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3歳までの脳育(4)

 親は、自分の子どもに読書好きになって欲しいので、毎日頑張って子どもに読み聞かせを実践されている方も多いと思います。ゴールを『子ども自身が、本を読むことが好きになること』に置いているのであれば、一方的に読み聞かせるのでなく、子どもが早く字を覚えて、自分で読んで楽しめるようにサポートすることを心掛ける必要があると思います。絵本の読み聞かせに使う沢山の時間を、親子の心を通わせるためだけでなく、子どもの将来に繋げる有効な時間にするには、目指すゴールの姿に合った絵本の読み方を考える必要があると思います。

6.絵本は、読み聞かせだけではいけない

 くもん出版発行の泰羅雅登先生著「読み聞かせは心の脳に届く」という本で、「読んだり書いたりしている時には、脳の前頭連合野が活発に働く」(35ページ)ので、読み聞かせの時も前頭連合野が活発に働くと考えていたが実際には前頭連合野はそうならず、著者が言う心の脳(大脳辺縁系、情動:感情に関連した脳)が活動していることを実験的に明らかにしています。

 この本からも、一般的な絵本を読み聞かせは、親と子どもが心を通わせる機会になっていることが分かる一方で、読み書きに関わる脳の発達への影響は、期待より小さいようです。そのため、絵本を子どもの言葉の獲得に役立てるには、絵本の読み聞かせ方を変える必要がありそうです。

 絵本の読み聞かせによる語彙力向上について書かれたものに、幼児期の集団および家庭における絵本の読み聞かせと認知能力雨越康子
・森下正修,日本教育工学会論文誌 43(4),339-350,2020)(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/43/4/43_43051/_pdf/-char/ja)があります。この論文には、「通常おこなわれているような読み聞かせとは異なり,同じ本を短期間繰り返し読み聞かせることが,語彙力の向上につな がる可能性を示している.この結果と Morrow(1988) の研究結果をあわせると,同じ本を繰り返し目にする ことで,最初はほぼ絵に集中していた注意が話の内容 や言葉へも向けられるようになり,語彙獲得の基盤を形成している可能性がある。」と書かれており、この辺りは、ヒントになりそうです。

7.『絵本の読み聞かせ』でなく『絵本の読み遊び』

 3歳までの脳育(3)で紹介しました【 コミック版0~4歳わが子の発達に合わせた「語りかけ」育児 】を監修した言語聴覚士・中川信子先生のお話と「語りかけ」育児の要点が、学研の幼児ワーク OkeikoLaboの記事 【イギリス政府が推奨!】「語りかけ」育児で子どもの言葉が育つ!(https://youjiokeiko.gakken.jp/idea/ikuji-mini/12112)で紹介されています。ここで「語りかけ育児」について「話しかけ育児」ではなく「語りかけ育児」なのは、「語る」には「親しく交わる」「いっしょに」という意味合いがあるからですと説明されています。

 また、発達心理学の専門家いまい むつみ先生が書かれている記事「子どもは遊びながら言葉を学ぶ」(https://www.bornelund.co.jp/asobi-no-mori/study/2537.html)に、「 言葉、とくに母語は子どもにとって「教わる」ものでなく、「自分で学ぶ」もの。生きた学びそのものです。そもそも言葉がまったくわからないところから始まるので、単語の意味や文法などを大人が教えることなどできないからです。子どもは「発見」「創造」「修正」というプロセスをくり返しながら言葉を学びます。(中略)子どもの言語の発達にはあそびが果たす役割はひじょうに大きいものです。あそびを通じて、子どもは主体的にさまざまなことを学ぶことができます。たとえば、ごっこ遊びや絵本の読み聞かせには、言葉のやりとりがたくさん含まれています。これらのあそびを通じて子どもはいろいろな言葉を見つけ学び、コミュニケーション力や自ら考える力も育っていきます。」とあります。上記のリンク先の出典記事に、とても分かり易い説明と図が載っていますので、ぜひご確認ください。

 これらから、子どもと絵本を読むことについても、親から子に対して、一方的に「読んで聞かせる」という「絵本の読み聞かせ」という言い方は止めて、絵本を使って子どもに語りかけ、一緒に遊ぶように楽しむイメージが持てる言葉、例えば『絵本の読み遊び』というような言い方に変えて、絵本の読み方・使い方を変えていくのが良いと思います。

(つづく)

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