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03/31

多方面から向かってくる春。
風、におい、気温、そわそわ、日差し、そこはかとなく漂うなにかしらの区切り、ブーツの終了、髪の毛を切る、霞みがかった草原、どこまでも歩けそうな夜。
未来が見えてなくても、どこかにささやかな期待を抱いてなんとなく浮つくきもち。かと思えばふとした拍子にやってくるつめたい不安。どうしようもなく考えが絡まってしまったらとりあえず外に出てみる。春の空気が絡まったものをほどいていく。雪のなくなった道のたのしさ。雪解けの残り香としての水たまり。

戸惑いと自己否定とたのしさ、すこしの成長、自分の言動の癖、さまざまなものに出会った職場との別れ。たくさんの葛藤を経て、最終的には明るいきもちで仕事に向かえるようになって本当によかった。意図していたよりも早いタイミングで別れがきたけれど、それはすごくよいことだったと思う。後ろめたさのない終わりになった。
この場所でこのひとと働くこと、わたしの立場ならもっともっといかせたよなあと強く思う。けれど波長や人間性や得手不得手を考えると仕方なくて、やっぱり「居場所はここじゃないんだよね」というところにたどり着く。噛み合うのが難しい歯車をなんとか合わせて、「とりあえずもうすこし走ってみよう」のきもちで騙し騙しやっていたらそれなりの形になってきて、でもそれ以上のところにはいけないなと感じてしまった。それ以上のところにいこうと思わなかったことも、騙し騙しがんばってみたことも、すべては正解だったんだとおもう。店主とはいつまで経っても上手に話せなくて、たぶんそれがすべてを意味してた。

春の陽気に、土のにおいに、期待と不安の混じった空気に、胸をあんまりきゅっとされることのないよう。どうか。春。

#エッセイ

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