見出し画像

詩|いつもみたいに(今津)

風が血の息吹を立て
地が忘れられた故郷の歌を思い出して
海が遭難した骨の哀愁を感じて
時間が陽光の暖かさをひさしぶりに思い出させてくれた

朝、目を覚まし
砂浜の匂いは黴の匂いに類似し

痛くないのに痛みの記憶だけはある
その足で
駆けるだけのことはとりあえずして
欠伸をしたら
涙が溢れて
欠伸は止まらず
涙は
砂と合流して
とりあえず履きならしたスリッパを探そうとした


になっても
涙はやまず
欠伸はやまず


退屈まぎれに指を数えて 時間を待った 佐藤さん の 声は 届か ず まあ いつもみたいにやってくれたらいいから 信頼してるから 信頼に応えられるかなぁ わからないけど 夕飯のこととりあえず考えよ! そうすれば楽しみが増える から 雑踏に砂浜が類似して 垢は死と類似して だから
いつものように いつもとは遠く隔たった場所で (だっていつもっていつのこと?) 電車はモグラの鳴き声みたいに鳴いて 満員電車で

わたしは

いつもみたいに いつもみたいな 未来を夢想する


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?