日記(2022年2月12日)

東京に来て5年間、軽作業ばかりしてきた。
いつの間にか手先に軽作業専用の神経が産まれたのではないかと思うくらい、鋭敏になった。正確な位置にシールを貼る動作、適当な枚数のコピー用紙を取る動作、シュレッダーが壊れないように書類を留めたホッチキスの芯を取る動作。恐ろしいくらいに速くなった。
中でも一番速くなったのは、新品のクリアファイル(ノベルティ)のビニールを剥がす動作。営業の人が書類を持っていくときに使うから、僕が剥がして何時でもすぐに使えるようにしておかなくてはならない。ビニールに入ったままになっていると凄く嫌な顔をされるので、時間がある時は100枚、200枚と一心不乱にビニールを剥き続ける。
先日、狂ったようにビニールをむしり取っていると大爆笑が起きた。あまりにも動きに無駄がなく、速すぎたからだ。
職場の人いわく、「達人みたいだった」「途中から目を瞑っていた」「ビニールのノリを剥がすときのペリペリ音さえなかった」らしい。凄く恥ずかしかった。
耳を真っ赤にして小さな声で「長ぉやってますから」としか言えなかった。こんな情けない菅原文太はいない。剥がしたビニールが机に溜まらないようにベストポジションに置いていたゴミ箱を分からないように足で動かした。

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