回想:地獄から抜け出せなくても
気づいたら時が過ぎていて、もうこんな時間なんだって思ってからまた、ベッドに戻る。
眠れない日々が続いていて、夜も昼も横になったまま、意識がなくなるのを待っている。
簡単に言ってしまえば楽になりたいのだ。意識がある限り襲い続けてくる苦しみから、逃げ出したいのだ。いや、眠っていても悪夢を見るから同じか。悪夢のような現実。現実のような悪夢。
きらきらとした日々がわたしにも訪れるのだと、なんの疑いもなく思っていた。いつか治るのだと、いつか全てが良くなるのだと、信じていた。信じていないとやっていられなかった。
だって、地獄みたいじゃないか。突然神様に、「はい、苦しんでね」と言われて、まさかそれに終わりがないなんて思いたくなかった。
「あなたが悪いことをしたわけじゃないよ」なんて、なんの慰めにもならない。地獄に落とされた末に、「罪はないけど地獄に落としました」と言われて納得できるわけないだろう。自分が悪いからこうなったのだと思っていた方がよっぽどましだった。
それでも、信じていた。これは病気だと。いつか良くなる日が来ると。信じていたなあ。
気づいたらこんな年数が経っていて、もうこんなに過ぎたんだと思いながらまた、ベッドに戻る。
眠れない日々が続いていて、夜も昼も横になったまま、意識がなくなるのを待っている。
彼らが、彼女らが、恨めしい時期だってあった。わたしにないものが彼らにあって、彼女らにないものがわたしにある。
でも、もう諦めたのだ。
地獄の先に光が見えないと気づいたから、もがくのをやめた。あの人になれないと気づいてから、夢を見るのをやめた。
地獄の中に天国を作ることをひらめいて、あの人じゃなくて"わたし"になることを思いつくのは、それからしばらく経った頃の話だった。
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