見出し画像

CHERRY BLOSSOM FRONT345を数年ぶりに観た

ラーメンズをご存知だろう。
もじゃもじゃともじゃもじゃじゃない、おおよそメガネの二人組だ。
ラーメンズを知りたい人は公式や、Wikipediaのほうが詳しいので参照にしていただきたい。

タイトルの公演は2002年の春に行われた公演だ。
今から22年前の作品だが、今視聴しても違和感のない面白さである。
もう22年前の公演なうえ、ラーメンズの公式YouTubeで動画が上がっているのでネタバレ等に関してはご容赦いただきたいし、ネタバレが気になる人は観てから読んでいただきたい。

本人不在
あの国営放送の集金の話。集金詐欺を謀ろうとしたり辞めたりするコント。
「そうですね、死んじゃったかもしれないですね」の言い方が大好きなので仕事でも時々使っている。主に約束の期日に音沙汰がないお客様に対して「死んじゃったかもしれないねぇ」と言ったりしている。
屁理屈を捏ねまくる小林賢太郎が拝める。

エアメールの嘘
大学の卒業旅行でアラスカに行った男と江ノ島に行った男の会話。
「興(きょう)めよ!」など時々使いたい言葉が散りばめられている。
同居人氏と鑑賞していたが、小林賢太郎が届いたエアメールの内容を聞いているシーンで「?」と同じようにリアクションしているのを私は見逃さなかった。知識のある人間はちゃんと気付けるのよね……。
どちらかというとテンションのコント。大好き。

レストランそれぞれ
超能力を信じる男とその友人がレストランで食事をする話。
いい話風である。
ウェイターの小林賢太郎がここぞとばかりだ。私の大好きな胡散臭くキレのある小林賢太郎だ。
2人で4人分演じる。

怪傑ギリジン
みんな大好きな怪傑ギリジン。この後の公演で路上のギリジンやギリジンツーリストなど派生していく。
片桐仁!オン!ステージ!といった感じだ。このコントは小林賢太郎を笑わせたら勝ちなのだろうか、と思わせるほどの片桐仁の暴れっぷり。
「雨の路地裏に震えてる猫を守るんです……やー!(剣を振り下ろす)」を久しぶりに見て笑った。奇しくも猫の日に日付が変わったころだった。

小説家らしき存在
よくあるラーメンズの怖いコント。原稿を書き上げる小説家と原稿を待つ編集者の話。
演技力の勝利なんですよね。マイムだけで表現するところとか、「みんなが想像する小説家ってこんな感じ」感がすごい。そして「みんなが想像する小説家」から「一介の編集者」に戻るところの切り替えがすごい。
あとストーリーというか、トリックが単純なのに効果的で好きだ。
ちなみに眠たいときの解消法として「ニッパーでアキレス腱を切るのはどうだろうか」は定期的に提案している。

マーチンとプーチン2
かわいい系コント。FLATという公演で出てからの二度目。なのでマーチンとプーチン2。
鼻兎に通ずるところのある言い回しと雰囲気。なんだろう、モラトリアム感があるのかな。モラトリアムであってるのかな。あってるかな。あってるな。
このコントが好きな人は多分鼻兎も好きだと思う。全4巻で集めやすい。

蒲田の行進曲
この公演のトリ。花見の場所取りをする二人組の話。
公演によるのだが、時々公演の最後の演目が文学作品オマージュになっている。この話も読んだ通り蒲田行進曲のオマージュである。
蒲田行進曲はつかこうへい作の戯曲だ。私には階段落ちをするとかしないとかの話、くらいの解像度しかない。
このコントに戻そう。
どうしようもない元ガキ大将のコンドウと気の弱いオオシマが、会社の花見の場所取りをする話と言ってしまえばそうなのだが、私はこの話が大好きだ。初めて観た時、中学生ながらに”なんだかかっこいい”と思ったからだ。暗転して場転するだけの照明がこの話のラストだけスポットライトになるし、そこに桜の花びらが降り注ぐのだ。
このシーンは物語の最後、コンドウがオオシマに仕事を辞め、アラスカに行くと大見得を切るシーンだ。アラスカ、発掘、聞き覚えがあるなぁ。
聞き覚えも心当たりもモリモリだが、その分を差し引いてもカッコいいシーンだ。
大人になってからこのコントを観ると自分の見ている世界の解像度が少しだけ上がっているのに気づく。
「滑り台逆走して階段滑んだよ」は蒲田行進曲の階段落ちのことだったんだ、とか「駄菓子屋の万引き中学生を成敗するために駄菓子屋に討ち入りした」も、池田屋に討ち入りするということだったんだな、と今更ながら気づくなどした。
そして大人になって、コンドウも結局一人の大人であるということに気づく。コンドウがただ荒くれのならず者なだけではないのが「桜の花があと3時間持つか」のくだりで「ピークって短いんだよな」とこぼすところだ。
コンドウのピークはガキ大将の時に多分終わってしまったのだろう。コンドウだってわかっているのだ。
むしろオオシマの方がわかっていない。
ネタバレになるが、オオシマは社長だ。そしてコンドウはオオシマの会社でバイトとして雇われている身だ。
始まってからずっとコンドウはオオシマを子分として扱い、本来の立場と逆であること以上の狼藉を働いている。が、オオシマはニコニコしてやられるがままである。
コンドウが傍若無人に振る舞えば振る舞うほど、後々の”オオシマが社長であること”が効いてくる。
本当はこんな子供じみたことをしていいわけがないということは、実はコンドウ自身が一番よくわかっているのではないだろうか。
そして更に勝手な妄想だが、オオシマはこの狼藉を受け入れることによって”かつての輝いていたガキ大将のコンドウの姿”は健在なんだ、と思い込みたいのではないだろうか。
地球を救う正義の味方に、誰もが憧れて誰もがその夢を諦めるのは世の常である。
本人ですら半ば諦めた正義の味方でガキ大将のコンドウを誰よりも求めているのはオオシマで、最早”正義の味方であるコンドウの存在”はオオシマの夢である。
その後コンドウがどうなったかわからないし、オオシマの会社もその後の円安だなんだでどうなったのだろう。実在する会社ではないけれど、フィリピンの工場の話が出ていたから心配になった次第だ。
いずれにせよ、私が書かれていないことを勝手に読み取った結果の感想である。
そしてこの記事を書くべく、再度ラストシーンを確認したがやっぱりかっこいい。本当にかっこいい。

ラーメンズはお笑いなのか、それとも演劇なのか、意見は割れるところである。
しかしゲラゲラ笑える演劇があるのなら、ニヤリとさせられるお笑いがあったっていいだろう。
今後ももしかしたらラーメンズの記事を書くかもしれないが、このくらいの熱量に差のある記事になると思われる。

次はATOMかSTUDYでも観ようかな……。

※記事内のオオシマ物産の取引先工場を北京と間違えていたのでフィリピンに直しました(2/25 0:03)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?