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『素晴らしき歌詞の世界note』#1 初恋 村下孝蔵(昭和58年)浅い夢だから 胸をはなれない

GUITAR & NOISEのTwitterで『素晴らしき歌詞の世界』と題して、自分が大好きな歌詞のいちばん好きな部分を切り取ってつぶやいてます。今回のnoteはその拡大版として、5月に聴きたくなる大好きな曲の大好きな歌詞について書きました。

『初恋』 村下孝蔵(昭和58年)

五月雨は 緑色悲しくさせたよ 一人の午後は恋をして 淋しくて届かぬ想いを 暖めていた好きだよと言えずに初恋はふりこ細工の心放課後の校庭を 走る君がいた遠くで僕は いつでも 君を探してた浅い夢だから 胸をはなれない

歌詞を読むだけで、あの素晴らしいメロディーとこの曲を初めて聴いた記憶が鮮やかによみがえる。あれは平成元年の5月のころ、偶然ラジオから流れた「村下孝蔵スタジオライブ」。僕は自宅でひとり聴いていた。初めて聴いた村下さんの歌の世界に完全に引き込まれた。翌日、村下さんのCDを購入した時は最高の宝物を手にした気持ちだった。

「五月雨は緑色」「ふりこ細工の心」ときて、「浅い夢だから 胸をはなれない」で結ぶ。「好きだよと言えずに初恋は」のあとに入るメロディー(Gのコード)が、まるで歌詞の余韻みたいに、いや、歌詞以上に何度聴いても心に響く。僕の中で「初恋」のメロディーの肝はこの部分。僕自身の「初恋」の記憶を思い出させてくれるから。村下孝蔵さんはどんな気持ちで、この歌詞を書いたのだろう。どんな時に、どんな場所でこの曲を作ったのだろう。歌詞が先かな、曲が先かな…とひとりで勝手に考えてみたりする。

そして2番の歌詞

夕映えは あんず色帰り道一人 口笛吹いて名前さえ 呼べなくてとらわれた心 見つめていたよ好きだよと言えずに初恋はふりこ細工の心風に舞った花びらが 水面を乱すように愛という字書いてみてはふるえてた あの頃浅い夢だから 胸をはなれない

「街をあんず色に染める夕映え」を眺めながら、同じクラスの好きな子のことを想いながら、自転車こいで家路につく少年の姿をイメージする。それは、かつての自分の姿なのかもしれない。

「風に舞った花びらが水面を乱すように」このフレーズには「春」を感じる。新しい生活が始まる「春」、出会いの「春」、若さ溢れる青い「春」。初恋のタイミングは「春」が多いかも。

僕の、君への想いをたとえるなら満開の桜。そんなこと知るよしもない君の姿、君の声、君の言葉のひとつひとつが、僕の中に満開の桜を咲かせ続けたり、時には桜を散らせてしまう。散った桜は、僕の「とらわれた心」の水面に落ちて小さな波紋ができる。それはたぶん、切なさや哀しさかな。

村下孝蔵さんの歌はいつも情景がある。僕はそれを感じ、村下さんの歌を聴いていた。村下さんの歌は優しく、暖かく、厳しく、淋しく、切なく、哀しく、清々しい。村下さんが天国に旅立たれてから、しばらく村下さんの歌を聴かなかった(聴けなかった)。いま再び歌を聴いている。僕は、村下孝蔵さんの歌に恋をしているんだと気づいた。それは初恋だったから、いまも、胸をはなれない。

最後まで読んでいただきありがとうございました。(これはあくまで個人的な解釈です)

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