オキナワンロックドリフターvol.68

My Spaceでマリーさんの新曲“Asian Rose”のプロモーションビデオが観られるのがわかり、私は期待に胸を躍らせながらプロモーションビデオを見た。
音源は既にリリースされていたものの、地元のタワーレコードでは買えず、私は落胆し、マリーさんの新曲を空想するしかなかった。
狂い咲きライラックやBloody MaryみたいなJ-pop傾向なハードロック?それともWithout Loveのような儚くも美しいバラード?そう思いながら再生した。
しかし、申し訳ないが冒頭から拍子抜けしてしまった。
知花竜海氏のラップとチープなCGにガクっと肩を落とし、ゆるいレゲエ調のメロディになんともいえない気分になり、ロックの女王の復活にしては随分と脱力する曲だなと落胆した。
意気消沈して“Asian Rose”のプロモーションビデオを見終えた。
後にマリーさんはブログやオキナワンロック50周年記念誌に寄稿した文中で「“Asian Rose”はオキナワンロックの女王にはふさわしくないという意見が飛び交ったがオキナワンロックの女王の冠を下ろした私は気にはならなかった」と書かれていたものの、新曲発表以降、大きなステージで披露する曲の大半はマリーwith Medusaの4thアルバムで、一番ハードロック色の強い“Burning blood”の曲ばかりだった。やはり周囲の声に悩み、ハードロックをマリーさんに求める需要とハードロックではなく、癒すようなスローな曲を中心にしたいと思う供給の解離に翻弄されていたのかなとお節介ながら思ってしまったのであった。
あと、自身の大変だった経験からなのかマリーさんは女性中心のイベント等を考えていたようでマリーさんと近しかったマイミクの方の日記やブログにもそんなマリーさんのエピソードが散見されていた。2006年当時、沖縄市長選にて東門美津子さんが当選され、沖縄県政初の女性市長誕生からウーマンパワーアピールの風潮があり、そこからマリーさんは色んな活路を模索したのかもしれないなと私は当時のwebや沖縄移住者の方々のブログを思い出しながら推測した。
話を元に戻そう。マリーさんの新曲は正直な話、期待はずれだったが、下手ながらも英文で綴ったオキナワンロックについてのエッセイを読んでくださる方がいて、ジョーイというアニメ好きな元アメリカ兵からメールのやり取りをしようよという申し出があり、私たちはMy Space内でのメッセージやメールを交わした。
さらに、MurasakiやIslandという単語から検索してきたのだろうか、城間兄弟を知る方2名からメッセージがきた。
ひとりはフリオという名の元アメリカ兵で、沖縄にいた頃は毎日のようにアイランドに通っていたという。
もうひとりはジョン・ウェインという、綴りは少し違うものの懐かしの西部劇の名優と同じ名前のアメリカ人で、なんと、オリジナル紫解散後、城間兄弟と下地さん、吉田春樹さんで新生紫をされていた頃のドラマーだという。
フリオさんもウェインさんも懐かしそうに当時のことを話してくださり、フリオさんはアイランド時代の城間兄弟の優しさやよく遊びに行った時の話を、ウェインさんはビザの問題で捕まり、強制退去になった際に城間兄弟や吉田さんに大変お世話になったことを話してくださった。特にウェインさんは当時付き合っていたガールフレンドのことを大変気にかけており、彼女を知らないかと私に尋ねられた。しかし、沖縄在住でない私にそんなことを尋ねられてもどうにもならず、「私は沖縄に住んでないからわからないし、探すこともできない。ごめんなさい」と詫びると、ウェインさんは「沖縄に住んでいないのになんでオキナワンロックのことに詳しいの?」と驚かれた。さて、どう答えようか。私は辞書をひきながら必死でオキナワンロックや紫を知ったきっかけを拙い英文で伝えた。
すると、ウェインさんは「彼らの音楽が君の力になったんだね。音楽って凄いよね」と感嘆された。
私はフリオさんとウェインさんから、「トシオとマサオにメッセージを渡して欲しい」と頼まれた。
私はMy Space内の両人のメッセージをプリントアウトし、城間兄弟に郵送した。
郵送した数日後に城間家に連絡すると、その日は珍しく、俊雄さんも正男さん両方ともご在宅でアイランド時代のエピソードと共にフリオさんの想い出や新生紫時代の苦労話とともにウェインさんの想い出を語ってくださった。
俊雄さんはフリオさんについて「フリオ!あー、あいつの顔見たことある?ふうん、あいつのプロフィール写真見たんだ。あいつは顔がでかくてね。西川のりおそっくりだったよ」と語られた。
ど、どんなんや!とどん引きしていると正男さんは正男さんで「フリオはねー。愛嬌と顔のでかさが取り柄だったね」としみじみ語られた。フリオさんが大きな顔をしているのはよくわかった。
ウェインさんについては、ウェインさんが不法就労にて逮捕・拘留された際にカツ丼を差し入れに行ったエピソードを俊雄さんが話してくださり、正男さんはウェインさんが沖縄の天ぷらが好きでよくおやつとして買った天ぷらを一緒につまんだ話をしてくださった。
少しずつ少しずつ城間兄弟は紫やアイランド時代の話をしてくださり、私はそれらをスポンジが水を吸い上げるように聞き、インプットしていった。

(オキナワンロックドリフターvol.69へ続く……)

(文責・コサイミキ)

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