Wave Island レビュー

7月27日は城間俊雄・正男兄弟の誕生日である。

今回は誕生日おめでとうの言葉に替えて、一枚のミニアルバムをレビューしたい。

Wave Islandの"Wave Island"である。

Wave Islandという店を知ったのは、2018年の1月、城間正男さんと食事をとり、食後のお茶を啜った後、渡された一枚のステッカーからだった。

「あげる。僕の息子と息子の奥さんの店のステッカーなんだ」

はにかむように笑う正男さんに手渡されたステッカーを見ると、"Wave Island"という屋号がトロピカルなフォントで書かれていた。

そっかあ、Islandは形を変えて継承されたのだなとステッカーを見ながら思った。

それから3年後、facebookにてWave Islandのミニアルバムリリース記念ライブが4月に行われたことを知り、私はfacebookでWave Island アカウントを見つけてコンタクトをとり、ミニアルバムを購入した。

数日後、届いたミニアルバムに私は目を細めた。アルバムジャケットの表面は切り絵調に描かれたWave Islandのメンバーの笑顔のイラスト。

裏を見ると、"Stay with me"のシングル盤のジャケットを思わせる空と海の写真。オリジナルが肩を寄せ合う恋人たちなのに対し、四匹の猫と一匹の子猫が寄り添い合うシルエットなのと、CDのディスクのデザインも、オリジナルIslandをリスペクトし、Islandの1stアルバム"Stay with me"のディスクのデザインを思わせるものになっているのが微笑ましい。

さて。内容やいかに?アルバムに収録されているのは三曲。

1: 時の羅針盤

2: May

3:Stay with me

先ずは一曲目、歌うはナミさん。

聴いた瞬間、浮かんだビジョンは明け方の凪の海だった。暗闇から日がだんだん上り、紺色、藍色、青、水色と色を変える空と海、日により淡い桃色に染まる雲。そんなビジョンが真っ先に浮かんだ。

そして、甘苦いカラメルを思わせるナミさんの歌声から感じたのは祈りや願いである。

特に「あなたに届けば声はなにかを変えられると信じて あなたに伝えられたら声はなにかを与えられる 信じて」という歌詞を聴いた際、以前、正男さんが私によく言われていた"My hand doesn't reach you, but my heart does(手は届かなくとも声は届く)"という言葉をふと思い出した。

柔らかながらも切なる思いがこの歌から伝わった。

次の"May"はレゲエ調の曲だ。ボーカルのAIKAさんが元気よく歌い上げるこの曲は過去への郷愁が感じられるが過去にしがみつくのではなく、過去を想いながらも今を生きる気持ちが滲んでいるそんな曲だ。

無意識にハミングしてしまう。


また、ラストの"Stay with me baby baby baby"というコーラスに微笑ましさとともに不意に胸が熱くなるのは私だけだろうか。このミニアルバムに関わった人々の温もりがとくとくと曲を通して伝わっていく。

最後の一曲は"Stay with me"。唄うは正男さんのご子息である城間滝さん。

全体的に声質は正男さんというよりも俊雄さんに似ているなという印象。特にサビの部分の尖ったハイトーンは俊雄さんの歌声と重なった。演奏自体もすこしラフさが感じられるがオリジナルを思わせるフレーズや音を感じ、滝さんなりの『音の継承』の現れなのかもなと聴きながら思った。

ちなみにこのカバーはライブ版のカバーである。スタジオ録音版ではフェイドアウトで終わるが、ライブ版は間奏は一旦止まり、溜めて唄われる「何もいらないさー」とスキャットで〆られる。

あえてライブ版のカバーにしたのも、毎夜アイランドで演奏を見聞きし、アイランドの栄華を網膜と耳に焼き付けた滝さんならではのアイランドへの敬意なのかと勝手ながらも推測してしまう。

そして、このアルバムのレコーディングとミックスの担当が沖縄の名だたるアーティストたちをサポートをされている音楽事務所、3rd waveの代表である浜里稔氏だとアルバムの歌詞カードを読んだ際に知ったときはにやりとしてしまった。思わず音への拘りと、ノスタルジックに浸らせながらも今を体感できる音を作るであろうという浜里氏への信頼が感じられたからだ。

最後に、このアルバムを聴き、伝わり、浸透した思いは「歌い継ぐこと」である。

別の歌手の曲からの引用で恐縮だが、今は亡きしばたはつみさんの『シンガーレディ』という曲があり、その曲にはこんな歌詞がある

「歌が歌手から離れても離れても 歌は誰かの胸に愛を届ける」

人が口ずさむことなく、だんだん忘れられ、風化していくとその歌は滅ぶ。しかし、誰かの胸に届き、その誰かが口ずさんで語り継いだり、歌い継ぐことで歌は生き続ける。

たとえ唄うものが遠い空の星になったとしても。

このアルバムは優しくも切なる継承の証。私にはそう思えた。


追記・現在、”Wave Island“では隔週土曜に、Islandのキーボードだった新川《マッタラー》雅啓氏をゲストに迎えたライブを行っている。
巡り巡って音がまた絆を紬ぎ、あの頃とはまた違うけれどどこか懐かしい音を奏でているのだろう。
私はそう思う。

※  Wave Island 1st ミニアルバム問い合わせ先

〒900-0033 沖縄県那覇市久米1丁目1−25 3A
ミュージックバー Wave Island 御中

080-6489-7373


(文責・コサイミキ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?