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いちご大福を食べて思い出したこと

この間、会社帰りにいちご大福を買った。通勤途中の駅の中には月替わりのスイーツを売るお店があって、その駅で乗り換えをするのでいつも視界に飛び込んでくる。気合を入れていないと誘惑に負けてふらふらとショーケースの前まで引き寄せられて、気づくとプチ贅沢みたいな価格帯の甘味をススッと買って電車に乗っていたみたいなことが何度かある。普段だったらお店の前でじーっくりゆーっくり考えたのちに我慢しようと決めることができるのに、そのお店はホームのすぐ横にあるので電車が来てしまうと焦ってええい!あらよ!と豪快に買い物を済ませてしまいがちだ。

いちご大福にはいつもその語感にやられて手に取ってしまう。美味しいものと美味しいものの名前がくっついて、さらにとんでもなく美味しいものになってるんじゃないかという期待を込めて買ってしまうのだ。

好きな方には申し訳ないけど、実はまだ一度もそのワクワク感に勝るいちご大福に出会ったことがない。そればかりでなく初めて食べて拍子抜けした時のことを今でも覚えている。何かの漫画かドラマか小説の中で、さも特別で美味しい食べ物だというような描写がされていて、その印象がすっかり自分の頭の中に刷り込まれてしまった。共感してもらえるか自信がないけど、ドラえもんを見てどら焼きはそんな素晴らしいものなんだという誇張されたイメージを持ちながらいざ食べてみるとそこまでだなぁ、はて...みたいな気持ちになってしまうのに近いことだと認識している。

そういうわけで、いちご大福に対していつも過剰な期待を抱いて買って食べてはウームこんな感じかぁと勝手にもやもやするこということを繰り返している。

案の定、今回買ってきたものも大福といちご、それぞれ分けた方が美味しいなぁと感じてしまいばらばらに食べてしまった。思い返せばそもそもフルーツのみずみずしさと、どちらかというと食べて水分がほしくなるものの組み合わせがあまり好きではない。同じような理由でフルーツサンドもその語感や見た目にそそられるけど、また食べたい!と思うものに出会ったことがない。

そんな中で唯一、忘れられないものがある。それは地元の通学路の途中にあるだんご屋さんで売っていたあんず大福だ。かなり歳を取ったおばあちゃんが店番をしていて、饅頭をサービスしてくれた。その時買って食べたあんず大福が美味しくて強烈に記憶に残っている。珍しく白あんを使っていて、その甘じょっぱさとあんずの酸味のバランスが絶妙だった。その後、何度か通りがかりに店をのぞいてみたことがあるけど、あんまり開いていることがなかったので今はもうお店をやっていないかもしれない。

懐かしい気持ちになってネットで調べてみると件数こそ少ないものの、Googleでも食べログでも絶賛のコメントが書き込まれていた。中でも大福は評判がよく、他にもバナナやキウイなど変わった果物を使ったものが売られていたらしい。ほとんどの人が自分と同じように通りがかりにお店に立ち寄って、だんごや大福の想定外の美味しさに衝撃を受けているようだった。興奮気味な口コミを見ていてやっぱり相当美味しかったよなぁと嬉しい気持ちになった。それでも2017年頃を最後に書き込みが見つからなくって少し心がざわざわしてしまった。

次に帰省をしたらお店に行ってみようと思う。どうやらそこではいちご大福も作っているようなので、今度こそ今までのもやもやが晴れるいちご大福に出会えるかもしれない。

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