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行政書士試験記述式の予想問題を作成してみた5(民法)

前回投稿の行政書士試験記述式の予想問題を作成してみた4に続き、予想問題を投稿していきます。
今回から民法となります。民法は行政書士試験において最重要科目です。得点配分でいえば行政法が1番多いですが、最も重要かつ1番勉強時間を割く科目は民法です。民法マスターにならなければ合格は見えてこないでしょう。
ということで、まずは民法の総則となります。解いてみてください。
:お手元に六法全書をご用意ください。ご用意できない場合はこちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/


予想問題一

問題
 
17才である未成年者Aは、消費者金融会社Bより金員を借り入れるべく、親に黙って自身の免許証および収入証明証を偽造し自身を成年者に見せかけ、Bに対して金員借り入れの審査を申し込んだ。Bは偽造された証明書から、Aは金員を貸し付けるだけの与信がある成年者と判断し、金員50万円をAに貸し付けた。
 その後、Aは50万円の内49万円を使い込んだうえ、「自身は未成年者であるので契約を取り消して、残りの1万円のみを返済する。」と主張した。
 Aは契約を取り消すことができるか、理由と結論を40字程度で記述しなさい。

記述枠
記述枠

解説と解答

<解説>
21条の詐術に関する問題です。
未成年者保護のため、法定代理人(たいがいは親)の同意なくしてした法律行為は取り消すことができます(5条2項)。さらに、取り消し後は残存利益(残ったお金)のみ返済すればそれで済むとしています(121条の2第3項後段)。
しかし、Aのような悪質なだまし行為をするような未成年者まで保護する必要はないです。そこで民法では詐術(悪質なだまし行為)をした未成年は契約を取り消せないとしています(21条)。
そして、未成年が詐術を用いたか否かの判断は、条文上「行為能力者であることを信じさせるため」としています。
Aは文書の偽造などをして、Bに対して、自身を行為能力者であると信じさせるため、間違いなく詐術を用いたといっていいでしょう。
よって、Aは契約を取り消すことができないこととなります。

<解答>

解答
解答

予想問題二

問題
 
Aは差押えを免れるため、自らが所有する甲土地を友人Bに内緒で、B名義へと勝手に変更し、移転登記も完了させた。これに気づいたBは、甲土地をCへと売却し、移転登記も完了させてしまった。
 このような場合、Cが所有権を主張するには、前提としてAにはどのような責任があり、Cにどのような要件があることが必要とされるか。そして、このような法的考え方を何と呼ぶか。
 40字程度で記述しなさい。

記述枠
記述枠

解説と解答

<解説>
94条2項類推適用の問題です。基本といえるでしょう。
94条2項では、「相手方と通じてした虚偽の意思表示は」としています。問題文でAとBは、お互いに話し合った(相手方と通じた)わけではありませんから、Cは所有権を主張できないのではないかという疑念が生まれます。
このように、条文通りに捉えてしまえば94条2項は適用できないこととなります。でも、それでは頭が固すぎます。もう少し柔軟に考えましょう。
94条2項の趣旨は「虚偽の外観を作出した帰責性ある者に責任を負わせ、もって取引の安全を図る」点にあります。
つまり、虚偽の外観を作出した責任があればいいのです。この点でいえば、Aには十分に外観作出の責任がある悪いことをしています。Bと通じていたか、いないかなど、どうでもいいのです。
ただ、それだけではいけません。Cにも条件が付きます。それが、94条2項の「善意の第三者に対抗することができない」という文言です。つまり、Cは善意であることが必要です。事情を知っていたのに所有権を主張をすることは、ある意味Aより悪質だともいえるからです。
また、条文通りにCには無過失までは要求はされません。
ちなみに、平成18年2月23日判例(裁判所ウェブサイト)を参照していただくとわかりますが、真の権利者(問題文ではA)の帰責性(悪質ぶり)が小さい場合には無過失まで要求する場合もあります。しかし、問題文のAの悪質さからすれば、善意で足りるでしょう。
そして、このような法的考え方を権利外観法理と呼びます。権利外観法理は94条2項以外にも110条などで現れる民法の法理論です。押さえておきましょう。

権利外観法理
権利外観法理

<解答>

解答
解答

予想問題三

問題
 
Aは、銀行からの借入金の担保として所有する甲不動産に抵当権を設定すべく、それをBへ依頼したうえで代理権を与えた。しかし、依頼を受けたBは甲不動産をCへと売却し、移転登記も完了した。
 Cが所有権を主張できる要件を40字程度にて記述しなさい。

記述枠
記述枠

解説と解答

<解説>
権限外の表見代理(110条)に関する問題になります。基本ですのでしっかり押さえておきましょう。
BはAに抵当権の設定をしてくれと頼まれているのに、売却して登記も完了させてしまいました。これはBが代理権の範囲を超えることをした権限外の行為の表見代理(110条)となります。
このような場合、前問の問題2と違ってAには何ら落ち度(帰責性)がありませんから、契約は無効としたいところですが、相手方にCが存在します。Cだってある意味Bに騙された被害者ですから保護したいところです。
どちらを立てた方がいいのでしょうか?(-ω-;)ウーン
そこで、何ら帰責性のないAよりもCが保護される(所有権を取得できる)ための要件を民法は要求しました。それが以下の4つです。

①基本代理権が存在すること
②顕名があること
③権限外の代理行為がなされたこと
④代理権があると信ずべき正当な理由があること

問題文から、①と③の要件は備えていますので、②と④を記述することとなります。つまりは、Bの顕名があり、かつ、CがBに代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときが、Cが所有権を主張できる要件となります。ちなみに、行政書士試験の記述式はけっして奇問難問ばかりではなく(時には出ますが(;^ω^)・・)、このような基本的な問題もしっかり出ます。基本を確実に押さえて書けるようになりましょう。

<解答>

解答
解答

予想問題四

問題
 
Aの子Bは、A所有の甲土地を、代理権がないにもかかわらずCに売却してしまった。CはBが代理権を有していないことにつき善意無過失であった。その後すぐに、Aが死亡し、Bが甲土地を単独で相続することとなったが、Bはやはり甲土地を手放したくないと翻意し、Aが有していた追認拒絶権を行使して、契約の取り消しを求めた。
 しかし、判例に則り判断すればBは追認拒絶権を行使して、契約を取り消すことはできないと考えられる。その理由は、(  )ため、Bは追認拒絶権を行使する余地はなくなるからである。
 (  )内にあてはまる言葉を40字程度で記述しなさい。

記述枠
記述枠

解説と解答

<解説>
ちょっと難しい(-ω-;)かもしれませんが、これを機にマスターしましょう。
Bは代理権がないにもかかわらずAの甲土地をCに売却しまいました。Aがそのような契約を結びたかったかどうかは問題文ではわかりませんが、もし、Aが甲土地を売却したくなかったのであれば、追認(113条)を拒絶することができます。この権利を「追認拒絶権」といいます。
そして、相続が発生すると相続人は被相続人の権利を包括承継する(まとめて引き継ぐ)ので追認権なども基本的に引き継ぎます。
では、Bは追認拒絶権を行使できるでしょうか。
この点について、昭和40年6月18日判例(裁判所ウェブサイト)では、無権代理人は、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解すべきとして追認拒絶権の行使を否定しています。
つまり、「Bさん、あなたは無権代理行為によって契約を成立させましたが、これは、Aが死んでしまった今では、A自身が契約したことと同じだよね。だから、Aと私Cの契約は成立済みなので戻せませんので、その効果は相続人であるBさんあなたに帰属します。」となります。
ちなみに、これを地位融合説といいますが、覚えなくていいです(;^ω^)なら言うな!。行政書士試験で学説名を覚える必要はありません。

無権代理と相続
無権代理と相続

なお、正確な文言を記述できなくとも法理論から考えて、「Aの死亡によってBは本人として地位を得た」等、それなりの文章を記述できるようになるといいと思います。大筋さえ間違っていなければ、部分点をもらえる可能性は十分にあります。
このように、暗記に頼らず、常に法理論から考えられるようになりましょう。

<解答>

解答
解答

予想問題五

問題
 
Aは道路を歩行中にBが運転する自動車にはねられ、大けがを負い生命の危険に陥ったが、一命はとりとめた。しかし、ケガによる後遺症は残った。
 AのBに対する損害賠償請求権が消滅時効にかかる期間は、いつから、何年となるか。40字程度で記述しなさい。なお、数字はアラビア数字で一文字として記述しなさい。

記述枠
記述枠

解説と解答

<解説>
平成29年民法改正部分より出題。
損害賠償請求権のような債権は通常、権利を行使することができることを知った時から5年(166条1項1号)、または、権利を行使することができる時から10年(166条1項2号)で消滅時効にかかります。
しかし、改正民法にて「人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権は20年は消滅時効にはかからない」(167条)とされました。これは財産的な利益を保護する他の債権に比べて、生命や身体というものは保護すべき度合いが強いためです。
問題文において、Aはまさに生命または身体の侵害を受けています。ですから、20年間の消滅時効が適用されます。

<解答>

解答
解答

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