PRS McCarty 594ってぶっちゃけどうなの?→PRS流の良いレスポールの見本
【前置き】
楽器屋さんに行けばギブソン、フェンダーと大御所メーカーに並んでよく置いてあり、触るのも躊躇ってしまうようなエロくて綺麗なPRS。
バンドに熱中し始めた高校生当時、ギターのことがよくわからなくても一目で高いだろうと解らせる高級感。
試奏して驚くネックの持ち心地の良さ、音の応答の正確さは、ヘタクソな自分の身に余ると感じて敬遠してたきらいがありました。
それから十余年。
墓場にまで持っていくような良いギターを買おうと決心してローンを組んで買ったのは自分でも驚きのPRSでした!
そろそろ購入して1年経つので色々レビューしたいと思います♪
購入検討されている方に向けてボリュームたっぷり書き連ねてる為長文になるので先に謝罪しておきます(笑)
まずは綺麗な杢目を堪能しちゃいましょう♪
【McCarty 594ってどんなギター?】
平たく言えば、ヴィンテージギター大好きなPRS社長のポールさんが、お気に入りの58年製ギブソンレスポールを雛形に最初からヴィンテージの音が出るギターを作ろうと発起したPRS久々の新作ギターで、材構成もレスポールに則りマホガニーネック、メイプルトップのマホボディです。
他でも多く語られてますが、開発にあたってはヴィンテージに造詣の深いと評判のジョンメイヤーにも協力を願ったようで、並々ならぬこだわりと努力があったようです。
そのラインナップの中で今回僕が買ったのは、SC594という更にレスポールに寄せた仕様のものです。
McCarty自体は1994年からマイナーアップデートを繰り返しながらずっと生き残っていた製品ですが、わざわざ屋台骨のcoreシリーズで別ラインを用意するほどの大々的な仕様変更はPRS史においても稀にみることでしょう。
そんな本気のギターのこだわりの仕様を次から見ていきましょう♪
【特徴的な仕様】
その①:スケール長とネックの握り
まず名前にも載っている594という部分はインチ表記でのネックの長さのことです。曰く自身のヴィンテージレスポールの計測中に発見したもので、メーカー表記の24.75インチより実際は僅かに短い24.594インチだったとのことでそれを模したことを示すものです。
ミリ単位で約3.8mmの違いですが、余程良い恩恵があると判断したのでしょう。
自分は本物のビンテージは弾いた事ないのでサウンドへの影響はわからないですが、ギブソンのレスポールに1046ゲージの弦を張った時より気持ち柔らかい手ごたえで丁度いいと感じました。
更にネックのシェイプはパターンヴィンテージと名付けられたシリーズ史上最も肉厚かつ幅広なネックになっています。
ただ、工夫はしてあってローフレット側はV字型でハイフレットに行くにつれてU字型になっていくよう削ってあるそうです。
握り心地については、いつものPRSみたいな感動的に弾きやすい滑らかな印象をお持ちなら無骨でぶっきらぼうに感じると思います。
実際握ってみて上記のシェイプの工夫は手触りではよくわからないと思います。
ただ、不思議と手の収まりが良いというかずっと握っていたい気持ち良さがあるのは流石PRSというところです。
なお、McCartyに限らずお得意のバードインレイにも仕様変更があった模様で、アバロン貝の一枚板を削り出して丁寧にはめ込んであります。
これ、近くでみると精度の高さに「ほえぇ~」となります。
その②:ピックアップとコントロール配線
過去のPRSを知る人なら、出音は素直だけどドスの効いたラウドロックもキメられるハイパワーなピックアップを積んでる印象があると思いますが、今回のPUは新開発の58/15LTというものです。
つまり、先に開発したPAF系ピックアップの58/15のコイル巻き数を減らした(LTの由来)もので、出音は生音で弾いた時の音のニュアンスをそのまま出力しているようなとても素直なもの。
良いハムバッカーでよく言われるとおり、甘いようでトレブル成分はシッカリ出ます。
特筆すべきはその応答の速さと忠実さです。
ピックの触れた部分の音を余さず忠実に再現してるような印象で、ただピッキングするだけでも表情豊かでとっても楽しいです♪
また、シングルコイル並みに弾いたときの応答が早いです。リズムプレイをする時なんかは粗があればそのまま出るので手強いです。
こう書けばとても優秀ですが一つだけ不満があるとすれば、メサのレクチみたいなゴリゴリのモダンな歪みを鳴らしたいときだけは、アッサリな味付け過ぎて悪くないんだけどコレジャナイ感が出ます。
そういう場合ならアイバニーズあたりを使うほうが満足感は高いと思います。
また、コントロール部分にはPRSらしいひと工夫で、フロント、リア共にコイルタップが出来るようになっています。
タップ音も悪くないです。タップ時は切った側のボビンの音を僅かに混ぜているらしく、特有の細くてチャリチャリしたオマケ感は皆無で実用に耐えるだけの芯の太いシッカリしたシングルサウンドが出ます。
自分はこれをRECでダブリング用のトラックを録る際に使ってますが、いい具合に音の差別感を演出できてナイスです♪
その③:ペグとその他ハードウェアについて
PRS本国サイトでのポールさんの言葉を直訳すると、「弦と本体が接する部分は全て神である」とのことで振動の伝達部分は強いコダワリを持ってる様子です。
まず、ペグについてはPRSと言えばのオープンギヤのロックペグですが、写真で見ると分かる通りペグとギヤの繋ぎ目に謎の六角ネジ穴がポツンと一つずつ空いてます。
これはギヤとペグ間の滑り具合を調整する為のネジだそうで、ギヤの遊びを無くすことで弦の振動を本体に余さず伝える為の工夫だそうです。ちなみにこのネジは素人が触るとぶっ壊すから絶対触るなとのことです。
(↓ヒマワリかわいい♪)
また、金色の部分はオシャレではなく弦と触れる部分と本体への接点は全てメッキを施さない真鍮を使用してるとのこと。曰く、真鍮の振動伝達性は金属の中で最も優れているらしく、そういわれてみればトランペットとかサックスも全部金色だし、あれもそういう事なのかもしれないですね。
また、今回最も大きい変更はレスポール同様の2ピースに分けたブリッジ部分でしょう。
ポールさん自身、今までオリジナルギターの開発はレスポールスペシャルを元にしていたそうで、McCartyシリーズでは1ピースブリッジとダブルカッタウェイ仕様にその名残があるのですが、
2ピースにしたことは、完全にレスポールに焦点を絞ってることの証明ともいえるのではないでしょうか?
もちろん、これもPRS流に独自の仕様を色々と備えています。
まず、弦の乗る駒の部分がレスポールのような点で支えるものじゃなく滑らかなアーチを描いた面で支えるようになっています。これは恐らくテイルピースとブリッジの角度の差を緩やかにすることで、弦の滑りを良くしてチューニングの狂いを抑える為の一つの工夫ではないかと思います。
ついでに駒が尖ってないので右手の置き心地が滑らかで気持ちいいです。
また、テイルピースは古いレスポールのように弦を外した瞬間ポロっと落ちるような仕様ではなく外れないよう工夫してあります。
アンカー部分は弦を外すとテイルピースとの組付けも緩く簡単にクルクル回るのですが、たぶんそうすることで音質的な効果を狙ってかレスポールの仕様に手口を変えて準拠しようとしたのでしょう。
地味な部分ですが、オクターブチューニングの調整ネジがテイルピース側に向けてあるのも親切設計です。
ヴォリュームとトーンの配置はレスポールと同様ですが、ノブにダイヤモンドカットを施すことで引っかかりを良くしてあります。
また、回すトルクも軽めにしてあるのと、微妙に配置を変えて右手で2つのボリュームをまとめて操作できるようになっているので、やろうと思えばジョン・サイクスみたいにライブ中に弄りまくることも可能です。
また、ヴォリュームには通常取り付けるらしいハイパスコンデンサーを敢えて外し、ノイズ処理の為に通常キャビティ内に導電塗料を塗るそうですがこれも敢えて塗らずにいるそうです。
そうすることでヴィンテージ同様、絞った際に温かみのある低音が顔を覗かせてくるとのこと。
ヴォリュームとトーンの中の軸を金、銀で色分けしてる当たりがナイスオシャレ♪
しかもこのノブ、綺麗に拭くとキラキラ輝いて綺麗なんです♪ (拭けよ!)
あとはこれぞPRSなローズ板のヘッド。
工場見学の動画で見たのですがブランド名の部分は筆記ではなく、筆記体を模ったプラスチックのパーツで、これを削ってヘッドに埋め込んでるみたいなんです。なんという惜しみない手間。
このMcCarty 594は他のPRS製品とは違って伝統的な牛骨ナットを使用しています。また比較した訳ではないのでただの予想ですが、弦がペグまで直線を保っているように見えて実は微妙にナットからペグまで八の字に広がるようになってるんです。
たぶん、これはチューニングに影響しないギリギリの範囲でナットに負荷を掛けてレスポールの仕様に準拠しようとしたのではないでしょうか?
音質的な部分に何かコダワリがあってこうしている気がしますが真実はわかりません。
【サウンドレビューと総評】
タイトルに書いた通り、このギターに持った印象はPRS流の良いレスポールというものでした。
クリーンサウンドで弾くと如実に感じるのですが、甘くとろけるような中低音にレスポンスが早くカリッとした高音のニュアンスは、自分が弾いてることも忘れるくらい気持ちいい音です。
歪ませていくと、叫ぶようなニュアンスが乗って来て、往年のハードロックで聴くような良いレスポールの音がドンピシャで出てくる印象です。
もともとレスポール自体が余計な成分を削って音楽的に美味しい部分に焦点を絞った音を出す楽器ではありますが、
PRSの手に掛かると更に磨きが掛かって感動的にピッチが良く、CD音源そのものを聴いてるかのような自然でかつ制御された出音になります。
レコーディング後のトラック処理は基本的なイコライジング処理以上に何か特別なことをする必要はないくらいです。
使うのに最適なジャンルも守備範囲が広いでしょう。ロック、メタル、ファンク、ブルース何でもOKですが、90s以降の重いダウンチューニングを施したメタルに関しては悪くはないがコレジャナイ感が出ます。
最適なアンプは、基本レクチ、エングル等悪い相性のものはないですが、やっぱりマーシャル、フリードマンと繋ぐと沢山聴いてきた往年のロックそのままの音が出る喜びがあって最高です♪
自分はレコーディングにline6のHELIXを使用してますが、オススメしたい使い方は、フリードマンのBE100をHBEモードだけONにして、キャビはブラックバック30で57マイク1本で録る方法。
プリセットのままのイコライザで十分なので、ボリュームを絞って歪みを落としていくと、10でalice in chainsのジェリーカントレル風、7くらい落とすとAC/DC、エアロスミス風と色んな時代のロックの音が楽しめてナイスです♪
もし、自前のアンプを持っていないなら、ライブハウスでもスタジオでもT-75を積んだキャビのマーシャルJCM900か800なら大概置いてあるハズですから、ケンタウロス系かTS系の歪みをブースターに使って鳴らせば誰が聴いても良い音が出るでしょうから、McCarty 594とブースターの2つだけ持って長年の音作りの旅を終わらせるのも良いでしょう。
本体の仕立てについても素晴らしいです。重量は3.6kgと軽く、豪華な杢目と塗装はいつまでも眺めていたいほど。フレットエッジやバインディング、ナットの仕上げも全くの粗がなく怖いほど完璧です。
レスポールのモディファイ品としてだけでなく、良いギターが欲しいと思い立ったとき、PRSは現行品で最高峰と言える素晴らしい楽器を提供してくれたと自分は感じました。
そのくらい大満足のギターです♪
もしお近くにMcCarty 594があったなら是非、試奏してみて下さい。45万円出しても良いと思えるだけの価値を感じられるかもしれませんよ♪
【補足】
同社でMcCarty 594とMcCartySC 594のラインナップがありますが、微妙に似て非なる作りをしてます。
SC594はシングルカットである以外にMcCarty 594よりボディのマホガニー部分が5mmほど厚く、セットネック部分もシングルカットに合わせた構造なので、よりレスポールらしい音を狙って作られているようです。
なので、レスポールほどクドイ音は要らないという場合はダブルカットのMcCarty 594を選ぶと良いでしょう。
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