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『甘い物は脳に悪い』という本が今、隣にあったので、適当に指をつっこんで、その指先に当たった単語を拾ってみた。
その単語が「結果」「民族」「満足」。
この三つを使って、即興で物語を書いてみよう。
(制限時間は30分)
こんな感じでも物語は動きはじめるのか…。
以下、物語。

「わが民族にとって、この結果は満足できるものなのか?」
総統は声高に喚き散らした。
腰ぎんちゃくのマーカスは
「総統は相当、怒っていらっしゃる。ここは何かを言わなければ…」
と思ったが、元来、頭の回転のいい方ではない。
ここで言うべき言葉は何も出てこない。
すると、末席に座っていたアーノルドが突然立ち上がった。
そこにいた者たちは皆アーノルドの方に顔を向けた。
「一体、アーノルドは何を言うのだろう」
アーノルドは期待される男なのだ。
「総統!」
アーノルドが自信ありげに話し始めた。
マーカスはその様子を苦々しい顔をしながら、
「あいつの話は全く入ってこないんだよ。難しい言葉を使って、こちらを煙にまくあの話し方が気に入らない。それに、あの頭の輝きはなんだ。あの禿げ頭にはきっとオイルでも塗っているんだ。じゃなければ汗をかき過ぎだ。ハンカチでゴシゴシと拭いてやろうか。くそっ」
と思ったが、部屋中にアーノルドへの賛同の空気が充満していった。
「ということで、満足できる結果だと思います」
アーノルドがこう言い切ったとき、皆が一斉に総統の方を振り向いた。
総統がアーノルドの意見に賛成するのか、反対するのか。
総統はただ目をつむり、アーノルドの話を聞いていたが、その両眼が遂に開いた。
「アーノルド、君の言いたいことはよくわかった。しかし、君の言う通り、少しでも確率が少しでも上ならば、どうして法律で決めたらダメなのだ」
アーノルドが答えようとしたときに、隣に座っていたキャサリンがアーノルドを手で押しとどめた。そして、何やら「今度は私の番」という目くばせをすると、アーノルドは「わかったよ」と両掌を上にあげて、落ちるように座った。
「総統、私にも話をさせて下さい」
「キャサリン、君もアーノルドに賛成なのか」
「はい。それはアーノルドが私の元彼だからではありません。アーノルドの意見が筋が通っているからです」
「私はそうは思わんがな…」
「ふふふ。総統、よく考えて下さい。我が国は自由を愛する国として建国いたしました。しかし、世の中には勝負が存在するのも事実です。そして、その勝負に勝った者が世の中を支配する。総統はまさに勝者です。だからこそ、総統でいらっしゃる。そして、今総統はこの国の者たちに総統と同じような思いをさせて下さるために、勝てる確率を上げて下さろうとしているのです」
「キャサリン、その通りだ。私のような勝者の気分を皆に味合わせてやりたいのだ」
「しかし、総統。それを法律で決めてしまえば、その情報を他国が掴み、そしてわが国は負け続けることになります」
「ならば、その場合はその裏をかけばよい」
「そんな事をすれば、法律違反になります」
「そこは超法規的措置として許すことにしよう。総統の権限でな。勝つことが最も重要であるからな」
「しかし、それならば、法律を作らなくてもいいのでは…」
「はっはっは。キャサリンくん、そんな考えだから、君はここに立てないんだよ。法律はいざとなったら破るんだ。それを出来るものこそ、総統となれる」
この言葉にアーノルドもキャサリンも「どうやら何を言っても無駄らしい」ということに気づいた。
「こうして国は滅ぶかもしれない。でも賛成するしかない」
そこに集まったボードメンバーは自らの保身のために、賛成を投じることにした。
翌日、施行された法律には
「じゃんけんはまずパーで勝負するべきこと」
と明記された。
人間はおもわずグーを出す確率が少しだけ高い。にもかかわらず、チョキは二本伸ばし、三本曲げるという特異な形で出しにくい。ということで、最も勝ちを得やすいのがパーである。という理屈らしい。
この総統は、このやり方で総統にまでなったらしい。
相当な方である。

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