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神戸味噌ダレ餃子の老舗「ひょうたん」閉店のニュースを聞いて

昨日、Facebookにあるコミュニティ「東京餃子通信友の会」に衝撃の投稿がありました。なんと神戸のみそダレ餃子の老舗店「ひょうたん」元町店が6月16日に三宮店が6月20日に閉店をしたというのです。

急いで確認をするとInstagramの公式アカウントでもアナウンスが出ていました。コロナによる営業自粛を乗り越えお店も営業を再開したさなか、餃子の製造責任者である方が倒れこれまで守ってきた「ひょうたん」の餃子が作れなくなったことが直接の原因だったとのことです。

あのふんわりと包まれた餃子を八丁味噌のタレにつけて食べることが、もうできないのです。色々とあった2020年上半期で最もショックな出来事かもしれません。

神戸味噌ダレ餃子の超老舗店「ひょうたん」とは

神戸以外の方には意外と知られていないのですが、神戸の餃子は酢醤油ではなくみそダレをつけて食べます。

神戸のみそダレ餃子は、南京町にある昭和26年創業の「元祖ぎょうざ苑」が発祥なのですが、その後「ひょうたん」「赤萬」「夫婦餃子」等の餃子専門店が南京町や新開地周辺に生まれました。それぞれの餃子店は独自に味噌ダレを提供するようになり、神戸で餃子を味噌ダレにつけて食べるようになりました。

中でも「ひょうたん」は、モッチリした皮をつかってジューシーな餡をふんわり包み、これを八丁味噌ベースの餃子ダレにつけて食べるというスタイルを提案し、神戸内外に多くのファンを抱える超人気餃子店として長年愛されてきました。

特に元町駅前にある元町店も三宮のガード下にある三宮店も、連日餃子を求めるお客さんで行列ができていました。

私の「ひょうたん」の思い出

私は「ひょうたん」の餃子には、東京餃子通信を開設した2010年に出会っています。

餃子の食べ歩きを始めたころに餃子の王様ことパラダイス山元さんの著書『餃子のスゝメ』をバイブルの様に拝読していました。

天は餃子の上に餃子を造らず餃子の下に餃子を造らずと言えり。

で始まる本書は、餃子ファンなら誰でも手にしたことがあるのではないでしょうか?

当時単なる駆け出し餃子ブロガーだった私にとって餃子の神様が営む「蔓餃苑」に足を踏み入れるなんて夢のまた夢。
せめて、餃子の神様の足跡を追うことから始めようと『餃子のスゝメ』に掲載されていた選りすぐりのお店を食べ歩こうと考えました。

13勝21引き分け327敗という、大変厳しい勝利条件をクリアし13軒の餃子店が『餃子のスゝメ』には掲載されており、そこに「ひょうたん」も含まれていました。

最初に「ひょうたん」を訪れたのは2010年9月。東京餃子通信を書き始めて3か月後ぐらい。大阪に出張があったタイミングで無理やり神戸まで足を延ばして初「ひょうたん」にこぎつけました。

ふわっと包まれた優しさあふれる餃子と八丁味噌ベースの味噌ダレに衝撃を受けたのを今でも覚えています。しかし、当時の記事を見返すと全くその感動が伝わって来ません。こんな記事を良く皆さんに発信していたと恥ずかしくなるような内容です、、、

それ以降もいくどとなく「ひょうたん」を訪れているのですが、同じ店で同じメニューのレポートは極力複数掲載しないようにしていたため元町店のレポートはこちらが最初で最後。多少はスキルアップした今の力で「ひょうたん」の魅力を表現したかったのが心残りであります。

餃子マニアのコレクターとリピーターとの間での葛藤

特定分野の食べ歩きをするラーメンマニアの世界などではコレクターとリピーターという分類があります。コレクターは新規開拓を中心に新しい出会いを求めていくタイプ。一方リピーターはお気に入りの店を徹底的に通いつくすというタイプです。

私は基本的にはコレクタータイプで、常に新しい餃子との出会いを求めて全国の餃子店を巡っていて、これまでに3000軒以上の餃子店を訪問してきました。一方でこれだけの数を巡っていると当然ながらお気に入りの店も見つかるわけで、「ひょうたん」もお気に入りの一軒でした。

昨年11月末に久しぶりに神戸に訪問する機会がありました。実はこの日に「ひょうたん」元町店のお店の目の前まで行って満席だったのを見て並ばずに新規開拓を優先してしまったのです。長い行列もなかったので待っていればすぐに店に入れることもわかっていたのにも関わらず、、、

これが最後の「ひょうたん」でした。「ひょうたん」の餃子は神戸に行けばいつでも食べられる。万が一、元町店がなくなっても三宮店があると思っていた節があります。あの時に少し待って暖簾をくぐらなかったことを今は後悔してます。

コロナ禍や都市部の再開発、後継者問題等の影響などで、今年になってからも神保町の「スヰートポーヅ」や川崎の「太陽軒」、十条の「王華」など老舗の餃子の名店がその歴史に幕を下ろしました。

この「ひょうたん」の閉店のニュースを知り、また最近の飲食店の厳しい状況を聞くたびに、これまでのコレクター的な活動に葛藤を覚えるようになりました。新たな餃子の食べ歩きに注いでいた力をもっと特定の超お気に入りのお店の応援に使うべきなんじゃないかと。

100%コレクター、100%リピーターとかいう極端な話では無いというのはわかっているのですが、その比率を改めて考え自分にとって大切なお店は全力で応援しようと思いました。

いつまでもあると思うな親と金、そしてひいき店
by 東京餃子通信編集長 塚田亮一

noteには、もっと楽しそうな話を書くつもりだったのになぁ、、、

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