二階から目薬
「2階から目薬」 という ことわざ がある。
誰が考えたのだろう。
昔ながらのことわざではない。 少なくても目薬が開発・普及してからのモノであろう。
”精度が果てしなく低い” という意味であるなら、もっと遠くてもよかったのではないだろうか。
2階からなら、受け手側の努力で何とかなりそうな気がする。
こんなのはどうだろう。
母を訪ねて三千里、感動の再会、そして目薬。
かなり遠い。
もう一つ、こんなのもどうだろう。
ある男性の物語だ。 仮に細川義之という名前にしよう。
細川は十代の時に勢いで結婚。 しかし浮気,借金,DVを繰り返す。
その結果妻に愛想をつかされ離婚してしまう。
別れて初めて家族の大切さに気づいた細川は、心を入れ替え働いて働いて、とにかく誠意を示した。
だが何年経っても元嫁は許してくれない。
途方に暮れる細川であるが、どうにかして誠意を示すしかない。
更に毎日朝から晩まで働き詰めたものの、とうとう体を壊し入院してしまう。
病院のベッドの上で 元嫁との心の遠さに絶望する。
しかしそこに見舞客がやって来る。
元嫁だ。
細川は涙ながらに謝罪する。 そして「もう一度チャンスを」と懇願するのだ。
細川の誠意にうたれた元嫁はようやく心を開き、2人はもう一度やり直そうと抱き合う。
一度裂かれ修復された絆は深く、2人は明るく優しい家庭を築き続ける。 末永く幸せな人生を送り、ついに細川は寿命を迎える。
そして天に召される直前につぶやくのだ。
「 目薬。」
・・・これは遠い。
「2階から」 なんて中途半端な表現はやめるべきだ。
細川に失礼ではないか。
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