行政書士試験記述式の予想問題を作成してみた
行政書士試験の記述式問題は、毎年どのような問題がどの領域から出題されるか、非常に予想が難しい部分です。
そこで、私なりに対策になればと、過去の傾向から考えた記述式の予想問題を作成してみました。ぜひ解いてみてください。
注:お手元に六法全書をご用意ください。ご用意できない場合はこちらをどうぞ→e-Govポータル https://elaws.e-gov.go.jp/分析
まずは、過去の記述式の過去問を分析してみました。
その結果、行政法は行政事件訴訟法からの出題が多く、民法は債権法の部分からの出題が多いという傾向が見られます。
これらを踏まえて、作成してみた予想問題が以下となります。
予想問題一.行政法
問題
Aの子であるBは生まれつきの持病をもっており特別な療養施設において保育を受けていたが、最近は症状が緩和され、通常の保育施設に入れたいと思っていたAはC市が運営する保育所へ申込をした。だが、Bの持病が発生した場合において対処できる体制が整っていないという理由で処分行政庁である社会福祉事務所所長Dは申込を不承諾とした。そこで、この処分を不服に思ったAは、申込承諾を求める義務付け訴訟と申込不承諾の取消しを求める取消訴訟を併合提起した。
しかし、Bは5歳児であり訴訟の判決を待っていては保育期間が過ぎてしまうとAは感じている。この場合においてAB救済のため行政事件訴訟法上、どのような要件の下、どのような類型の訴訟を提起すべきか。
「処分がされないことにより生ずる」に続けて40字程度で記述しなさい。なお、本案については理由があるものとする。
処分がされないことにより生ずる
解説と解答
<解説>
条文の文言をそのまま書かせるタイプの問題となります。
Aは保育所の入園申請を拒否されたため承諾を求める義務付け訴訟を提起しましたが、このような訴訟を申請満足型義務付け訴訟(行政事件訴訟法3条6項2号)といいます。
そして、この申請満足型義務付け訴訟を提起する場合には取消訴訟も併合提起しなければなりません(同法37条の3第3項2号)。そしてAは同法に従い訴訟を提起しています。
しかし、義務付け訴訟では期日が迫っている事例の場合において、救済が間に合わないこともあります。例えば、ある公共施設を12月25日に使用するため許可申請を出したが、同年12月1日に不許可が出されたような場合において、義務付け訴訟を提起し、不許可の取消しを求めていては間に合わないというような状況に陥ります。
そこで、このような事例の救済のため仮の義務付け訴訟(同法37条の5第1項)が規定されています。要は、時間がないからとりあえず認めておくための救済規定となります。ただ、救済を受けるためにはそれなりの要件(理由)が必要となります。それが以下となります。
①義務付けの訴えが係属していること
②処分・裁決がされないことにより生ずる償うことができない損害があること
③損害を避けるため緊急の必要があること
④本案について理由があるとみえるとき
そして、この事例においては①④の要件はクリアしています。あとは、②③の要件ですが、Bは5歳児であり小学校入学までの期間に余裕がなく緊急性があるといっていいでしょう。また、幼児期の保育は幼児の心身の発達のための重要な期間であり、この機会を逸するのは償うことができない損害があるといえます。
よって、仮の義務付け訴訟を提起できるものとして、37条の5第1項に規定されている②③の要件を記述することとなります。
<解答>
処分がされないことにより生ずる
<補足>
行政書士試験の過去の出題傾向をみると、およそ二回に一回くらいは行政事件訴訟法より出題されています。ゆえに、行政事件訴訟の類型(下図)と判例を押さえる勉強は必須となります。
予想問題二.民法
問題
AはBに対して有する金銭債権の担保のため、Bの所有する甲建物に抵当権を設定していた。ところが、ある日占有権原を有しないCが甲建物を不法に占有するようになってしまった。しかし、BはCに対して所有権に基づく建物明渡請求権を行使しようとしない。
このような場合において判例に則り判断すれば、AはCの不法占有により、ある状態が生じているとして、Bの所有権に基づく建物明渡請求権を被代位権利として債権者代位権を行使できる。
上記で述べた、ある状態と何か。40字程度で記述しなさい。
解説と解答
<解説>
趣旨定義を問うタイプの問題となります。
平成11年11月24日判例(裁判所ウェブサイト)の債権者代位権の転用事例ですが、解答内容は抵当権の特徴を問われています。
抵当権の特徴は①目的物の使用収益を設定者に委ねることにより、その利益の中から被担保債権の弁済を促します。②さらに、弁済が不可能となった場合には抵当権を実行して目的物を売却(抵当権の交換価値を実現)することにより、売却代金から優先的に弁済を受けることができます。
ですが問題では、Cの不法占有により①の目的物の使用収益を設定者に委ねるという前提が崩れているため、②の抵当権の交換価値の実現が妨げられ、優先的に弁済を受けることが困難な状態となっています。
このような状況を打破すべく、本来は無資力要件が必要である債権者代位権(423条)の転用を認めた判例となります。
<解答>
予想問題三.民法
問題
低所得者を対象としている甲公営住宅に入居しているAが死亡したが、Aの子で相続人であるBは公営住宅を使用する権利を相続によって承継したとして、甲公営住宅の入居を希望した。しかし、条例では公営住宅の入居には一定額以下の所得の者のみを入居させる旨があり、Bの所得は条例で定める入居条件の所得を超えるものであった。
この場合においてBの主張は認められるか。民法の規定と判例に照らし、その理由と結論を「甲公営住宅の入居権は」に続けて40字程度で記述しなさい。
甲公営住宅の入居権は
解説と解答
<解説>
条文と判例から妥当な結論を導くタイプの問題となります。
相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。しかし、被相続人の一身に専属するものは除かれます(民法896条ただし書き)。
そこで、公営住宅の入居権が一身に専属するものか否かが問題となります。これを条文と判例から判断します。
この点、平成2年10月18日判例(裁判所ウェブサイト)において「公営住宅の入居者が死亡した場合に、その相続人は、当該公営住宅を使用する権利を当然に承継するものではない。」としています。
つまり、「公営住宅の入居権は被相続人の一身に専属した権利である」と裁判所は判断したのです。
よって、公営住宅の入居権は被相続人(A)の一身に専属した権利であり、その権利を相続人(B)はそれを当然に承継するものではないので、入居権は認められないという結論に至ります。
<解答>
甲公営住宅の入居権は
<補足>
相続業務を行う行政書士が増えたためでしょうか、近年では親族・相続の領域からの出題が増えている感じがします。過去に択一式で出題された親族・相続の条文・判例は押さえておいた方がいいと思います。
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