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「好き」が込められた、ラブスプーンのお話


グリーンウッドワークに出会う前の私は、木削りの衝動にかられると、近所の建設現場に落ちてた端材とか、近所の川原に落ちてた枝とかを拾って削ったものでした。

当然乾いていて硬い。そして刃物も彫刻刀セットしか持ってなくて、机に向かってちまちまと削ったものでした。

グリーンウッドワークと出会って、最初につくったのは、ダイニングチェア的な椅子だったんですが、そのとき実は、森の中に1週間寝泊まりして「椅子をつくる」か「スプーンをつくる」か、という選択がありました。どちらもグリーンウッド(未乾燥の木)を使って、丸太を割ったり切ったりするところから手道具だけでつくる、というもの。

右も左もわからず「どっちにしようかな」と迷う私に、先生のマイク・アボットさんは、「椅子にしなよ!椅子の方が満足感あるから!」と勢いよくおっしゃり。。。私は椅子にチャレンジすることにしたのでした。

その選択に今も後悔は1ミリもないのですが、ただ、木のスプーンへの思い入れはやっぱりずっとあった。。。

というのも、相方とのご縁を取り持ってくれたのが、アイルランド製の木のスプーンだったから。

バレンタインの日、仕事あがりの私に会いにきてくれた彼女がプレゼントしてくれたのが、そのスプーン。

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少し前に仕事がらみでアイルランドに行っていたので、ふつうに「お土産なんだな」と思って受け取ったのだけど、家に帰ってからそのスプーンに付いていた説明書きを読んでびっくり。

ハートのモチーフは「愛」の印、ベルのモチーフは「結婚」の印と書いてあって!

え。これってもしや俗に言うプロポーズ。。?

と思ったら、心臓が、ぼはっ、となりました。

アイルランドではプロポーズとして「ラブスプーン」という木彫りのスプーンを送る習わしがあったらしいと知ったのはそのあとでした。

アイルランドだけでなく、ウェールズ、ドイツなどにも古くからこの習わしは伝わっていて、おそらくケルトの文化なのかな? 装飾を施した木彫りのスプーンを送ってプロポーズするのは、「木工のスキルがある=伴侶に値するだけの腕&生活力を持っている人物」という図式があったかららしい。

木を重視する文化ならではの習わしだなあと思います。

さて、この「ラブスプーン」をもらった私は即座に、「これは自分でスプーンを削ってお返事するしかない」という衝動にかられ、近所の川原へ行って枝を拾ってきたのでした。

そのとき彫刻刀で彫ったスプーンは。。。とうていスプーンといえる形とは程遠かった💦のだけど、柄の先端部分には四つ葉のクローバーのモチーフを彫ったり、ちまちまと楽しく削ったのは覚えています。

そんなわけで、私にとっては「木を削る」という行為のごく最初のほうにスプーンがありました(もっと前のほうでは、わけのわからない造形物を彫っていたのですが💦)。

このスプーンを相方にあげることで「お返事」したつもりだったのですが。後で知ることになったのは、相方は実はくだんのラブスプーンに「結婚」という意味まであったことに気づいていなかったこと。。。一応「ラブスプーン」というものらしいということはわかっていたそうなんですが、意図的に「プロポーズ」したつもりはなかったらしかった💦

でもわたしがあげたスプーンをとても喜んでくれて、そしてわたしたちはおつきあいを始め、その年に一緒に暮らし始めて今に至る、のでした。

相方があのときくれたラブスプーンは、今もリビングの壁にかかっています。相方のあとに、親友からもケルトのラブスプーンをおみやげでもらったので、2本仲良く。。。

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グリーンウッドワークを始めてからというもの、友達や親族にあげようと思うと手が動いて、そうやって何本もの木のスプーンを削ってきました。もちろんそれらに「プロポーズ」の意味はないですが(!)、でもやっぱり「好き」の印ではあったなあ、と思うのです。

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誰かのことを思いながら削ると、やっぱり「好き」のエッセンスはそこに浸みこんでくだろう、と。。

(最初からその人のことを念頭において削るときと、なんとなく削り出して形が見えてきたあたりで「これはあの人にあげたいな」と思い始めるときと、両方ありますが。)

ちなみに、ケルト文化圏のラブスプーンは今では実際にスプーンとして利用する、というものではなくなっていて、装飾品という位置づけになっているそうです。確かに、実際に使うとなるとちょっと使いづらいかな、というフォルムをしています。

スプーンとして機能的なフォルムってどんなフォルムかな?ということもまた、改めて書いてみたいと思っています。。

P.S.
〈ぐりとグリーンウッドワーク〉としてグリーンウッドワークの体験をひとともっと共有していこうと思ったときに、まずはスプーンづくりから、と思ったのも、それが小さくて始めやすいのもあるけれど、自分にとってスプーンはやっぱり想いを乗せやすいからなのかもしれないです。

スプーンづくり体験、基本的に女性限定なのですが、湘南でちまちまとやっています、よかったらどうぞ😊

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ぐり と グリーンウッドワーク guritogreen.com


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