとか、そういうことを思う資格も多分わたしにはない。




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