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◆平成17年12月◆ アイデンティティー

 人に話すと鼻先で笑われてしまいそうだけれど、自分にはパチスロを打つ上で譲れない一つのこだわりがある。

 思い起こせば自分がパチスロを覚えたのは、大学生になって親元を離れたばかりの昭和57年。この当時は現在とは違ってパチスロ情報誌もなければホールにプレイヤーズマニュアル、すなわち遊び方を解説した小冊子すら用意されておらず、だからこそ年間トータルで負け越したのも当然の成り行きだったのだが、いわゆる「授業料」を払ってパチスロで勝つための立ち回りを少しは理解したその翌年からは、年間収支で負け知らず。昭和58年から始まった連勝記録は以後も途切れることなく継続し、気がつけば平成16年まで22年間連続勝ち越しという、輝かしいのかどうかわからない中途半端な記録を引きずることになっていた。

 もちろん、数年前まではその記録を特別に意識することなどはなかった。何故なら、コンドル&タコスロに代表される技術介入機時代にはキッチリと目押しをしているだけで勝てたし、大量獲得機や爆裂AT機がシーンの主流となった後の時代でも、運悪く低設定を掴んでしまった時の負け額を高設定を掴んだ時の勝ち額が遥かに上回ることで相殺してくれた。早い話が、目押しが正確なら年間トータルでマイナスを叩くことは考えられなかったのである。

 しかし、ストック機がパチスロの主流になるのと時を同じくして自分の年間収支は大幅にダウン。とりわけ、ここ2年間は結果的にギリでプラスになったに過ぎず、内容的には負け戦に等しい勝利と言われても反論できないのだ。こうなると、これまで続けてきた連勝記録が逆に重く肩にのし掛かり、いつしかガイドスタッフであり続けるための存在証明=アイデンティティーに姿を変えてしまったから困りもの。自分で自分に足かせをはめるとは馬鹿にも程があるが、もう後戻りはできない。

 年内のガイドの原稿が全て終わったのが25日の深夜1時過ぎ。そして、この時点での平成17年の年間収支がマイナス25万3千円。つまり、あと一週間ほどでトータル収支をプラスに転じさせなければ、自分はアイデンティティーを失ってしまうのである。

【12月25日(日)晴れ】

 除夜の鐘が鳴り響き平成17年の終わりを告げるまで残り一週間…積もりに積もった負債を取り戻すには一日たりとて無駄にできないので、数少ない会員になっているホールからのメールを待ってイベント内容を吟味した。年末の回収期であることも手伝って食指が動くようなイベントは皆無だったが、その中から無理に選んだのがR店だ。

《本日、7絵柄が変則並びになっている台は3分の1で設定456確定!》

 何とも胡散くさいイベントだが、他はもっとヤバそうだったから仕方がない。一抹の不安を胸に入り口が開放されると同時にパチスロのシマに走ると…何だこれは! 7絵柄の変則並びということは、たぶん上・下段や斜めラインに揃っている台が「当り」ということなのだろうが、それに該当する台は1列に1~2台しかないじゃないか。それでいて3分の1で設定456というのはあまりにもショボいのと違うか?

 考えていても仕方がないので、とりあえずは目に付いた『鬼武者3』の右上がり7揃いの台をゲット。鬼武者にはもう1台だけ上段揃いの台があったが、当然のことながらどこかの誰かが押さえてすでに回している。願わくばコチラが当りであってくれよと祈るような気持ちで打ち始めると、意外にも2Kの投資であっさりとビッグを放出した。

 もしやリセット? だったら当り台を掴んだ可能性が大である。残念なことに連チャンはなかったが、もはや続行するしかないのだ。すると、追加投資17Kで、2チェ→斜めスイカのコンビネーションからバケを放出。次は持ちコインでビッグに繋がり、1日仕事が確定した…かに思えた。しかし、まさかそれがBET千鬼モードを引っ張って来て、5発もループするとはねぇ。

 ご存知の通り、鬼武者の天国モードBは設定6or5だとほぼループせず、逆に最もループ率が優遇されているのは設定1だ。つまり、高設定かもと考えたのは都合の良すぎる解釈で、実は設定1or3だったというわけである。さすがにこれでヤル気が失せた。向こうで上段7揃いを打っている兄ちゃんもハマりまくっていることだし…今日は帰ろう。

本日の収支
プラス4万円

【12月26日(月)晴れ】

 昨日の失敗に懲りて、今日は遠出して打つ気になった。選んだ店は電車で1時間以上かかる某区のI店である。

 今日のI店は月イチの超出玉イベントで、朝イチにセンター7揃いの台は2分の1で設定456とのこと。どこの店も考えるイベントの内容は似たようなものだなぁと苦笑しつつ、7揃いの『主役は銭形』をゲットした。すると、投資2Kで引いたタイプライター予告の4チェから、ゼニガタイムには突入しなかったがあっさりとビッグを放出。昨日に引き続き初当りだけは早いな…そう考えながら打っていると、これが思いきり高設定ぽい出方をする。まず、181G以内のボーナス放出が多いのは当然として、565Gを抜けることが極めて稀。これが高設定でなくて何だくらいの勢いで出まくったが、3G連を全く引けず、加えて初当りREGがことのほか多かったもので、結局はわずかなプラスに甘んじてしまった。

 2連勝…ではあるけれど、こんな勝ち方じゃあ全く追いつかないのよね。

本日の収支
プラス2万7千円

【12月27日(火)晴れ】

 除夜の鐘が鳴るまで残すところあと4日。いよいよ日数的に切羽詰まってきたが、今日も昨日と同じく朝早く家を出てI店へ。昨日打って出し切れなかった銭形の据え置きを狙ってみよう…と考えての行動だったが、朝イチのメールを見た瞬間に気が変わって『パチスロ北斗の拳』に着席した。

 今日は元々が「末尾7」の日で北斗のイベントデーなのだが、全81台設置してある北斗の全てが設定1or6だとのこと。どうせ割合的には圧倒的に1が多いのだろうけれど、隣り合った設定ならばわかりにくくても、1か6の二択なら特定役のヒキに騙されることがないだろうから、今日は北斗を打つのが正解だと判断したのである。しかも、I店はモバイルのサイトで台ごとの大当り回数・差玉情報・前日の最終ゲーム数を公開しているから、このテのイベントでは台選びに本当に役に立つのだ。でもって、自分が選んだのは最近ずっと出ていなくて、なおかつ昨日1回もBBを引いていなかったラオウパネルの某番台。もちろん、台選びにそれなりの保険は掛けてある。この台は昨日のラストで1565Gハマったまま当らずにヤメているから(モバイルサイトで確認)、もしも運悪く朝イチにハマっても、435G+前兆ゲーム数を消化して当れば宵越しの天井、すなわち設定据え置きと判断して即ヤメすることができる。後は周囲の状況をつぶさに観察して、勝負台を探せばいい。

 …とまぁ、随分と自分に都合の良い賭けだったが、どうやら今年の最後にきてやっとツキが巡ってきたのか、朝イチにわずか千円で引いた2チェからバトルボーナスにヒットすると(おそらくはリセット高確)、赤7青オーラという微妙な継続率示唆にもかかわらず7セット継続。のっけから千枚近いアドバンテージを獲得した上に、とにかくチェリー&スイカが落ちまくる。そして、特定役をカウントすることすら煩わしくなった頃、推定スイカBが北斗絵柄を直撃。これまた青オーラだったが、簡単に愛を取り戻した後は自分にとって鬼門の19セット目すらもクリアして伸びていく。これまで北斗における自己最高の連チャン記録はたかだか26セットだったのだが、もしかして夢の「大爆発画面」を見ることが叶うかも知れない…と思った途端にJACイン時のBGMがフェードアウト。連チャン終了を告げる「次の一撃がわれらの最後の別れとなるだろう」のセリフが流れてしまった。まぁ、4千枚も吐き出してくれて文句を言う筋合いはどこにもないが、それにしても29セットで終了するとはいかにも自分らしい。

 …ともあれ、その後も順調にBB初当りを引き続け、気がつけばすでに夜7時になっていた。目分量ではたぶん万枚をオーバーしていると思うが、この店のドル箱に慣れていないぶん自信がなく、とりあえずはモバイルサイトの出玉情報が更新(1時間ごとに更新)されるのを待つことにした。行きたくもないトイレに立ったり、飲みたくもないコーヒーを買いに自販機まで往復しながら待つこと数分…携帯の液晶画面に表示された枚数は+9800枚である。

 もはやこの台が「設定6」であることに疑いの余地はないし(特定役の出現率は5千Gで約37・7分の1)、本来ならばこのまま閉店まで打ち続けるのが正解なのはわかっている。だが、ここで退けば年間収支がギリギリでプラスに転じることが判断を鈍らせた。To be, or not to be, that is the question. しばしハムレットの心境を味わった後、自分が出した結論は「ヤメ」だった。ここまでがすでに出来過ぎなのに、この先も同じように出るとは限らないではないか。後ろ髪を引かれずにヤメたと言えば嘘になるが、年間収支23年連続勝ち越しという個人記録はそれほど安くもないのである。

 この時、来年の目標が見えたけれど今はただバラードのように眠りたい。

本日の収支
プラス19万6千円

11月までの収支
マイナス3万6千百円

12月の収支
プラス4万6千円

平成17年のトータル収支
プラス9千9百円

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