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暮らしの中で生木の器挽きをする、という夢が叶いました

大きすぎることが起きると書いている場合じゃなくなるのは、マーフィーの法則でしょうか。3月末に超久しぶりの遠出をして、古殿のクラフトハウスさんを訪ねて以来、生木の器挽きがとうとう暮らしの一部になり始めました!

足踏みろくろでの生木の器挽きは、5年前に一度、岐阜のグリーンウッドワーク協会さんの工房で体験させていただいて以来、憧れつつも、到底自分ひとりでできるようになるとは思えないでいました。

▽初めての器挽き体験。グリーンウッドワーク協会の小野さんに教わりました。先生のお力をだいぶんお借りしつつこのとき挽いた器は、今も毎朝、オートミールを食べるのに愛用中!

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さて、このはかない憧れは、グリーンウッドワーク指導者養成講座のときのお仲間に誘っていただいて古殿のクラフトハウスさんにお邪魔するようになってから、自分の意識も追い付かないところで熱を帯びていき。。ロクにひとりで器を挽けもしないのに、器挽き用の足踏みろくろが欲しい、と感じるようになってしまい。。。クラフトハウスの井丸さん、中津川グリーンウッドワークベースの原さんはじめ養成講座仲間の伊藤さん、辰野さん、草刈さんほかのみなさんの大いなるお力添えで、おととしのゴールデンウィークに中津川グリーンウッドワークベースにて、ろくろづくりが始まったのでした。

▽一応完成にこぎつけた、足踏みろくろ。

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途中経過はここに少し書きました。

このろくろに関わってくださったお仲間のみなさんに試し挽きを体験していただいてからわが家に引き取らせていただこうと思っていたところに、コロナな時代が到来。みんなで集まることもできにくくなり。。。

そんなこんなでこの3月末日、くだんのろくろはわが家にやってくることになりました(組み上げやすいようにパーツに印をつけたり、乾燥後ねじれが出たパーツを微調整しておいてくださった原さん、中津川から藤沢まで道中を楽しみつつ運搬してくださった伊藤さん、心から感謝しています)。

その時点で、生木の器挽きを教わりにクラフトハウスを訪ねたのは2度だけ。そこで挽いた器も4点だけ(しかも井丸さんたちに大幅にやっていただきつつのものばかり💦)。

足踏みろくろをわが家のどこに設置するのかも、動力をどうするのかも、白紙状態。。。ろくろのパーツを部屋の隅に積み上げ、そのままクラフトハウスへと向かいました。

▽積み上げられた、足踏みろくろの全パーツ。

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■生木の器挽き用の、刃物をつくりに

3度目の訪問となるクラフトハウスでのメニューは、足踏みろくろでの器挽きに使う刃物4本をつくる、というもの。以前クラフトハウスで木工用ナイフの鍛造に挑戦させていただきましたが、鍛冶仕事はそれ以来で、相変わらずのド素人です。

「このくらいならできるだろう」と井丸さんが考えてくださっていた範囲の作業すらこなしきれず、申し訳なさが募りましたが、それでも鍛冶仕事(真似ごとレベルでも)はめちゃくちゃに楽しくて。手押しのふいごで炎を煽るときの呼吸するような心地よさ、赤まった鉄を打って伸ばしてゆく感覚、仲間たちと声をかけ合い励ましあいながら過ごした鍛冶場での時間や、みんなで語り合った夜ごはんの時間、どれもかけがえないものでした。

▽見よう見まねの鍛冶仕事の様子。。。

できあがった刃に、桜の幹を割って削って柄をすげて、なんとか完成した刃物4本。愛しい。。

刃物ができあがって帰宅したら、こんどはこの刃物を研ぐ体制を整えなくちゃなりません。というわけで、回転するテーブルバイスが欲しいなあと思っていたら、近所の花屋さんでまさかの出会いがあり、アンティークだけどしっかり実用できるバイスを購入。

刃の内側は、今まで使ってきた研ぎ棒では太すぎて入らないので、もっと極細の研ぎ棒をネットで探しました。

▽DMTのダイヤモンドシャープナー。買ってすぐ使おうとしたらプラスチック製の柄がバキッと割れ😿、かわりにセンダンの枝をすげました。。

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■ろくろの設置場所、これいかに

やってきたろくろのパーツは、一度実際に組み立ててみてサイズを確認しました。重たくてひとりではなかなかチャレンジでしたが、なんとか組めた。。そして記憶の中のサイズよりも現物は大きかった。。!

さて、これをどこに設置するのがいいか。理想としては屋外に、屋根的なものをさしかけて設置したい。木々や空を眺めつつ器挽きをしたい。。でも、ここは湘南。海風の塩害や台風時の強風を考えると屋内で大切に使っていくほうがいいと思い至りました。

以前から「リビングルーム工房」と呼んでいた、リビングの一角の一畳分くらいのスペースに置いてみると。。圧迫感が出ちゃうかと思いきや、なんだか「頼れる何かがそこにある」という感じの場になって、違和感もなく馴染みました。歓喜。

器挽きばかりをいつもするわけではないので、使わないときはろくろ下のスペースは、はつり台などもろもろをしまっておける空間になりました。

■頭を悩ませていた動力源は。。。

足踏みろくろを動かすための動力源はどうしよう。いろいろ悩んだ挙句、「とりあえず家に今あるものでやりくりしてみようかな」と思い付きでやってみたセットアップがこれ。

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今まで物干しに使っていた細い竹(裏庭に生えてたもの)と、ステップスツールと、古いピアノベンチ。

ステップスツールの座面の穴に竹を挿し込み、重量のあるピアノベンチ(with大量の本)でこのスツールが跳ね上がるのを押さえる形です。

こんなんじゃだめだろうと思いつつやってみたところ、意外と大丈夫でした。(この「へんてこ方式」、人様におすすめはしませんが、今のところ機能しています。様子見しつつ、不具合が出てきたらまた改善を試みようと思います。)

■試運転。。器挽きの練習はじめ

試運転できそうなところまであと少し。まずは刃物を研ぎました。

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そして「器の素」を木取り。いただいたキンモクセイの幹(御殿場のお庭からの剪定木です、順子さんありがとう!!)を半割りにしていきましたが、キンモクセイは繊維が入り組んでいるうえに節もあって、一苦労💦

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やっと半分に割れたら、こんどは斧で器の形っぽくはつっていき。。

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これに手回しドリルで穴を開け。。。

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その穴に、ろくろ挽きのときの回転軸となるパーツを打ち込み。。

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いよいよ挽き始め!

■初めて全工程を自分ひとりで。。できるのか。

クラフトハウスで教わったことを思い出し。。刃物を当てる角度をその都度確認しつつ丁寧に。。。ひたすらそう思いつつやりました。刃物を当てる角度はひとつ間違うとガツンと材にひっかかり、そうなると刃先がこぼれかねないし、器の表面もデコボコになるのです。ちょうどよくシュルシュルーっと削れる「スイートスポット」をひたすら探し求めていくわけですが、これがなかなか難しい!

だからこその練習です。。というわけで、ただひたすらに。

表側を挽き、ひっくり返して内側を挽く。

最後の最後は、体力も尽きてきてほんとうにしんどかった。。。奥まったところを挽くときは、もう刃先を目視できないので、刃先を当てる角度も感覚に頼るしかなく。でもこの時、なぜか一番ふっきれて削れて、スイートスポットに当たり続けたのは不思議でした。

■2年越しの夢が叶った。。

ろくろから外した器は、最後にへその緒が切れて「でべそ」になっている部分と、その裏側(器の底)にある「そへ」をカーブのついたナイフできれいに整えました。

「足踏みろくろをつくって、そのあと刃物をつくって、生木の器を挽く練習を始める」という、野ねずみのような自分にとっては壮大すぎる計画に思えていたことが、心強い方々のお力を借りて、2年越しで実現した瞬間でした。

器を挽いている時間は、ほんとうに深々と満たされる感覚があり。。やっぱり不思議。ここまでくる途中でも、中津川に置いてあるろくろのことを考えただけで身体の奥のほうからじわーーっと「うれしい物質」が湧き上がってくる体験が一度となくあって、そのたびに驚いたものでした。

(一度目に「うれしい物質」が湧き上がってきたその日、クラフトハウスへろくろ用の刃物づくりを教わりに行こうという話が仲間内で出たのも、びっくりしました。タイミングの妙。。)

身体は正直というけれど。足踏みろくろに関しては、身体から帰ってくる反応が自分の意識を越えていることが多くて、とにかく不思議です。自分としては「なんだか知らないけど好きみたい」としか言いようがありません。

足踏みろくろとのこのご縁。ありがたくて、クラフトハウスの井丸さん、中津川グリーンウッドワークベースの原さんはじめ、関わってきてくださっている皆々さまにはほんとうに感謝してもしきれません。。!

少しずつ練習を重ねて、いつか、この歓びをリレーしていけるようになりたいです。

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ぐり と グリーンウッドワーク




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