オキナワンロックドリフターvol.60

吹きすさぶ北風で冷えた体を温めようと、私はパルミラ通りにあるコザクラというバーに立ち寄った。
コザクラのオーナーは、ルポライターをされているマサコさんという女性だ。彼女の移住日記から私はJETやオーシャンを知れたのだ。
マサコさんは私の顔を見るなり、「ああ。よくJETで見かける子だ」と呟かれた。簡単な食事も出せるということだったが、オフ会があるので温かいさんぴん茶を頂くことにした。
マサコさんとしばらくゆんたくすることになった。お題は再開発について。マサコさんも言いたいことは山とあるという。
しかし。
「アタシだってあの再開発は反対よ。でも以前から決まったことだし、移住して今コザに住んでるアタシが表立って反対の声あげたら、アタシはここに住めなくなるし、最悪、石をぶつけられるから」と肩をすくめられた。
そうこうしていたら、お湯が沸き、ジャスミンの香りが漂った。私は熱いさんぴん茶を火傷しないよう吹いて冷まして、仕方ないのかなと思いながらも渦巻く不納得とともにちびちび飲んだ。
さんぴん茶のお代を払い、コザクラを去ろうとしたら入れ替わりに若いご夫婦が来店された。
マサコさん曰く、昨年来沖されてからコザにちょくちょく通う千葉在住のコザリピーター夫婦だそうだ。コザにかなりの頻度で通われているのかマサコさんとはかなり近しいようで、旦那さまのほうが目を輝かせながらマサコさんにコザでの出来事を話しておられた。
私も以前は見るもの全てが珍しくて、サイトを通してだけれどこんな感じで話をしてたなあとご夫婦を横目で見ながらパルミラ通りを去り、ホテルへ戻った。
一風呂浴びて着替えると、ムオリさんとのオフ会の会場である照屋はゆうなばの里という居酒屋に向かうことにした。
照屋……ということは、銀天街の方だなと思い、エコバッグにお土産の博多通りもんを忍ばせて中の町から銀天街まで歩いた。
携帯を使ってゆうなばの里を検索し、右往左往。
やっと店を見つけたものの、開店時間が遅れているようで寒い中店の前で待つことになった。
ムオリさんが来たのは午後19時だった。しかも、ムオリさんの友人だという女性が3人来られた。その中には後に色々とお世話になる、元比嘉清正&エネジーのボーカルで、Islandのセカンドアルバムにも参加されたチーコさんがいた。他の女性は、これまた音楽活動をされているリコさんという小柄な体と長い黒髪がかわいらしい方、島ナイチャーのミケにゃさんという香山リカさんをアクティブにしたようなルックスのお二方だ。
2004年の夏の失態があるので、オフ会に不安しかなかった。
しかし、オキナワンロック好きのミケにゃさんが私に色々話をふってくださり、チーコさんとリコさんが危うくない範囲のオキナワンロック裏話を披露してくださり、そしてその話をムオリさんのツッコミとボケのさじ加減による司会進行で盛り上げ、2004年8月の恐怖とそれによるオフ会苦手意識は緩和された。
しかも、ムオリさんのおすすめの店だけあり、料理はおいしかった。特に青菜の入ったおでんは味がよく染みていて、豆腐やこんにゃくを噛むと鰹の出汁がじゅっと広がった。骨つきカルビもカリカリに焼かれた見た目に反してジューシーで、私たちはよく飲み、よく食べ、よく笑った。ムオリさんには感謝しかない。
さらに、私が博多通りもんをムオリさんたちに配ると、ムオリさんから東京土産だという、当時人気のあったお菓子「空飛ぶ子ドラ」という小さな半月型のドラ焼きまで頂いた。
ひとしきり食べ、飲み、笑ったものの、チーコさんとムオリさんが翌日もお仕事だということで早々とお開きになった。
ムオリさんの計らいで、ムオリさんの奥様に車で迎えに来て頂き、同乗させてもらうことになり、パークアベニューで私たちはお別れした。
楽しかったものの、まだ物足りないし、時計を見ると、まだ22時近くだ。
私はパークアベニューにあるWeb-Spaceに、飲み直し+お手洗いを借りようと来店した。
すると、Web-Space内ではライブが行われていた。
その日のライブは地元ミュージシャンばかりのライブだった。 メインは、ココナッツムーンでもライブをしているElfというバンドで、ギターのshozyさんという方のギターの音色が洗練されていて、私は食い入るようにshozyさんのギターを聴いた。
さらに、飛び入りで参加された、小太りで眼鏡をかけバンダナを巻いた男性の弾き語りが印象的だった。その方は後に照屋で『アビー・ロード』というバーを営む内間さんだ。内間さん、新聞に関わる仕事をされていたそうで、辛口ながらも小気味良いプロテストソングを歌われていた。
JETや8-ballもいいけれど、こういうライブもいいなと思いながら、私はウーロン茶とコーラを交互にオーダーし、酔いを中和させた。
ライブはお開きになったものの、まだまだ眠くないしコザの夜はこれからだ。
〆としてJETに来店し、ドーンさんにジンフィズをオーダーしてライブを楽しむことにした。
この日のJETはJourney、Boston、Aerosmithをメインに演奏していた。 ターキーさん、コーチャン、あっぴんさんの演奏にアメリカ兵の野太い歓声と地元の人たちの指笛があがった。
私も店の隅でゆらゆら踊っていたら、来店していたジュンキチさんに「また会ったねー」と笑われた。
心地よい音楽にお酒で気分が良くなり、私はドーンさんにキューバリブレをオーダーしたのだが、それが大誤算だった。
もともとJETで出されるカクテルはアルコール強めなのだが、その日出されたキューバリブレはラムの味がかなり強く、立ちくらみがするほどだった。泥酔寸前になり、一気に鼓動が早まった。
私はふらつきながらも早足でサンライズホテルに戻り、自分の部屋に入るとバスルームへ駆け出した。気持ち悪さからうつ伏せになり、こんなに酔ったのはいつだったかなと思いつつ、込み上げる吐き気と目眩と格闘した。
ようやく体が落ち着き、時計を見たら午前3時過ぎだった。
私は歯を磨き口をゆすぐと、二日酔いを極力回避しようと冷蔵庫に冷やしておいた緑茶やさんぴん茶を片っ端からがぶ飲みした。

(オキナワンロックドリフターvol.61へ続く……)

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