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春という季節は

2月はまだまだ冬のはずなのに、ふいに暖かい日があるとドキッとして身構えてしまう。もう生まれてから幾度となく迎えている季節なのだし、今年こそは上手に過ごしたいと毎年思うのだけど、春の気配を感じ始めると毎年だんだんとしんどくなって、少し塞ぎがちになってしまう。

2020年の春は、一度目の緊急事態宣言が出て桜満開の公園も閉鎖されていて。「TOKYO2020」と書かれたオリンピックの横断幕が虚しく目に映った。誰もいない表参道で、都民へ自粛を求める小池都知事の映像が淡々と流れていた。東日本大震災の後、閉鎖された福島の街を訪れて感じた、言葉では言い表せない気持ちを強烈に思い出した。

春という季節は。

内側と向き合うように静かに過ごしていた冬から、桜の開花と共にぶわぁっと沸き立つ世の中、新しい始まりという期待感に包まれた空気に、毎年少し気後れしているのだろうと思う。

それでも今年がいつもとちょっと違うのは、去年の内に植えたチューリップの球根が順々に芽を出して季節の巡りを楽しませてくれていること。こうやって少しずつ小さな喜びを増やして、儚い春の季節を上手に過ごしていきたい。

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