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グリーン水素大国化にむけた中国の野心と凄み

中国は2021年に2035年までを実施期間とした「水素エネルギー産業発展の中長期計画」を発表している。

米、EUそして日本の水素戦略と比べても顕著な特徴が一つある。該当部分を引用しよう。

「再生可能エネルギーによる水素製造を重点的に発展させ、化石エネルギーによる水素製造を厳格に抑制する」

前回、水素の色別のちがいを説明したが、中国はグレー水素のみならず、ブルー水素(化石燃料を水素に改質し、その過程で発生した二酸化炭素を地中に貯蔵する)も否定し(「厳に抑制し」)、もっぱらグリーン水素のみを推進するとしているのである。

これは支援の対象にグレー水素も支援対象とする可能性のある日本と好対照をなしているが、他にここまでグリーン水素に特化した政策を打ち出している国はない。もちろん、それぞれの国には固有の状況があるので一概に是非の判断はできない。ただ、中国が早晩グリーン水素で世界を圧倒する日がくる可能性は否定できない。

では、具体的な中国のグリーン水素はいかなるものか。

一言でいえば北部砂漠地帯に巨大な太陽光発電施設を設置し、水分解で水素を製造する。もちろん、水素の主な需要地は沿岸部なので沿岸部を含め国中に長大なパイプラインを建設し、グリーン水素を供給するというものである。

水素の強みはガスパイプラインを基本そのまま転用できることであり、中国の計画は技術的にそれほど突飛なものではない。

巨大な太陽光発電施設とそれを需要地に送るパイプライン、これはいずれも日本には整備不可能なものであり、日本には日本のやり方が必要になることは言うまでもない。

しかし、中国の計画が首尾よく成功すれば中国の製造業は世界でも最もグリーンな製造業に変貌を遂げるかもしれない。日本の製造業の競争力にも当然少なからぬ影響が出てくるであろう。

加えて、グリーン水素について対中依存が過度なものになる場合は経済安全保障上一定の懸念につながる。

日本は豪州等同志国との間でのグリーン水素(もしくは当面の間はアンモニア)サプライチェーン構築をより真剣に考えなければならないだろう。

それではまた来月。

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