自分のカルチャーに誰を入国させるか

フランスに限らず、およそ海外文化を熱心に学んだ人間は、日常生活に文化が一つプラスされる。しこう(思考・嗜好・志向)が特有になるため、食事、店の選び方、手に取る本などが少し変わってくる。

朝からフランス語に触れ、プルーストのことを考える生活はそれなりに河内では特殊だ。

文化は形が存在しない。文化にいかなる「動詞」を繋げるかという問題は、動詞の担い手である「自分」を軸としていかなる文化を創造するかという問題に通じる。様々な文化の「あいだ」を生き、自分なりに解釈した文化を引き連れて歩いている姿が「その人らしさ」というやつだ。

自分の特殊性は、自分が引き連れる文化によって形成される。自分の「カルチャー」という王国の主は、しかし一人で社会を生きられないため、様々な「カルチャー」と共存していく。カルチャーが肌に合わない人は、おそらくあなたを「変わった人」と呼ぶ。僕のカルチャーも相当変わっているようだが、こんな人生でも長く続けていると入国希望者がいないわけではない。

フランスをして「オシャレ」というのは、距離を埋めようとせず、イメージでよく知らない国を語ろうとしているに過ぎない。「オシャレ」という言葉であなたがコーティングしてしまったものの実体は何なのか。それは本当に交流不可能な高嶺の存在なのか。そこで、思考停止のクリシェを捨て、近づいてみる。つまり、日常に行き詰まったときに旅をする感覚で、他人のカルチャーに入国してみる。そこで出会う新たな文化が、自分に動詞として加わることが、行き詰まりの打破に繋がっていく。

まあ近づきたくない人もいるけどよー。

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