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”Social Mirai Design”「激変する時代の未来デザイン」(第8回)

今回の講義は、福井県鯖江市を拠点に活動する地域特化型デザインスタジオTSUGI代表/デザインディレクターの新山 直広さんでした。
TSUGIは、“支える・作る・売る・醸す”を軸に、未来の産地を醸成する様々なプロジェクトを展開、デザイン・ものづくり・地域といった領域を横断しながら、地域や地場産業のブランディングを手がけている会社です。
https://tsugilab.com/

1)ものづくりが元気にならないと、地域が元気にならない。
鯖江市は、めがねフレームの国内シェアが約96%というのを始め、漆器、箪笥、打刃物、和紙などといった伝統工芸が古くから盛んな地域です。
TSUGIは、こういった地元の産地企業の仕事にほぼ特化していて、「産地特化型デザイン事務所」(インハウスデザイナーならぬ”インタウンデザイナー”)という特徴があります。
通常、デザイナー事務所は案件ごとにいわば「点」で関わることが多いと思いますが、TSUGIは鯖江市に事務所を構え、福井県の仕事が98%。「線」で関わり、まさに伴走しています。
デザインだけでなく、ブランディングや流通網・販路づくり、職人さんのモチベーションに至るまで関わっているところが特徴的で、その意味では「面」での関わりになっていると感じます。
伝統工芸の企業にデザイン事務所が関わる場合、往々にして職人さんからは「おまえらに任せて、ほんとに売れるんか?」という目を向けられることもあるそうで、それを証明するためにも行商ショップや産地直営店などで「売る」というところまで責任を持ってサポートしています。(TSUGIとしてのオリジナルブランドも)
https://savastore.jp/

2)鯖江ってなんか面白そうだ。
古い工場などを改修し、6年間で24の工房ショップがオープンしました。
すると徐々に「鯖江ってなんか面白そうだ。」という評判が広がり、移住者が全国から集まってきたそうです。(約4,000人の集落に移住者100人以上!)
面白いのは、デザイナーや飲食をやりたい、小売りをやりたいという人ばかりでなく、ニートのような方もいるというところ。「やりたいことは特にないけど、とりあえず住んでみる。生活コストも安いし。」という人達らしいです。
特にコロナ禍においては地方の優位性が高まってきているように思います。
この移住の流れに行政もバックアップし、「ゆるい移住」という体験移住の事業も開始されました。http://sabae-iju.jp/

3)「本当の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目を持つことなのだ。」(マルセル・プルースト)
伝統工芸品は、ただ店に置いてあってもほとんど売れないと言います。そこで新山さんは地元の方々と一緒に、工房の見学や伝統工芸のワークショップなどを盛り込んだ観光イベントを企画、毎年開催されています。
https://renew-fukui.com/
工芸品がつくられる「プロセス」を見せることで、五感を通じてお客さんの共感が高まり、職人さんのモチベーションアップにもつながります。
言葉じゃ伝わらない熱量みたいなものですね。
単なるsightseeingとしての観光ではなく、新しい視点で観光を考えてみた結果、このような形態にたどり着いたのだと思います。
また、イベントの一環として、「あかまる隊」というサークルを結成し、参加する学生に「なんでも好きなことやっていいよ。」と言っているそうです。こういう「余白」を意図的に作ることは、参加者の自主性が発揮されたり、企画の幅が広がる意味でも大事ですね。
https://renew-fukui.com/2020/05/07/circle/

4)リサーチすると天才が見つかる。
デザインをする上で、リサーチ→プラン→コンセプト→デザインというプロセスを辿るとき、新山さんは「リサーチ」を特に大切にしているといいます。
和紙工房から新ブランドのオーダーを受けてリサーチしていく中で、その工房の次男が、食べ物(にんじん、ごぼう、しょうが、キャベツ、ねぎ等)から紙をつくる研究を小学4年生から5年間続けていることを知ります。
新山さんは「これだ!」と思ったそうで、季節ごとに旬の野菜を漉き込んだ和紙をブランド化して販売。発売開始からすごい人気だそうです。(これほんとにいい!)
https://foodpaper.jp/

5)ものづくり、ことづくり、ひとづくり
TSUGIは、ものづくりとしてのデザインだけでなく、観光イベントのような「ことづくり」と、関わる「ひと」とそのつながりをデザインしているのだと思います。
通常、デザイン事務所が工房にかかわると聞くと、職人さん達にとっては外発的動機となります。
ただ、それではうまくいかないと言います。職人さん達、地域の人達が「このままじゃマズい!」という内発的動機に突き動かされてこそ、取組みが進んでいくのだそうです。
前の講義でも聞いた「毛穴から衝動」というやつですね。
そして、関わるメンバーの役割として、「はじめる人」と「ささえる人」加えて「まとめる人」が必要です。

それにしても鯖江市、面白いです!
鯖江市役所JK課とかもやっちゃってます。
https://sabae-jk.jp/

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