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山田耕司句集「不純」

俳句同人誌「円錐」編集人、山田耕司さんの第二句集「不純」を読みました
まず、目次に倣って気になる句を挙げていきたいと思います

一 ボタンA

煩悩やあやとりは蝶そして塔

跳び箱よ虹は橋ではなかつたよ

濡らさるるこの奥ゆきをところてん

肩に乗るだれかの顎や豊の秋

エビフライずれてをるなり紅葉山

梳くや髪小春日の人かたむけて

鱈子焼くどちらの岸も隅田川

古池や押すに茶の出るボタンA


二 身から出たサービス

うぐいすや順番が来て巴投げ

にんげんに名札をくばり蛍狩

いろいろの死んで秋なり白湯に色

南瓜切る浅撫でに撫でほめてのち

秋耕の目鼻がありて二三人

文鳥や用もなく見る野菜室

輪投げの輪かぶりて春を惜しむなり


三 目隠しは本当に要らないんだな

五周目からはひとりになるしつちふるし

二階には泥鰌が足りてゐて静か

金魚ありもうだめなのかと声のあり

向日葵よ目隠しは本当に要らないんだな

涙より重たき零余子ではあるが


四 握手なら手を握れ、手を

血管を想ふキャベツとなりにけり

みつ豆の叱る側だけ泣きながら

夏暗く持たされてゐる縄の端

口に芋を食はせてをるや火星見ゆ

冷蔵庫じいんと鳴らし初明り

このレヂと決め長ネギを立てなほす

三人目きて飯をくふひなまつり


五 山田耕司VS山田耕司

男手をわたりてきたる西瓜切る


六 眼球は常に全裸

飲食を石に勧めて春彼岸

骨埋めてしばし見てをり春の泥

春の日や壺はうつろに耳ふたつ

抜け柄杓沈むにまかせ涼しさよ

焚き火より手が出てをりぬ火に戻す


七 あ、また花束だ。

はつ秋の頭の上を紙の舟

鬼燈や垂らせる袖のなかに腕

寒たまご切るに斜面のうまれけり

鶯や滝は高さを立つごとく

合掌のひとりは蝶を籠めしこと

地球儀の極はネジ留め茅舎の忌

榾は火を豪雨は街を得たりけり


八 耳に、たぶ。口には、びる。

あけぼのや乳房仕舞ふに目を見つつ

我が影の消ゆるのちをも花筏

人体は来たりて囲む馬の恋

つちふるやたて線上のここは臍


九 地球のある方が下

弟よおろすとき抱くヒノマルよ

しばらくは文鎮たるも烏瓜

冬の日や牛は去りつつまだ見えて

滝を聞くうしろ姿をならべけり


十 脱ぎたては柔らかい

大黒ぬるり鍾馗ざらりとこどもの日

本物は匣に入れられ麦の秋

仏たり炎暑冷たき髭剃られ

ふるさとや玉にラムネの底とほく

盂蘭盆会本は戻すに背を押して

口から出す要らない骨よ秋彼岸

さびしさの家々に屋根船に底


山田耕司さんの御句は「難しい」という印象を持っていました
よく引かれる
焚き火より手が出てをりぬ火に戻す
何を手がかりに呼んだらいいのかわからないでいましたが、今回句集の中にこの句を見たとき、「あ、いい句だ」と思いました
自分の何が変わったのか、他の句の鑑賞などは後日

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