「長崎の鐘と聖コルベ神父・前編」 長崎原爆記念日に寄せて🔔
天主公園 (長崎県) 長崎の鐘 楽譜
2020年 撤去 復元予定無し
~2019年 6月撮影~
浦上天主堂
爆心地よりわずか500m
~2019年6月撮影~
昭和20年8月9日
長崎に原子爆弾が投下される
医学博士・永井隆は、爆心地から700mに位置する長崎医科大学の診察室で被爆し、右側頭動脈切断という重傷を負う。
アメリカ軍が空から撒いたビラにより、これが原爆だと知ったのは翌日のことで、放射線科医師である永井は、真っ青になったという。
大出血にも関わらず、頭に布を巻き付けたまま、絶えず運び込まれる患者の処置・治療にあたる。
重傷でありながら休みない救護活動の合間、ようやく3日目に許可を得て自宅を見に行く。
家は跡形もなく、台所があったあたりから、妻の骨片と、妻がいつも身につけていたロザリオが見つかる。
永井隆は、もともとは出雲大社の信徒だったが、大学入学後、パスカルの「パンセ」に出会いキリスト教にひかれていき、カトリックの信者となる。
幼い子どもたちは疎開していて無事だった。
子どもと義母の疎開先の三山(市内西浦上)に救護本部を設置して、被爆者の救護にあたる。
しかし9月10日、出血多量で昏睡状態・危篤となる。
治療に当たっていた医師班は解散し、司祭を呼んで、終油の秘蹟を授けた。
※臨終を迎えた病人に授けるカトリックの儀式
現在は「病者の塗油」と改められている
永井隆の「ルルドの奇跡」という随筆には、このように記されている。
『原爆で負傷し、頸動脈の出血が止まらなかった時、ある女性から
「本河内のルルドのお水です」と言って飲ませられた直後、昏睡状態になった。
目覚めた時、なんと出血が止まっていた。
何人もの医師が止められなかった出血が止まったのは、マリア様の奇跡としか考えられない』
📖 医師・作家である 帚木蓬生の著書
フランスの「ルルドの水」については、様々な分析・研究がされており、
ゲルマニウムを含んでいるとか、漢方薬に準ずる成分があるなどと言われている。
作家・曽野綾子氏も現地でその効果を認めているが、医学的効能、信仰との関連性はどうなのであろうか。
ルルドの水を飲んだ永井隆は、この日から目覚ましい回復を見せ、
出血が止まらなかった患部の傷はふさがり、
再び被災者の救護活動を続けていく。
白血病と闘いながら。
そして昭和26年5月、白血病による心不全のため死去。
長崎市は、5月14日 9時から浦上天主堂で市公葬を執り行う。
2万人が参列。
田川務長崎市長が、総理大臣の吉田茂等300通の弔電を
1時間半にわたって読み上げた。
正午に浦上天主堂の鐘が鳴ると、
全市の寺院、工場、船舶の汽笛が一斉に鳴り響き、
市民は1分間の黙祷を捧げた。
永井隆博士は、昭和24年「長崎の鐘」という著書に、被爆した時の状況、
救護活動、大学をはじめとする長崎の都市が完全に破壊された様子、
火傷を負いながら死んでゆく同僚や市民たちの様子を克明に描いている。
しかし、自分がルルドの水により回復した事実には触れてはいない。
永井隆がタイトルにした「長崎の鐘」とは、浦上天主堂が炎上した時、
50mの高さから落下したのにも関わらず、廃墟となった浦上天主堂の煉瓦の中から、ひびさえ入らずに掘り出された「アンゼラスの鐘」のことである。
昭和24年、永井隆の著書「長崎の鐘」をもとに、同名の曲が作られた。
作詞=サトーハチロー 作曲=古関裕而 歌=藤山一郎
そして翌年は、映画「長崎の鐘」が作られる。
歌詞は原爆のことは触れておらず、敗戦で荒んだ日本人の心に、
慰めと生きる希望を与えている。
※作詞者サトーハチローは、広島の原爆で弟を亡くしている。
曲は悲哀を感じる短調から始まり、後半は明るい長調へと変わっている。
明るく平和な未来を願って鳴り響く、長崎の鐘のように………。
永井隆博士は「マリア様の奇跡」としながらも、こう述べている。
「奇跡は信仰の褒美ではありません」
戦争で亡くなった人は数えきれない。
お国のためという信念だったかもしれないし、そうではないかもしれない。
戦死を誉れと思っていたかもしれないし、無念だったかもしれない。
勇敢だったのかもしれないし、臆病だったのかもしれない。
そこには他が安易に想像できない、個々の想いがあり、個々の形がある。
ただ、無駄な死はひとつもない、あってはならない。
余談だが、聖コルベ神父と誕生日が同じである。
20年ほど前かと思うが、キリスト教関連の書店で、
コルベ神父の生涯が書かれた絵本を買った。
それ以来、いつか長崎でコルベ神父さまに会いたいと思い続け、
2019年、それが叶うこととなった。
終戦記念日を前に、亡くなった世界中の方々のご冥福を祈ると共に
長崎原爆記念日に寄せて
永井隆博士と聖コルベ神父の平安を祈る
Shalom שָׁלוֹם
💚3年目の「ほぼ再投稿」です。
「後編・アウシュビッツで殉教した聖コルベ神父のお話」は、
↓ です。