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◆10月◆ 相性の良さを再確認

 9月の末に編集部からの帰宅途中、高田馬場駅の手前で何かのはずみで足がもつれ、情けなくゴロゴロと転がった時のことを今も鮮明に覚えている。

 おそらくは一日の仕事が終わったことに安堵して、注意力が散漫になっていたのだろう。「あっ!」と思った瞬間には真っ黒いアスファルトの歩道が眼前に迫り、思わず突き出した左腕に全体重をかけてしまった。日頃から身体を鍛えているわけでもなく、大した筋肉も付いていない左腕は一瞬の内に悲鳴を上げ、そのまま左肩から落ちて柔道の受け身を取るかのようにぐるっと左方向に一回転した。この時、無意識の内に利き腕である右手をかばったのはスロッターとしての性なのか、それともただの偶然なのか自分でもわからないのだけれど、しばし悶絶した後に恥ずかしさのあまり一刻も早くこの場を離れようと、自己診断すらしないまま電車に飛び乗ったのが悪かった。帰宅して一息つくと、感覚がなくなっていた左肘が熱を持つようになり、腕を動かすたびに激痛が走るのである。

「これは、もしかすると折れてるな…」

 その日は腕の痛みに一睡もできず、翌朝になって近くの整形外科で診てもらったところ、医者の診断は「左肘関節の重度の靱帯損傷」だった。おそらくは骨が折れているか、そうでなくてもヒビが入っていると覚悟していただけにラッキーといえばラッキー。右腕は無事だから、少なくともパチスロを打つことには支障がないだろうと思ったのだが、次の瞬間に医者から放たれた一言が我が家の10月の家計簿に暗い影を落とすことになるとは…。

「とりあえず、左腕をギプスで固定しておきましょう。ギプスが取れるまで2週間、それから様子を見ながらリハビリをするということでいいですね」

 怪我をしたのは左肘なのに、何でまた左手首から左上腕部にかけて固定しなければならないのだろう。その疑問にも医者はきっちりと答えてくれた。

「手首を動かしたら必然的に肘の関節も動いてしまうんですよ。だから、腕全体を固めなきゃ意味がないんです」

 わかりました。つまり、2週間は何もするなってことなのね。もちろん、それでも右手だけでパチスロを打つことはできるけれど、左腕を吊ってパチ屋に行こうものなら周囲から「そうまでして打ちたいか」という蔑みの視線を浴びることは想像に難くない。この時期に稼働不能になるのは痛いが、まずは左腕の治療に専念しましょうか。

 そんなわけで、遅めの夏休みをむりやり取るハメになったのだが、それにしても左腕を使えないことがこんなに不便だとは思いもしなかった。まず、最も不便なのが入浴である。ギプスを濡らすわけにはいかないから、大きめのゴミ袋を左腕に被せ、腋の下で縛って湯船に入らなければならない。もちろん、左腕は常に上げた状態で…だ。これまで娘を風呂に入れるのは自分の役割だったけれど、さすがにこの役割は妻にバトンタッチせざるを得ない。更に、就寝にも一苦労。迂闊に寝返りをうつと腕がつっぱるので、ずっと仰向けに寝なければならないのである。しかも、いささか寝相の悪い娘に左腕を蹴っ飛ばされて、深夜に悲鳴を上げること数知れず。いやはや、日常生活にこれだけ困ったのは初めてである。

【10月11日(水) 晴れ/曇り】

 晴れてギプスが取れる日。さすがに2週間も休んでいては生活そのものに支障を来すので、今日は病院に行ったその足で編集部に向かい、リハビリがてら攻略ルームで『快盗天使ツインエンジェル』の設定看破実戦を行う予定になっている。

 しかし、やっとギプスが外れた爽快感とは裏腹に、パチスロを打つのはまだ無理だということを嫌というほど思い知った。2週間も固定した左腕は以前よりも一回り細くなり、筋肉が凝り固まって関節が曲がらないのである。しかも、リハビリのつもりで自ら希望したツインエンジェルの実戦では血も涙もない担当編集の陰謀(?)で設定1を打たされて、気分的にはもう最悪。残念ながら、仕事に完全復帰するのはもう少し先に延ばすしかなさそうだ。

【10月23日(月) 雨】

 凝り固まっていた関節が随分と楽に動くようになり、時おり走った痛みもほとんど感じなくなったため、ほぼ4週間ぶりにホールで打つことを決意。そんなおり、都合よく編集部から秘宝伝の実戦依頼があったので、今日は久しぶりにN店に朝イチから向かった。

 昨夜届いたN店からのイベント案内メールによると、どうやら今日は全6のシマが用意されているらしい。果たしてどのシマがそうなのか? 実に気になるところではあるけれど、残念ながら今日は仕事で秘宝伝を打たなければならない。そんなわけで、シャッフル抽選で整理券「9番」という最高のポジションを引き当てたにもかかわらず一目散に秘宝伝に走ったところ…。

 秘宝伝で思うような結果が出なかったのはさておき、まさかおそ松くんの全台に朝イチから「設定6」の確定札が付いているとは思わなかった。これを見た瞬間に魔が差して、ついつい良からぬ行動に出ようかとも考えたが、結局は仕事を優先して秘宝伝のシマに向かった自分を自分で褒めてあげたいと思う。もっとも、夕方には勝負を諦めて、微妙にボーダーに届かない千円18回転の「CR新世紀エヴァンゲリオン・セカンドインパクト」に突っ込んでいたのだが…。

本日の収支
マイナス1万3千円

【10月24日(火) 雨/曇り】

 昨日の実戦で左腕に違和感を感じなかったことに自信を得て、今日からいよいよ本格始動することにした。戦略は昨日の夕方に「設定6」と発表されたにもかかわらず不発に終わった、秘宝伝・某番台の据え置き狙いである。

 ところが、チャンス目からは良い感じで高確に突入するのになかなかST解除に結びつかず、たまさかに放出されるのはバケばかり。高設定の据え置きを信じて突っ込んでいるのでビッグを引かずヤメるわけにもいかず、やけくそ気味にツッパってやっと引き当てたビッグで25G中にハズレが5回。このハズレ出現率の高さはどう考えても設定6のそれではない。

 さすがにこれでヤル気が失せた。長いことパチスロから遠ざかっていたぶん勘が鈍っているのかも知れないが、今日のリハビリは随分と高くついた。

本日の収支
マイナス3万3千円

【10月25日(木) 曇り】

 今日もまた朝イチからN店へ。昨夜送られてきたイベント案内メールによると「明日は朝から刺さってます」とのことだったので、期待感モリモリで抽選入場に参加したところ、引き当てた整理券は何と65番。これではさすがに札台を押さえるのは無理だろう。しかしながら、このまま家にUターンできるほど心は強くないし、何より今はパチスロを打つことに餓えている。そんなわけだから、不利を承知で開店時刻を待つことにした。そして、先客でごった返すジャイアントパルサーのシマ(全台6の札がついていた)を素通りして、向かった先はいつもの鬼武者である。

 どうして、ここまで鬼武者にこだわるのか…正直言って自分にもわからないのだけれど、世の中には「相性の善し悪し」というものがある。そして、自分と鬼武者の相性は抜群に良いと考えている。何故なら、引き弱に苦しみながらも何とか年間収支でプラスが狙える位置につけているのは他ならぬ鬼武者のお陰だし、何より鬼武者に関する知識は誰にも負けない自信がある。それに、今年の対・鬼武者収支は大幅なプラスなのだ。つまり、もしも鬼武者だけを打っていれば…というのは苦しい言い訳に過ぎないが、まさに「溺れる者は藁をも掴む」の心境なのだ。

 ともあれ、そんなわけで座ったのは『鬼武者3』のカド台である。この台は、ここ数日ずっとマイナスを叩いており、いわゆる「設定上げ狙い」。むろん、朝イチにリセットの挙動が確認できなければヤメるつもりだったが、投資6Kで百鬼を経由してビッグが放出されたとなると、打ち続けてOKだろう。

 こうした状況においては、機種を熟知していることが大きな武器になる。続いては天国Aに移行したのか71Gでビッグを放出し、消化後のBETを叩いたところ千鬼モードに突入して1Gでビッグが連チャン。小役ゲーム中はチェリーを目押ししているので(出現せず)、たまたま天国Bで早いSTゲーム数を引き当てたのか、それとも1G連ベルを引いたのかは不明だが、次に天国Bがループしなかったことでがぜん高設定の期待感が高まった。しかも、通常時のチェリー&スイカの合算出現率は常に39分の1前後をキープしており、こうなれば何も考えず時間の許す限り打ち続けるだけである。

 その結果、9時過ぎまで打ってビッグ18回&バケ6回で3768枚のコインを獲得。数少ない高設定台を自力で掴んだと信じていただけに、夕方になって「本日、鬼武者は全台が設定4以上確定!」と発表された時には悄然としたが、鬼武者との相性の良さを再確認できた以上、何と言われようとも今年は鬼武者を打ち続けるつもりだ。

本日の収支
プラス6万9千円

10月のトータル収支
プラス5万5百円


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