オキナワンロックドリフターvol.115

一年次後期になると勉強のコツが掴めてきたのか。前期に比べて快進撃というくらい教授陣からお褒めの言葉をいただくようになった。
さらに。11月末にバイト、というよりボラバイトみたいなものか?偶然通りかかった市民会館の掲示板にてフェアトレードカフェの求人を見つけたのでダメ元で応募してみた。
数日後、カフェのオーナーから面接に呼ばれた。
市民会館向かいの文化会館にそのカフェはあるという。カフェのオーナーは、赤星さんという熊本でも名の知れた財界人の娘さんで、雑誌のライター等を経てフェアトレードに関わっているという、石原真理子を自然派とかオーガニックカテゴリに全振りさせたような容貌の女性だった。
カフェのスタッフさんが淹れてくださったルイボスティーをいただきながら赤星さんと話をした。
私はとある著名高機能自閉症者の方のブログで知った南米のフェアトレードアパレルメーカーからフェアトレードに興味があると赤星さんに話した。赤星さんはそれに気を良くしたようで早速採用された。
しかし、スタッフになるまで研修が4回あり、その研修中は無給。時給も最低賃金より10円だけ高いという価格設定ということが判明。しかし、奨学金の審査になるボランティアのイベントとかの参加の機会もあるし、一度はフェアトレードというものがどんなものかというのを学ぼうという下心から私は受け入れた。
客商売に向いてない私にはかなり至難のボラバイトだった。しかし、コーヒーのおいしい淹れ方や豆乳ババロアの作り方を学べたのは収穫だったし、違う大学の子たちがスタッフにいるので情報をやり取りできるのでそれは楽しかった。
後に、フェアトレードや赤星さんの姿勢に疑問が渦巻き、翌年の9月に退職したが、ボラバイトで出会ったスタッフの皆には感謝でいっぱいだ。
12月、やっとシフトに入れてもらい、文化会館が閉館する12月30日に仕事納めをし、閉店後に赤星さんの側近の方が来られ、初給料をいただいた。まだシフトに入る機会が少なかったので給料は5800円だったが給料は給料だ。
私は給料袋の封をあけ、夕飯代わりに駅のモスバーガーでモスチキンバーガーを買い、電車を待ちながらそれを食べた。
さて。年が明けたら後期の期末考査に日本語文章表現法の最後の課題が待っている。
何を書こうか?題材は自由だと金井教授には言われたものの、かなり迷った。
気分転換に、10月に沖縄テレビにて放送され、YouTubeでも公式に無料配信されている琉神マブヤーを観ることにした。
久住さんが影のスタッフとして関わっている琉神マブヤーは思いの外本格的なヒーローだった。
15分という短い時間ながらも王道かつ沖縄ならではのヒーローらしさが詰まっている作品で、最初は刹那的かつお調子者さが鼻についた主人公のカナイが悩みながらも成長していくさまや、敵キャラであるハブデービルのコミカルさと、正義の反対は必ずしも悪ではないという敵側であるマジムンたちのバックグラウンドに魅せられ、私は琉神マブヤーを論文にしようと決意し、SNSを通して久住さんに琉神マブヤーの論文を書きたいけれど大丈夫かと伺った。久住さんは快諾され、さらにプロデューサーの方のインタビューが掲載された沖縄の政財界誌や新聞の切り抜き等を送ってくださった。
それらを読み、沖縄の自然破壊等の問題もマブヤーで取り上げられていることがわかり、それならばと冬休みが終わると、すぐに生物学概論の担当教授と客員教授である地球環境論の教授の研究室にお邪魔して、法螺貝、オニヒトデ、ハブの生態や、人間に翻弄され、挙げ句駆除対象となったマングースについて根掘り葉掘り質問して教授を困惑させてしまった。

そして四苦八苦しつつも琉神マブヤー論文を完成させた。かなり分厚い論文となり、但馬くんに「コサイさん、いきなり卒論ですか」とからかわれ、大川くんに「ご当地ヒーローの論文って、コサイさんらしすぎ」とどん引かれた。
しかし、金井教授は私のチャレンジを受け入れてくださった。結果は優だった。

(オキナワンロックドリフターvol.116へ続く……)

(文責・コサイミキ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?