オキナワンロックドリフターvol.91

雨音が激しくなった。私は濡れないようにとケーキの箱とバッグをコートでくるみながら『ティーラ』まで急いだ。
『ティーラ』は照屋宝石店に併設された、ワンコインという破格の定額制24時間喫茶だった。
店内はカオス状態だった。居眠りしながら人を待っているオバア、塾帰りなのか制服姿で喋っている学生、明らかにマルチ商法の勧誘というのがわかる優男風の営業マンの話を熱心に聞いている女性。
中にはやせぎすの男性が、ご飯を盛り付けてスパムを放射線状に配置し、それにカレーをぶっかけ、凄い勢いで食べる姿も見えた。
私は隅の席で本棚にあった竹宮恵子のファラオの墓を読みながら城間兄弟を待った。
おふたりが現れたのはそれから15分後だった。料金を支払い、私を探すおふたりを見て、私は勢い良く手を振った。
「まいきー、久しぶりだね」
開口一番挨拶をしてくださったのは正男さんだった。俊雄さんは会釈だけして煙草を吸っている。
「おふたりが来られたのですからセルフサービスのお茶もらいますね。何がいいですか?」と尋ねたところ、俊雄さんはすっくと立ち上がり、私たちが止める間もなく、予め用意された大きな急須に烏龍茶のパックを3つ放り込み、お湯を淹れた。当然ながら、お茶はパックの入れすぎで渋く、平然と飲む俊雄さんと対照的に私と正男さんは苦笑しながら水で薄めながら飲んだ。
最初から俊雄さんの行動にはらはらする逢瀬だった。正男さんは、カレーをよそい、頬張りながら私をじっと見ている。
「まいきー、どうしたの?ここのカレーおいしいよ。まいきーも食べればいいさ」と心配そうにされた。

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