VERBE(動詞的教養教育)は「静」の中で創造性を発揮する

今年はオンライン授業と子育てしかしなかったので、まったくもって「静」の年だった。家でYouTubeを取り、合間に乳児の世話をし、長男の送り迎えをして、保護者会の仕事をする……なんとネタに事欠く日々。

とはいえオンライン授業をYouTube主体としたことは、それなりに意味があった。当初は学生の機材の状況やパケットの問題を考慮し、学生にとってもっともハードルの低いYouTubeを選択した。しかしこのプラットフォームを使いこなすことで、いろいろと幅が広がっていった。Explain Eduを使用し、スライドとPDFを駆使して授業動画を作成するスタイルは、「説明動画をサクッと作成する」という特技につながっていく。またZOOMとYouTubeの接続により、いろいろなトークセッションをライブ配信することができた。

この芸によって、今年の後半戦は学生を動員したトークイベントや、他の地域に向けたライブなどが可能となり、オンライン授業の傍らで少しながら活動の幅を拡げることができた。そう考えるとオンライン主体の中で新しいパフォーマンスの手法を模索し、ある程度までたどり着いた一年と言えるかもしれない。

さて、そんな地味な作業に費やした一年だが、いよいよ来年は近大での日本国際文化学会の全国大会を運営する。オンラインという手段を手に入れたので、現地開催が不可能であってもオンライン開催すればいいだけだ。そしてCOVID-19はこれからの国際関係を考える上で重要なヒントをいくつも落としていってくれた。分断・繋がりといった抽象的なテーマをはじめ、ジャーナリズムの印象操作、和製リベラルによる虚偽の生産、権力を忌避しながら管理を求める矛盾……これらを「個別主義の壁、普遍主義の壁」というテーマに統合し、人間の精神を議論の対象としながら、この一年に発生した様々な問題を相手に立ち回る。

目立たずとも、数を稼げなくても、僕は地味にいろいろ進めている。分断と他罰への衝動が吹き荒れ、様々な対立が目立つ中、オンラインの片隅で目立たずにいることにはそれなりに意味がある。精神が活動するところには「動詞」があり、それが様々なものを再活性化し、創造を繰り返す。

VERBE(動詞的教養教育)の提唱はまだ終わらない。むしろ「静」の中でこそVERBEは始まる。

ところで来年は対面授業になるのかね?

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