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栞子だからこそ出来たこと    同好会のあり方         「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY」 感想

2023年6月23日公開の「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY」を鑑賞して来ました。

本記事では、個人的に良かったシーンをつらつらと書き連ねていきます。どうぞ気軽に楽しんでください!

以下、ネタバレ注意です!


良かった点①

栞子が悩みを抱えている描写を散りばめていた点


1つ目の良かった点は栞子が悩みを抱えている描写を散りばめていた点です。

虹ヶ咲はTVアニメ1期2期の頃から、特定のシーンに説得力を持たせるために、短い描写を積み重ねていました。それが、今回のOVAでも見られたからです。

例えば、冒頭の空港のシーンでは、栞子がMCの反応が悪かったライブの映像を見ていたり、ランニングのシーンでかすみがファンに笑顔を振り向くのを見ていました。他にも、原宿に行くシーンでは、果林やかすみ、ミアのファンへの振る舞いと栞子のファンへの振る舞いを比較する描写がありました。

テレビアニメ1期2期における、短い描写の例として以下の2点が挙げられると思います。


1.TVアニメ1期の歩夢
2.TVアニメ2期のランジュ


具体例1. TVアニメ1期の歩夢

1期の歩夢は、侑が自分以外を応援すると怪訝な表情になったり、慌てたりしていました。

一見ギャグに見える描写ですね。
序盤のかすみと初めて会った時に侑がかすみを可愛いと言うシーンなどです。

これは1期11話の不安が爆発して押し倒すシーンや12話の侑以外のファンにも向き合えるようになる成長に説得力を持たせています。


具体例2. TVアニメ2期のランジュ


2期のランジュは、同好会メンバーなどが仲良くしている場面を見て、羨ましそうにしたり、暗い表情をしたりしていました。

1話のかすみがUSBを部室に取りに行く時に、歩夢が私たちはチラシを配ろうと言い、かすみを信頼していることが垣間見えるシーンではランジュは曇った表情をしていました。
また、栞子が同好会に受け入れられたシーンでは明らかに寂しそうな表情をしていました。
他にもたくさんありますが、ここでは割愛します。

これらは、2期を通してランジュが同好会と異なる価値観で行動していたことや、9話でランジュが胸の内を明かすシーンに説得力を持たせます。


また、オフィシャルBOOK2において、河村智之監督は以下のように語られています。

河村「後半のエピソードで中心人物になるメンバーの物語が唐突な印象にならないよう、少しずつその子の中でなにかが起こり始めていることを感じさせるシーンを描いていきました。(中略)ちゃんと見ていくといろいろなドラマがあり、それらをひとつひとつ拾い上げていくことで到達できる面白さもある。そう感じていただけるように取り組んでいきました。」(オフィシャルBOOK2, p 88.)

制作陣の方々も意識されていたことが分かります。

このように、虹ヶ咲は特定のシーンに説得力を持たせるために、短い描写を積み重ねていました。それが、今回のOVAでも栞子の描写に見られた点が良かったです。


良かった点②

制作陣のファンへの配慮が感じられた点


2つ目の良かった点は、既存シリーズのファン、虹ヶ咲のファン、気軽に楽しむファン、しっかりと見るファンなど様々なファンが楽しめる内容だった点です。

制作陣の方々の想いに胸がいっぱいです。

ここではファンを4タイプに分類して考えます。


1. 既存シリーズのファン
2. 虹ヶ咲のファン
3. 気軽に楽しむファン
4. しっかりと見るファン


1. 既存シリーズのファン


アイラのスクールアイドル体験では秋葉原に行き、UTXや神田明神を描写していました。また、物産展では沼津金沢の要素を盛り込み、原宿に行く描写もありました。

既存シリーズのファンは思わずニヤッとしたのではないでしょうか。


2. 虹ヶ咲のファン


随所でメンバーの個性が描かれていました。

ランジュは屋形船を用意し大胆さが表れていました。また、反省文のシーンでは栞子の冗談が通じないのもランジュらしいです。
ミアはスイーツを食べたがっており、年相応の女の子であることが伝わってきます。

また、ライブのMVでは、集合住宅でラップをするシーンなどで普段とのギャップなどを楽しめたのではないでしょうか。


3. 気軽に楽しむファン


気軽に「〇〇ちゃん可愛い~」、「エモい」、「このカプが尊い」などの視点で楽しむファンにとって嬉しいシーンも随所の存在しました。

秋葉原ではメイド体験では、下心丸出しの侑やそれに反応する歩夢、さらには、メガネを掛けた愛さんを拝むことができました。

また、ストーリーでは ”しおポム” が描かれており、尊いと感じたファンも多いのではないでしょうか。


4. しっかりと見るファン


キャラクターの言動、描写の意味や根拠を考えながら楽しむファンにとっても楽しめる作品であったと思います。

後述しますが、なぜ栞子がアイラの背中を押したのかや同好会のあり方などについて考察、妄想しがいがあるように感じました。


オフィシャルBOOK2で河村監督は以下のように語られています。

河村「今まで虹ヶ咲を見てくださったファンの方々にとって、とても楽しいお話になっていると思います。虹ヶ咲らしいエピソードになると思いますので、ぜひご覧いただきながら、気軽に楽しんでください!」(オフィシャルBOOK2, p 89.)

監督も意識されていたことが分かります。

このように、様々なファンが楽しめる点が良かったです。
まさに、「多様性」虹ヶ咲らしいです。


良かった点③

栞子自身が思う栞子とアイラとの共通点と、他人が思う共通点の違い


3つ目の良かった点は、栞子自身は栞子とアイラは限界を決めいていることが似ていると考えていたが、同好会メンバーは真面目すぎるところ誰かのために行動できる点が似ていると考えており、この違いが栞子がアイラの背中を押すことに説得力を持たせている点です。

1. 栞子自身が思う栞子とアイラとの共通点と、他人が思う共通点との違い


同好会メンバーは栞子とアイラが真面目すぎるところが似ていると考えていることが分かります。

冒頭で、かすみがコッペパンの作り方を教えると言った際にアイラが真に受けていました。ここではランジュが栞子と似ていると発言しています。

また、歩夢誰かのために行動できる点が似ていると考えています。

大階段前で歩夢と栞子が会話する場面では、歩夢がロンドンでアイラにお世話してもらったエピソードをもとに栞子の良さを伝えています。

一方で、栞子自身限界を決めいていることが似ていると考えています。これは、アイラと2人で話すシーンの発言から分かります。

また、アイラは学校の部活動として認められないからスクールアイドルはできないと限界を決めています。
栞子は適性という考えを持っておりこれは自分の能力の範囲内で行動を選択することになるので、限界を決めています。

栞子はアイドルらしい愛嬌がないことに悩んでおり、大階段前の歩夢との会話から分かるように、性格だからどうしようもできない
考えていました。この点でも限界を決めていることが分かります。

2. 違いが栞子の行動に説得力持たせている


栞子がアイラの背中を押すことができたのは、栞子自身が限界をきめるところがアイラと似ていると認識していたからだと考えています。

栞子だけがこのように考えていた(描写されている限りには)からこそ、アイラの悩み、弱点を指摘することができました。栞子である必然性があるのです。


虹ヶ咲は1期2期からそのキャラクターが行動する必然性を感じさせてきました。

例えば、1期8話「しずく、モノクローム」では常に自分をさらけ出しているかすみだからこそしずくが自分をさらけ出すきっかけを作ることができました。
また、2期4話ではライバルとしてのユニットDiverDivaが誕生しました。美里と共通点がある時間が悩みの原因となる点、大切な人に心配されたくない点など)果林である必要性があります。また、ライバルは能力に差がありすぎては成り立たないため、有能な愛と張り合える果林である必然性が存在します。


栞子自身が思う栞子とアイラとの共通点と、他人が思う共通点との違いが栞子がアイラの背中を押すことに説得力を持たせている点が良かったです。丁寧さという虹ヶ咲らしさが表れていました。


良かった点④

栞子の個性の尊重


4つ目の良かった点は、同好会メンバーやファンが栞子の堅い性格を受け入れている点です。

同好会らしくてとても好きです。同好会はそれぞれの個性を尊重して高め合う場ですよね。

栞子は堅い性格のせいでアイドルらしい愛嬌が無いことを悩んでいました。

しかし、同好会メンバーやファンはそこも含めて栞子が好きであることが伝わるシーンがあります。
具体例として以下2点を挙げられます。


1. 原宿で囲まれるシーン
2. かすみの発言


1. 原宿で囲まれるシーン

竹下通りでファンに囲まれるシーンで、ファンに衣装が可愛かったと言われ、頂いた感想を今度の活動の参考にすると堅苦しくお礼を言いました。ファンは面食らい間が生まれましたが、その後笑顔になります
このシーンから、ファンは堅さも含めて栞子が好きであることが伝わります。

2. かすみの発言

同好会みんなで反省文を書くシーンで栞子がランジュには反省文を書く適性がありますと冗談を言います。
ここで、かすみが塩対応の栞子も可愛いと言います。
栞子の堅い性格を尊重し受け入れているからこその発言です。

※ここでランジュに冗談が伝わってない点もランジュらしくて好きです。

同好会メンバーやファンが栞子の堅い性格を尊重し受け入れている点が虹ヶ咲らしくて良かったです。


良かった点⑤

栞子の成長の仕方


5つ目の良かった点は、栞子の成長が既存の性格を残したうえで新しい側面を手に入れた点です。

キャラクターの個性を大切にする点が虹ヶ咲らしいからです。

栞子はアイラとの関わりを通して、限界を決めず、すなわち性格だからどうにもならないと考えずに愛嬌も手に入れました

反省文を書くシーンでランジュに冗談を言うことからも堅すぎない振る舞いができるようになったことが分かります。

一方で、かすみが栞子の生徒会長権限で反省文が免除にならないか聞いた場面では、そんなものはないと塩対応されました。このことから、お堅い栞子も存在しています。

このキャラクターのパーソナリティを尊重する点はTVアニメ1期4話にも表れています。愛の個性についてオフィシャルBOOKで田中氏が以下のように述べています。

田中「自分で対処するメンタルの強さ、頭の良さを兼ね備えている。だからこそ、そこで無理に欠点を作ったりせず、彼女の魅力が損なわれないように気を配りました。」(オフィシャルBOOK, p 37.)

性格や価値観が180°変わることだけが成長ではなくて、何かを新しく得ることも成長なんだなと強く感じました。

このように、栞子の既存の性格を尊重しつつ成長を描いた点がいかにも虹ヶ咲らしくて良かったです。


良かった点⑥

応援メッセージ


6つ目の良かった点は、EDでファンが頑張っていること、頑張りたいことのメッセージが映し出されたことが、応援の輪がアニメの中だけでなく現実にも広がっていた点です。

他のファンの頑張りに力をもらえましたし、制作陣の方々の想いに感動しました。

虹ヶ咲の大きなテーマとして応援が挙げられます。

一緒に練習したり、肯定したり、前向きな言葉を掛けたり、自分の好きを表現して誰かの力になったりと様々な応援が描かれてきました。

その応援がこんなにも実生活に広がっているのだと思うと感無量です。これこそ、みんなでつくるですね。

また、他のファンの頑張りに力をもらえました。自分も小さいことですが挑戦してみたいことがあるので、一歩踏み出したいと思いました。

また、制作陣の方々はこのようなことを意図しているようです。

オフィシャルBOOK2では河村監督は以下のように語っています。

河村「第13話では海外でのライブビューイング風景も盛り込みましたが、応援しあう人々の輪がどこまでも広がっていくことを表現したかった。それが、テレビの向こう側にも届いてほしいという気持ちもあって。アニメの世界だけではなく、現実世界にもその輪が広がっていってほしいという想いが、最後の侑の言葉で伝わるといいなと思っています。」(オフィシャルBOOK2, p 89.)

この監督の想いが素敵ですし、実際に形になっていて涙が止まりません。

筆者はメッセージを送らなかったのですが、本当に後悔しています。力をもらったことを伝えるのは制作陣の方々への感謝にもなると思うので悔やまれます。


まとめ


個人的に「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY」の良かった点は

①栞子が悩みを抱えている描写を散りばめていた点
②制作陣のファンへの配慮が感じられた点
③栞子自身が思う栞子とアイラとの共通点と、他人が思う共通点の違い
④栞子の個性の尊重
⑤栞子の成長の仕方
⑥応援メッセージ

が挙げられます。

筆者が好きな虹ヶ咲らしさ制作陣の方々の想いを感じ取ることができて大満足でした。


番外編① OVAの位置づけ


OVAの位置づけとして


1. 同好会で足並みを揃える
2. 虹ヶ咲の可能性の拡大


以上の2つの側面を思いつきました。

1. 同好会で足並みを揃える


1つ目の側面はR3BIRTHや特に栞子と同好会の既存メンバーとの足並みを揃えることです。

既存メンバーはTVアニメ1期で自己表現を見つけ、2期終了までに各々の葛藤を乗り越えました。

スクールアイドルを始めたから悩みが無くなるような単純な話ではないのがリアリティがあって良いですよね。
筆者は2期の愛やせつ菜の話が印象的でした。

一方で、R3BIRTHの3人はスクールアイドルになる段階しか経験していませんので、その上での成長が描写されていませんでした。
それを今回のOVAで栞子の成長として描いたと考えています。

大階段のシーンで既存メンバー今までの軌跡を振り返っているシーンも足並みを揃える意図があるからこそなのかなと思いました。

ミアとランジュをどのように描くのか気になります。

2. 虹ヶ咲の可能性の拡大


今作では限界突破を描くことで、虹ヶ咲、同好会の可能性をさらに広げたと考えています。

栞子の成長を軸に限界突破が描かれました。
栞子の性格の付与アイラが部活でなくてもスクールアイドルを始めたことによく表れていました。

スクールアイドルの定義すら拡張するのは驚きました。
2期で同好会メンバーが侑もたくさんの人にトキメキを与えられるからスクールアイドルと言っていたため、そこまで違和感はありませんでした。

以下、妄想ですが、ラブライブに出ない選択をしていることからもわかる同好会の限界、すなわち、競うことを描くいたりするのかなと思ったりしました。

また、卒業を扱うとなると、同じ同好会という集団に属していなくても応援や相互作用の力が働くようなことを描くのかなと妄想しています。同じ共同体内という限界の突破です。

ラストシーンのGPXは何を表すのでしょうか。


終わりに


「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY」感想を述べてきました。
虹ヶ咲らしいエピソードで、河村監督や田中氏をはじめとした制作スタッフの皆さんは裏切らないなと感無量です。

劇場上映シーリーズ3部作も制作決定が発表されました。筆者にとって虹ヶ咲はとても大きな存在になってしまったため、嬉しすぎて久しぶりに誇張抜きで泣いてしまいました。

今後の虹ヶ咲の展開が楽しみで仕方ありません!

ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!














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