見出し画像

生きものの一員として生きる、を模索するなかで

森林再生指導員研修を受けて、ひとつ、明確になったことがありました。

それは、人が暮らしのために切り開いた地はすべからく、自然にとっては「かく乱を受けた森」だったのかもしれない、という視点。

少なくとも私の住んでいるあたりでは、もしここに人の暮らしがなければ、数十年のあいだに地面のあちこちに草が生え、つる植物や低木が育ち、そのうち光の好きな木々(陽樹と呼ばれる落葉樹)が育ち、ゆくゆくは常緑広葉樹(濃い緑の幅広な葉っぱをつける木々)がメインの多層構造の森に還っていくのが自然な流れ。つまり大地は、常に元の姿に戻ろうとしているんだ、と。

大好きな松本敏将さんの曲「森」は、まさにこのプロセスをとても丁寧にうたってくださってます(長編叙事詩みたいな曲ですが、すごくとてもいいので、お時間ある方は聞いてほしいです!)。

長く安定していた、おおもとの姿は、多層構造の(背の高い木、中くらいの木、低木、草々が多種多様にそろう)森だった。デフォルトがこれだった。

たとえば雷がおちて、背の高い木が倒れると、そこの林冠(森の天井部分)の一部に穴が開く。これが森の「かく乱」と呼ばれる現象のひとつ。

もしくは人が木々を切り倒して、薪炭として利用する(繰り返し利用し続けて里山林とする)、これもひとつの「かく乱」。森を切り開いて田畑にするとか、街にするのも、そう。

ホメオスタシスを保っていた多層構造の森(生きものの多様性が確保されていて、自然の循環の中にある森)は、こうした「かく乱」を受けると、おのずと元の姿に向かって回復を試みていくのですね。

裸地にされるような「かく乱」の場合なら、まずは大地をてっとりばやく覆うために草や笹などが生えてくる(それらを「自然界のカットバン」と私の先生は言ってました)。裸地までいかない「かく乱」の場合は、どのくらい林冠に穴が開いたかによって、光の好きな成長の早い木々がまず穴を埋めようとしてくれたり、つる植物が藪をつくったり。

とにかく徐々に選手交代しながら、植物たちはさまざまなやり方で地表を覆い、地下に根をめぐらして、元の安定した状態(極相林)を目指すんだそうです。

だから少し放っておくと、どこにでも草が生えてきますね。。それらを「雑草」と呼んで、人はなんとか制御しようとして、刈ったり抜いたりするのだけど、いくらそうされても、あきらめることなく、大地側は「回復」を試みる。

同じように、例えば人が草地を草地のまま循環させて保とうとする、里山の雑木林を雑木林のまま循環させて保とうとする、材木用途の植林地(スギ・ヒノキ林)をそのまま循環させて保とうとするなら、人が手を入れ続けないと、その姿に保つことは叶わない。

人にとって都合のいい大地のありようは、大地にとって都合のいいありようではない、とも言えるのかな。。。

大地はもっと全体として(生きもののみんなにとって)都合のいいありようを常に目指していて、それはどうやら極相林(常緑広葉樹メインの多層構造の森)みたいです。だからほうっておけば、200~300年後には極相林におのずと戻るし、戻ったあとは9000年くらい(大きなかく乱を受けなければ)その姿で安定して持続していくんだそうです。

人の手が入らなくても、おのずと持続可能な森の姿。そこでは多様な生きものたちが循環しながら安定した暮らしを営んでいくんですね。

文明がこんなにも大地をかく乱しまくっているがゆえに、大地自身が望む安定したありようを叶えられていない場所が増えて、久しい、ということで、戦争などはかく乱の最たるもの……。そうした大規模なかく乱後、人の手で緑化した場所がたくさんあるけれど、それは自然そのものが指向する姿ではないことが多くて。

そんななかだから、少しでもその土地本来の自然な姿の安定した森が、みずからを体現できるような場所をつくってあげたいなと、思っています。

多様な生きものが暮らせる多層構造の森は、張り巡らされる根のネットワークによって地中の水や空気の通りも健やかにしてくれるので、土壌の生きものの多様性も増すし、地中の水・空気の巡りはひいては川の水もきれいにするし、その周囲の大地も海も健やかにします。

しかも地上ではこうした森は、津波や台風や火事から人の暮らしを守ってもくれます。大津波のときも、こうした森があった一角は流されてくる車などをせき止めて、その奥の場所を守りました。大規模な火事があったときも、こうした森に囲まれた場所は、分厚い濃い緑の葉っぱの木々たちが火の燃え移りをせき止めたため無事だったという記録があります。こうした森は防風のついたてにもなってくれます。深く張り巡らされた根のネットワークは土砂崩れを引き起こす心配がないばかりか、土壌を改善して土砂崩れの起きにくい土にしてくれます。

元に戻りたがっている大地の声に沿って森づくりに取り組んでいるのが、私の先生率いるSilvaという団体です。裸地が元の多層構造の森に戻るには、通常なら200年~300年かかると言われますが、自然にまかせていればその地に生えてくるはずの樹種(「潜在自然植生種」)を調査し、それらの小さな苗木を自然界の作法に近づけて植えてあげることで、20年~30年で元の姿に近い森を再生させていこうとしています。元の森に戻るまでの時間を進めてあげる、お手伝いです。

来月(5月8日)にまた、この目的での植樹をするため、現在ボランティアを募集中です。植樹地は、かつて大規模に開発するために買い取られ、大幅なかく乱(山の尾根を爆破して削ったり…)を受けて裸地同然になっていた広大な土地の一角です。開発がとん挫して、土地は寄贈され、以来そこを本来の姿の森に戻そうという取り組みが長年継続中で、年々、森化が進んでいます。

植樹は、移植ゴテ(小さなスコップ)ひとつで、誰でもできます。どんぐりを地面に埋める小動物みたいに(貯食のために埋めておいて、結構な割合で埋めた場所を忘れると言われてますね)、種を運ぶ野鳥のように、われわれも、生きものの一員として自然が行う森づくりにちょこっとだけ参加できる機会です。

私も初めてこの作法での植樹を体験したときに、「生きものの環の中に戻りたい」という長年の願いが、ようやくほんの少し叶ったように感じました。

よかったら、ご一緒しませんか。

詳細>https://onl.la/UEhuEey
参加お申込み>https://onl.la/LNzywE5

#silva #miyawakiforest #潜在自然植生







応援をいただけたらとってもうれしく、励みになります :)