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写真と言葉に居場所を与える 美しいと思うことを残します

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最近の記事

骨まで愛して。

私は走るのが嫌いだ。 どれくらい嫌いかというと、走らなくてすむのなら墨汁を飲んでもいいくらい嫌いだ。 運動なんて、何がいいのかさっぱり解らない。 太ってるし、足だって短いし、なにより運動オンチだし。 走るたびに気持ちの悪い汗かいて、ぶーぶーふがふが鼻鳴らして、あぁみっともない。 おなかだって、ぼよんぼよん動いて、顔だってすぐ真っ赤になる。 私のお肉はきっと超霜降り。  だから私は、走るのが大嫌い。 でも、本当に嫌いなのは私の身体。 顔はいいのよ、顔は。 とっても可愛い

    • うたまろの実

      先日、ベランダにあるわりと大き目の椰子の木に赤い風船がひっかかっていた。 凋んでよれよれになった風船の紐の先には、可愛いピンクの折り紙で作った手紙が着いていた。 「かわいがってそだてててください。 あいみ」 と描かれた手紙には、見たことのない赤茶色の大きな種が付いていた。 夏がいよいよ本領発揮している今日この頃。 休みもぐでっと家にいた私は、夕立も降って、ちょうど気持ちのよい風が吹く時間に、その種を蒔いてみることにした。 先日椰子の木を植え替えた、少し小ぶりの四角い植

      • 最後の放課後

        放課後の教室。 突然の雷雨で体育会系の部活も中止。 時間はもうすぐ9時になる。 校舎にはもう、誰も居なくなった。 7月11日 金曜日 私は一人、窓際の前から2列目のこの席で、ただひたすらに遺書を書き綴っている。 今までの楽しかったこと 仲良くしてくれた人達への感謝の言葉 大事にしていた、熊のぬいぐるみを受け取ってほしい人たちの名前 (でもキモッて思われるかもしれないから、『もしよければ、貰わないで一緒に埋葬してほしい』と付け加えた。) そして、大好きな弟と、愛犬の虎丸

        • 窓から見えるものは

          窓から見える景色が、少しづつ動いている。 それに気づいたのは10日程前の事だった。 隣の家がテラスに、めちゃくちゃ早い七夕用の笹をを立てた。 私の書斎の窓からは、その笹はほんの少ししか見えないのだが、さらさらとうごめくその笹の 情緒などを感じる余裕はなく、ただ私はイライラを必死で抑える日々を迎えた。 笹がさわさわと動くたびに、私はそちらが気になって視線を送る。 自宅で仕事をしている為、その笹を見る機会は日に数百回にも及んでしまう。 それが、仕事にも差し障りはじめたのだ。

        骨まで愛して。

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        • 爪痕
          23本
        • 箱庭遊戯
          2本
        • 若さのオリモノ
          17本
        • 修羅の庭
          2本
        • 地球が新しく生まれ変わる様
          2本

        記事

          ほろ苦い水の底から

          21時。 あまりの空腹に耐えかねた細川は、資料作成にもんどりを打っている同僚の吉田に後を任すと、部屋を出た。 吉田は5分ほど前に帰った上司の新垣から、何も言わずに、表情だけでNGを出されたいたから、まだまだ時間がかるだろう、タバコでも燻らしながら、ゆっくりしてこようと考える。 エレベーターを下りたとたん、細川はブルッと身震いをした。 今朝はあんなに晴れていて、自転車通勤で軽く汗をかいたはずだったのに、今はとても寒く風も強かった。 上着を取りに戻ろうかと思ったが、振り返る

          ほろ苦い水の底から

          ふと引き出しを開けると

           ふと引き出しを開けると 小さな人が住んでいた。 その人を、例えるなら、 少し伸ばしすぎた足の親指の爪を、綺麗にバチンと切った時の、 その爪の大きさくらいの人だ。 変なたとえかもしれないが、 ちょっと猫背だから、爪と表現したかった。 なんだかうなだれて、パンツやら靴下やらの隙間を、とぼとぼと歩いていた。 私は、驚かさないように小さな声で 「何かあったんですか?」 と聞いてみた。 すると、小さな人は蚊の鳴くような声で(聞いたことはないが) コンタクトを落とした。

          ふと引き出しを開けると

          女神山

          むかしむかし 神様の住む小さなお山のお話 山の中腹に、神様を守る精霊が住む所があった。 そしてそこである朝、2つの若芽が生まれた。 若芽たちはそっくりで、同じ方向を向いて生まれた。 だから、若芽たちがお互いを確認できるのは唯一、お日様が自分たちの後ろに照ったときだけだった。 お日様が自分たちの後ろに照り、目の前に二つのそっくりな影が出来るときだけが、お互いの存在を確認できる時間だった。 目の前に2つのそっくりな影があると、なんだか若芽たちは、ふわっとなった。 だ

          ピンシュニルとメニカ

          ピンシュニルとメニカは、同じ色の同じ形の卵から生まれた。 二人は色も形も似ているのに、鳴き声は全然違っていたし、翼の形もちがう、好きな食べ物も違った。 ピンシュニルは甘くて柔らかいものが大好きだったし、メニカはショッパくてトロンとしたものを好んで食べた。 二人がたまに喧嘩をすると、大地が悲鳴をあげるほどの地鳴りがして、空はがむしゃらに泣き、辺りには黒くて冷たい不気味な靄が立ち込めて、なかなか晴れ上がらなかった。 回りの小さな生き物たちは、メニカの天を裂くような鳴き声が轟

          ピンシュニルとメニカ

          とある女子高生の悩み

          ちょーだるいんだけど。まじかんべん。 なんでケータイ使えないの? 今時ありえないんですけど。 まじ最悪、持ってんのもだめなわけ? 帰りとか強姦にあったらまじ責任取れんのかっつーの。 カッキーにメールするって言ってたのに出来ないし、アメブロの更新も出来ないし、 モバゲーでオセロすることも出来ないわけ?しんじらんない、あーまじ最悪。 なんであんな家にうまれて、こんな学校にしちゃったんだろ。 まぁ。この学校きたのだって、勉強しないで推薦で入れる中で セーラー服だっつーだけで決め

          とある女子高生の悩み

          コロコロクレジットカード

          一切無料だっていうから、カードを作った。 なかなかカッコいいカードだったから、なんだかうれしかった。 しかも彼氏と色違いのお揃いを作った。 ひろみは、社会人になって初めて付き合ったその彼に教えられて、初めてローンというもので買い物をした。 3万円の、欲しかったコートが、毎月6000円払うだけで買えた。 嬉しかった。 みんなどうして、いつも、デパートで服が買えるのか不思議だったひろみは、その日を最後に ジーンズメイトで服を買うのをやめた。 ある日、彼氏にカードからお金が直接

          コロコロクレジットカード

          一度だけ魔法が使えたら

          「一度だけ魔法が使えたら、なんておねがいする?」 ふと昔の風景がよみがえった。 安い居酒屋で安い酒を飲む仲間たちとの風景だ。 「一個だけ願いがかなうとしたら、どうする?」 「ハワイ旅行にいく。」 「はぁ?なにそれ、お金もらったほうがいいじゃん」 「え?非現実でもいいわけ?」 「突然お金増えたら捕まるやん。」 「なるほどなぁ。」 「どこまでが一回なんだろうなぁ。」 「はぁ~?」 「たとえばさ、典型的な例題といえば、ぎゃるのぱんてぃをくれ~!だろ。」 「ふむ」 「あれは ぱん

          一度だけ魔法が使えたら

          豆電球

          緑の大陸ガィアスでは、欲しいものはなんでも畑で取れる。 豆電球もその一つだ。 僕は豆電球が大好きだ。 あのオレンジの儚げな、まるで今にも落ちそうで プルプルと震えている線香花火にも似た 小さな光が僕は好きだ。 その日、僕は夕刊とトイレットペーパー。 それと、夜飯用のカレーセットを取ろうと、ハサミとクワを持って畑に出かけた。 都会には畑がないから、みんなゴールディと言われる、所謂希少価値のある鉱物でやり取りをしている。 が、幸か不幸か僕の住まいは田舎。 だから、遅くに起

          たいようのむすこ

          太陽はいつも独りぼっち とても寂しいと感じていました 寂しさを堪えて 今日も空の階段を登っていました 決して休んではいけないお仕事をしているからです ある晴れた日曜日、太陽は1人の男の子を見つけました 男の子は太陽が空の階段を登りはじめた時から 太陽の事をずっと見ています にこにこと、素敵な笑顔で太陽の姿を追っています 太陽は、なんだかくすぐったかったけれども その何倍も幸せでした 今までどんなにお仕事をがんばっても こんなに見つめてくれた人は1人もいなかったからです

          たいようのむすこ

          キップ少年と雨と、近藤さん

          お昼ごはんをさっさと食べ終えた少年キップは、シトシトと降り続く雨を窓越しに睨む。 病院や保健室にあるような灰色の丸椅子の上にお腹で座りながら 絶妙なバランス感覚でバタバタと足をバタつかせていた。  「ひまだ。」 キップは、足で勢いをつけて椅子ごと、ぐるぐると廻りながら呟いた。  「ひまでござる。」  「ひまらや山脈」  「ゴムゴムの ひまだー。」 どうやら、だんだん頭に血が上ってきたようで、ブフーと鼻を鳴らしながらカオを赤くしている。  「あ”-。ひまだ。あめだ。ひ

          キップ少年と雨と、近藤さん

          神様の住むお山

          昔々、神様の住む小さなお山での出来事。 山の中腹に、神様を守る精霊が住む所があった。 そして、そこである時、二つの若芽が生まれた。 若芽達はそっくりで、おんなじ方向を向いて生まれた。 だから、若芽たちがお互いを確認できるのは、唯一、お日様が自分達の後ろに照ったときだった。 目の前に二つのそっくりな影が出来るときだけが、お互いの存在を確認できる時間だった。 だから夜になると、一人なんじゃないかと不安になって、全部の影が一つになるたびに、若芽たちは いつも、怒ったり泣いたり、諦

          神様の住むお山

          汚れ?違う穴だ。 壁に真っ黒な穴が開いている。

          汚れ?違う穴だ。 壁に真っ黒な穴が開いている。 京都駅の駅ビルの11階。 東京人でごった返すお好み焼き屋。 僕はそこで、一人で途方にくれていた。 始め、この壁の小さな点は、昔、客の誰かが飛ばしてつけたソースなんだろうとおもった。 しかし、彼女となにげない会話をしているのだが、どうも気になってしまって、幾度もその ソースのシミに見とれてしまう。 ソースのシミ以外、なにもないのに。 否、何もないはずなのに。 「何みてるの?このシミ?」微妙な顔をして割る彼女を曖昧にいな

          汚れ?違う穴だ。 壁に真っ黒な穴が開いている。