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◆3月◆ ハニートラップにご用心

 3月に入ってから妙に忙しくて、なかなか朝イチからパチスロを打つことができない。いや、実を言うと忙しい理由ははっきりしている。月末に発売される予定の拙著『枠上人生~パチスロ攻略稼業帳~』を企画・編集した岩佐副編集長が、単行本に収録する素材が少々足りないからと山のように書き下ろしコラムのページを作ってくれたお陰で、ほとんどそちらにかかりっきりになっているのだ。

 いきおい、パチスロを打つのは原稿書きに行き詰まった際の気分転換ということになり、夕方になって出かけては1~2時間くらい打って帰るという分の悪い勝負を繰り返してきた。はっきり言ってこれは、当企画の「パチスロで年間百万円勝って生活費の足しにする」という目標をぶち壊す行動に他ならないわけだが、この勝利を放棄するに等しいような立ち回りで一週間が経過して、総合収支を計算してみたらあら意外。何とまぁ、5万円チョイのプラスになってるじゃないか。

 どうやら、どうせ短時間だからと5号機ばかりで勝負していたのがこの結果を呼び込んだようだ。5号機は完全確率方式であるがゆえ、基本的に打ち始めのゲーム数やヤメ時を気にする必要が全くなく、ある程度の出玉を持ってヤメた台のケツを狙えばかなりの頻度で高設定にありつける。これがもしもストック機であれば、設定が高いとわかった時点で絶対に空席にはならないだろうが、5号機は穏やかな出玉推移が信条ということもあって、疲れて途中でヤメてしまう客も多いのである。

 てゆーか、これまで本気で打つことがなかったけど、5号機って結構イケるじゃん。これなら早々と今月のノルマを達成か…と考えた時点から今回の日記は始まります。どうぞよろしく!

【3月8日(水) 晴れ】

 徹夜明けでウトウトしていたら、リビングから娘の歌声が聞こえる。どこかで聞いたような曲だと思ったが、どうやら人の名前を叫んでいるようだ。

「いわーさ! いわーさ!」

 オイオイ、なんでウチの娘はガイド副編集長の名を連呼しているんだよ?

 すると、妻が笑いながらこう言う。

「違うのよ、岩佐さんのことじゃなくてテレビなの。さっき劇場版・北斗の拳の予告編CMが流れてたんだけど、どうやらBGMの〝愛をとりもどせ〟が妙に気に入っちゃったみたいで…」

 なるほど、例の「ユーはショック」のフレーズをちゃんと歌えなくて「いわーさ!」になったというわけね。それにしても、朝から娘にそんな歌を聞かされるとは何かのお告げだろうか?

 物事にはただの偶然のように見えてその実、大きな意味を持つことが少なくはない。例えば話がかなり飛躍することを承知の上で言うと、鎌倉幕府を倒していわゆる「建武中興」を果たした後醍醐天皇には、楠の木の下で雨宿りする夢を見て「楠木」と名の付く武将が自らを助けてくれると確信したという伝説があるし(楠木正成を味方につけるための方便とも言われる)、戦国時代の三英傑と謳われる信長や秀吉・家康にしても、その手の逸話には事欠かない。幸いにして枠上人生の原稿書きも一段落したことだし、今日は久しぶりに朝イチから『パチスロ北斗の拳』を打ってみましょうか。

 そんなわけで、娘を保育園に送り出した後はN店に直行した。設定上げ狙いで選んだ北斗のカド台はそれなりにチェリーとスイカの落ちが良く、バトルボーナスもそれなりに引き当てて、あれはやはり天のお告げだったのだと確信したところで大ハマリ。そして、そろそろ天井が見えてきた頃に、ケータイにメールの着信が入った。誰だろうと思って確認するとガルちゃんだ。

《今度の土曜日に封切られる「真救世主伝説北斗の拳・ラオウ伝」のチケットが余ってるんですけど、もしよろしければアニキもご一緒しませんか?》

 えーと、つまり天からのお告げはコチラの方だったってワケね。個人的に通算4度目となる北斗の天井BBを消化しながら「是非ご一緒させて下さい!」との返信メールを打ち、天井で引き当てた赤7・白オーラが単発で終わった瞬間に、今日の勝負も終わったことを悟った。

 喰い付きが早く持ちコインでハマったこともあり、さほど酷い負けにはならなかったけれど、なかなか後醍醐天皇のようにはいかないものである。

本日の収支
マイナス2万円

【3月23日(木) 曇り】

 北斗の拳の劇場版は予想していた以上に面白かった。ラオウ視点からのアナザーストーリーと聞いていたので、もしかして原作のイメージを壊すような変な脚色がなされているんじゃないかと心配していたが、イメージを壊すどころか原作で描ききれなかった部分を補足するような内容で、なおかつ作画のクオリティーも非常に高く、自分にとっては大満足の映画だった。一緒に映画を観たガルちゃん&そのお友達やクズ田中君も感じることは同じだったようで、皆で行った焼き肉屋でも映画の話で大盛り上がり。いやはや、久しぶりに楽しい一日を過ごした。

 そして、これで再びパチスロも北斗の拳にのめり込む…ようなことはさすがになく、翌日からは例によって再び5号機でカタい勝負を続けた。その甲斐あってか、3月の半ばを過ぎた頃には月間収支がプラス10万円を突破。後は少しでも勝ちを上乗せして、余裕を持って翌月につなげるだけである。

 ちなみに、今月はホールで目にした全ての5号機を打ったが、個人的に気に入ったのは信長の野望とクラッシュ・バンディクー。特に後者は通常時のDDT打法の効果もさることながら、他の5号機と違って全ての小役を取りこぼさずにプレイ出来るので、しばらくはコイツで凌ごうかと思ったほどだった。

 しかし、月末に来てどうしても打ちたいストック機が登場してしまった。その名は『俺の空』。ご存知の読者さんも多いだろうが、この「俺の空」は漫画家の本宮ひろ志先生が昭和50年代に週刊プレイボーイ誌上で大ヒットさせた青年漫画で、魅力的な女性が次々と登場しては主人公と一夜を共にする「そんなわけねぇだろ!」ってくらいの破天荒なストーリーに、当時の青少年は随分と刺激されたものだった。そんな懐かしの漫画がパチスロに姿を変えて登場したとなると、一度は打ってみたくなるのも人情というものである。

 そんなわけで、久々に朝からパチスロを打てる今日は俺の空を攻めてみようと思う。向かった先は例のN店だ。

 朝イチ、お約束の設定上げ狙いで前日に最もボーナス回数の少ない台で打ち始めると、投資10Kでチャンス目からバケを放出。これを契機に連チャンモードに移行したらしく速攻でビッグを放出するも、次は50Gを過ぎた付近で俺タイムに突入した。俺タイムは連チャンモード中に突入抽選を行わないので、早い話がループ1発で転落したということか。でも、ここで引き戻せば再び連チャンモード移行のチャンスが…って、全くリプレイが揃わないのはどうしたことだろう。

 俺タイム中のリプレイ確率は約2・6分の1にアップしているのに、15G間で揃ったリプレイはわずかに2回。これじゃあ通常確率で引いてるのと変わらないじゃないか。いや、それ以前にいくら何でもヒキが弱すぎだろう!

 これで一気に意気消沈したのだが、その直後に何とチャンス目を介さずにバケが放出された。コレってつまり、俺タイム失敗後のモード移行抽選で連チャンモードに上がったのか? 状況証拠ではそれ以外に考えられないんですけど…。聞くところによると、設定5以下では俺タイム失敗後に連チャンモードに移行することが滅多になく、一度でも移行したような場合には設定6の可能性がグンと高まるらしい。ならば迷うことはない、閉店までブン回して最高設定の恩恵を受けるだけだ!

 しかし、よほど自分はこの機種と相性が悪いのか、そこから先も俺タイム中に肝心のリプレイを引けずことごとく失敗続き。たまさかに引くチャンス目契機のボーナス&連チャンモードもバケばかりで、気がつけば俺タイムの成功率は5─1、BR比率は2対9という悲惨さである。そして我に返ると天井を目指しており、天井到達までの6回の俺タイムを全てスルーした挙げ句に出てきたのはお約束のバケ。これでポッキリと音を立てて心が折れた。

 考えてみれば、自分はこれと似たようなゲーム性を持つ巨人の星Ⅲを大の苦手にしてたっけ。もちろん、巨人Ⅲと比べるならばいろんな意味で遥かに液晶演出は面白いけど、はっきり言って自分の手には負えないみたいです。

 暗い顔で家に帰ると、あまりに早い帰宅に驚いた妻が掃除の手を止めた。

「そんな淋しそうな顔をして帰ってきたところを見ると、今日はあんまり勝てなかったみたいね。もしかして俺の空で勝ちに行ったつもりが、俺の財布を空にされていたりして…」

 今日の展開をズバリと言い当てたことに気づかないこの女性は、カラカラと笑って再び部屋の掃除を始めたのである。

本日の収支
マイナス7万円

3月のトータル収支
プラス7千円

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