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PRADAの財布を買った。

 財布を新しく買った。

 ここ二年、ジルサンダーのヌメ革のメンズコンパクト財布を使っていた。ロゴは押してあるものの、箔をつけていないシンプルなデザインが気に入っている。ただ、ヌメなので次第に「味」が出て来てしまう。私はこの味が大好きで、デニムのポケットから取り出すときにちらと見える風合いを損ねないためにレザー用のケア用品でしっかり労わってきた。

 ところが、この風合いというのは持ち主以外には思いのほか伝わらない。単に古い財布としか受け取られないどころか、貧相に見えてしまうことさえあるという。確かに、ファスナーがあるせいで革以外の部分の汚れについては貧相と思われそうだった。

 弟がイルビゾンテのレディースの財布を長らく使っているが、そちらはヌメ革で年々色が濃くなっているのが美しくて羨ましい。私もそういうのにすればよかったかと思いつつも、使っているバッグのサイズを考えると長財布に持ち替えるのはためらわれた。

 そんなことを考えながら、某大会の観戦のために先日東京へ遊びに行った。残念ながら私が推していた選手は負けてしまい、あまりのつらさにCHOYAバーで一年に数回飲むか飲まないかのお酒を飲んでしまった。
CHOYAバーすごくよかった。先附がおしゃれで割と手頃に飲めた。行きたいって言ってくれた友人に感謝。

 その翌日、たまたま訪れた伊勢丹新宿メンズ館で運命の出会いをした。

 PRADAのオーストリッチの札入れである。

 札入れとはいえ、小さいながら小銭入れもついている。ロゴはおなじみの三角のものではなく、隅に小さくシルバーでついているだけのシンプルな品だ。

 恥ずかしながら、オーストリッチがどんな革なのか知らなかった私は、同行してくれた友人から説明されて初めてダチョウの革だということを知った。漠然と、「二つ折りの札入れから紙幣を取り出す男の仕草がかっこいい。自分もやりたい」と考えていた私は、ちょうどショーケースに出ていた商品の黒があれば見たいと頼んだ。

 とてもPRADAで買い物をする客には見えなかったと思うのだが(全身リックオウエンスでBALENCIAGAの鞄を持っていた)、店員さんは親切にも「日本で最後の在庫がございました」と手袋を差し出してくれた。お値段は、当初考えていた予算のである。税込みで十三万円ほど。もともと考えていたのが、BALENCIAGAとジルサンダー、GUCCIだったのだから正直「高っ!?」である。庶民の正しい反応。検討していた中で一番高いGUCCIでも、赤い蛇柄の財布が七万弱とPRADAの半額近い。

 一旦検討することにして他のフロアを回ってみたものの、なかなかこの財布が忘れられない。クイルマークはドット模様のようにかわいらしいし、触れても膨らみがわからないほどしっかりと潰されていた。札入れには仕切りがあり、紙幣とレシートを分けることができる。小銭入れはスナップ式で、今使っているジルサンダーのミニ財布を小銭入れとして使えば容量としては十分だ。

 偶然にもその日は一粒万倍日の大安で、大変な吉日だった。ここで悩んでいる間にも、財布を購める人があるかもしれない。

 そこへ友人。

「……私の株主優待、使えるよ」


 か、株主~~~~!!(心の中で株主うちわを振るオタク)

 これだけお膳立てされて買わない奴いる? いねぇよな??
買う理由が値段なら買うな。買わない理由が値段なら買え。っていう格言もあるしな!!

「うちの子にするか~~~~」

 そう言って、伊勢丹新宿メンズ館のPRADAに戻ると、くだんの店員さんからその財布を買った。
そのとき思わず、「あ、支払いは彼女(友人)(優待を使うには彼女のカード払いになるため)が」と言ってしまったんだけど、担当してくださった店員さんが私と友人をどういう関係と思ったか全く想像がつかない……

そして晴れて私の手元に来たお財布がこちら!!


 最高~~~~! お上品かつカジュアル!!
かしこまりすぎなくていい!! 男前財布!! 好き!!!!
推しの負けを忘れる……ことはできなかったけれど、PRADAの紙袋を手にして歩きながら、大事に育てようと友人のレザー講釈を拝聴した。


 ところで、オーストリッチというレザーがいわゆるバブル期のころに流行したことを、あとになって知った。今の五十代から六十代あたりには高級エキゾチックレザーとして人気が高く、財布やバッグを愛用する人が多いという。若い人にとってはカーフのほうが身近だそうで、確かに私もわざわざダチョウの革を買うことになるとはまったく考えていなかった。

 ネット上ではおじさん臭いという意見も見かける。でもこの財布をビビットピンクのネイルを塗った手で持っていると、渋さと新鮮さが同時に同じ強さで脳に響いてきてこれ以外の選択がなかったように思えてくる。

 もし二十代~三十代のカーフレザーが人気の世代の女性がバッグの中から渋いオーストリッチのメンズ財布を出してスタバで支払いをしていたら、私はときめきのあまり言葉を失う自信がある。

 新品の革製品の匂いをついつい吸いつつ、「これ絶対落としたらオジサンの財布だと思われるんだろうなぁ……」と考えている。
金離れのいい四十代~五十代くらいのオジサン……坂井大輔

 財布と鞄は「これ!」というのを見つけないとなかなか買わない性質なので、できるだけ長持ちさせるぞというお気持ち。
服も服飾品も大好きだけど、お気に入りが死亡したあとにしっくりくる品を見つけ出すのは大変なんだよ!

運命超重要!!!!


 ほんとに、「これ!!!!」ってものがあったときに躊躇わずにGOできる準備をいつでも整えておこうと思った。

あと持つべきものは株主(友人)。


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