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『ハジケテマザレ』

2023/10/27
金原ひとみ,2023,講談社.

ひっっさしぶりに小説を読んだ。
いや、本はたくさん読んでるはずで、ほんとはもっと読まなあかんのだけど、量とか速さとかじゃなくて、この物語の奥には人間がいて、かれらと自分と自分の周囲の人間の接点を考えて、うれしくなったり、落ち込んだり、打ちのめされて、読了後しばらくなんにもできひんかったり、そういう読書を久しぶりにした。金曜日だからできたのかもと思う。

読書ってなにかわからんくなる。業界人として読んでることは大前提だし読んでないことは無礼にあたるけど、1日は24時間しかなくて、うち8時間は睡眠に充てたくて、8時間働いたら残り8時間。1冊の本を3時間で読んだとしてもそのあと5時間かけてあれこれ考えながらnote書いてたら1日終わっとる!
ひとより少食で非力で長時間睡眠なので、常々満身創痍で働いてるのに暇そうと思われてそうで、だれに向けてかわからんけど無性に腹立つ。自分の貧弱さに腹立つ。暇やから寝てんじゃなくて必要やから寝とんじゃい。

同じ語り手・舞台設定で4編あって、1話目と2話目がとくに良かった。明るいのに、なんか泣きそうになる。軽妙に、深いところまで切り込んでくる。語り手の陰キャ思考の地の文が良い。みんながわちゃわちゃ喋ってる描写も良い。たまにくるちょっと哲学的な長ゼリフがめちゃくちゃ良い。坂本裕二が好きな人は好きと思う。
2話目「モンキードーン」、パリピのヤクモちゃんが生き物を食べるのが怖いって語る場面、声に出して何回か読んだ。
生々しいのが無理。出産はしたくない。生理がギリギリの限界。セックスも嫌い。うだうだ悩んだり考えたり、憎しみとか執着とかに苦しんだり、生々しいのが嫌。

めちゃわかる!!!!!!!!!!

ほんとは木になりたいって言ってるヤクモちゃんがパリピを生きてるの、私が明朗快活でメンヘラの対極みたいな生き方を理想としてるのとたぶんいっしょだ。交友関係は広いけど、ごたごたとかどろどろとか本当に本当に勘弁してほしくて、生存戦略としての明るさを行使して生きてる。それはべつにキャラ作ってるとかではなくて。
ヤクモちゃんが言うには、人間の生活の中で最も木に近い、一番生きてることに違和感がない状態が、楽しいことをしてる時なんだって。ヤクモちゃんが踊るのは、私が演劇やってるのと同じだと思って、ちょっと泣きそうになった。
私は高瀬隼子さんや津村記久子さんも好き。『犬のかたちをしているもの』『おいしいごはんが食べられますように』『カソウスキの行方』これ語り手みんな生々しいもの苦手な女だわ。セックス、子ども、不倫、食事、職場のいじめ、恋愛、ぜんぶ生々しい!

***

以下、共感の嵐の部分引用。1話目にもあったけどシーンとして長いので割愛。

お腹痛い人間の窮状に言及してくれてうれしかった。

この人は生まれてこの方腹痛に襲われたことがないのではないかと思うほど共感能力の欠如したマナツさんに、私は怯む。もしかしたら、世の中の人はそこまでお腹を壊さないのだろうか。でもここまで辛いものを食べて、お腹が一切痛くならない人なんているのだろうか。お腹が痛い時人は孤独だ。己のお腹の痛みを誰かに味わわせることはできず、私たちは総じて「痛い」という非力な言葉に頼る他ない。ピリピリとかキリキリとか、ズキズキとかズドーンとか言ったところで、相手は大体「あら痛そう」としか思わないのだ。

「フェスティヴィタDEATHシ」p. 134

ウァァーって叫んだ。首取れそう。

フロアが忙しくてテンパってくると露骨に上から目線で時々舌打ちなんかも交えながら嫌味を言ってきて、でも私がマナルイさんたちと仲良くなってからは嫌味を言わなくなったりなど、相手の権力レベルに合わせて態度を変える日和見野郎で、かつデリカシーがないのだ。そんな奴だから当然本社から視察がくるとものすごくへりくだる。へひくだりすぎてもはや卑屈じゃないか? と心配になるほどだ。

「ウルトラノーマル」p. 160

たぶんやけど、激辛フェスの話読んで蒙恬タンメン買いに行った人私だけじゃないと思う。300円で買える非日常って説明に納得してしまった。

良い本読んだ。
さあ、だれにおすすめしようー?

注:引用に際して、ルビを省略した。

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