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◆平成18年1月~2月◆ パチスロで家族を養いたい

 きっかけは去年の忘年会で『パチスロ必勝ガイド7』の誌上プロ・高梨さんから頂いた言葉だった。今年は収支的に随分と苦しんだけれど、昨日やっとスロ収支がプラスに転じたので心置きなく新年を迎えられそうです…と自分が報告すると、高梨さんは眉一筋動かさず次のように言い放ったのである。

「それは良かったですね。でも、普段から〝勝てる機種〟で〝勝てる立ち回り〟をしていないから年末に苦しむんですよ。そもそも広石さんって、パチスロで楽しむことを優先しているでしょう。それならそれで問題ないですが、だったら年間プラス収支にこだわるのは変な話ですよ。二兎を追う者は一兎をも得ずという諺もありますし、来年は楽しむのを我慢して勝利に徹しませんか?」

 まったくもって仰る通りである。一見して「楽しんで勝つスロ」と「勝つことに徹するスロ」は最終的な目標こそ同じように見えるが、両者の向かうベクトルは全く異なる。とりわけ、最近のパチスロは機械割の面でかなりのビハインドを背負っているので、楽しみながら勝てるほど甘くはないのだ。

 しかし、だからといって去年まで続けてきた23年連続勝ち越しの記録を今さら放棄するわけにもいかない。何故ならば、前号でも書いたように連勝記録は自分がガイドスタッフであり続けるアイデンティティーなのだから。

 思わず目をそらして考え込む自分を意に介さず、高梨さんは更に続けた。

「そうですね、さしあたり私は年間6百万円プラスを目指すので、広石さんはプラス百万円を目標にしましょう」

 年間でプラス百万円とは、今の自分にとって随分と高いハードルである。

「目標が大きすぎると思いますか。ならば月単位で考えて下さい。いきなり百万円勝とうなどとは考えず、8万4千円ずつ毎月勝てばいいんですから」

 なるほど、言われてみれば確かにその通りである。それなら何とかなりそうな気がしないでもない。それに私事ではあるけど、自分も今や家庭を持ち守るべき家族がいる。漫画家の星野誠一先生のように「パチスロで家族を養う」とまではいかなくても、生活費の足しにしたいという野望もある。結果、気がつけば高梨さんの手を取ってがっちりと堅い握手を交わしていたのだった。

 そんなわけで、前置きが長くなったけれど、私ことドラゴン広石はパチスロで年間プラス百万円を目指します。

【1月4日(水)晴れ】

 ガイドの若い衆に言わせると、スロプロの仕事始めは今年は1月16日以降とのことだが、思い立ったが吉日の自分はそれまで待つことができない。玄関で妻にゴミ袋を手渡され、娘には「パパ、今日もケンシロウを頑張ってね」というエールを受けて(何故だか娘はパチスロのことをケンシロウと呼ぶ)、新年初打ちに向かった先はN店だった。

 N店は昨年末にグランドオープンしたばかりの新規店だ。聞くところによるとオープン前にバイトを雇ってストック機の打ち込みを行ったらしく、その気合いの入り方はハンパでない。まだ開店から一週間かそこらしかたっていないし、いかに正月とはいえいきなり回収に走ることはないだろう。そんな自分勝手な解釈で並んだのだが、さすがに考えることは誰もが同じとみえて台取りのキツさときたらもう…。パチスロのシマに辿り着いた時には、どの台の下皿にもタバコやらライターやらが置かれており(おそらくはリセモ狙いの掛け持ち遊技。現在はその対策として入り口で配られる遊技札でのみ台確保が可能となった)、並びが後方の自分は朝イチに特典の無い『アラジン2エボリューション』を押さえるのがやっとだった。

 さて、どうしよう。勝つことだけが目的ならば不確定要素の多いアラエボなど打つべきではないが、設定に期待を持てるなら話は別である。そんなわけで打ち始めたところ、投資15Kでリーチ目っぽい出目が停止してバケが放出された。そして、その消化後に5G、9G、7Gと何とオール一桁ゲーム数でバケが連チャンしたのである。

 自分はアラエボにさほど詳しいわけではないのだけれど、この出方はもしかして…と思うまでもなく、次に引いたビッグでJAC中に宇宙に飛んだ。

 ま、まさかこれって、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ…。気が触れたわけではない。超高確。そう、超高確だ。

 噂によると超高確での平均連チャン数は10連。運が良ければ一撃数千枚ものコインを吐き出すため、声が上ずるのも仕方がない。もしや、今日だけで今月のノルマを達成できるかも…?

 しかし、その数分後に「夢は夢で終わるから夢なのだ」と理解した。何とそのビッグの消化後はぱったりとラクダが通過しなくなり、いつしか液晶も昼画面に戻っているではないか。そして残されたのは、下皿ガチガチに縦詰めされたコインのみ。世のなか広しと言えども、アラエボ最高のモードである超高確を射止めてドル箱を使えなかった人は自分の他にどれだけ居るだろう?

 ともあれ、次は超高確で得たコインを呑まれる直前にビッグを引くも期待した連チャンはなく、当たり前のように次は全呑まれ。本当ならばこの時点でヤメたかったが、頭上に「金」と書かれた札が刺さったのでヤメるにヤメられない。周囲では「銀」や「銅」と書かれた札も立っており、金札の意味するところはおそらく設定6。仕方なく後先を考えずに突っ込んで、結局は新年初打ちで大敗を喫してしまった。

 負けたからではなかろうが、何だか妙に身体がダルい。明日もあるから、今日は無理せずに帰ろう。そう考えてぐるりとシマを見て回ると、南国育ちに刺さった金札のボーナス履歴を見て愕然とした。南国育ちの設定6は単発と3連を繰り返すのが特徴だが、どう見てもこの挙動は設定6の出方ではない。つまり、金=設定6と考えたのは単なる幻想だったのだ。

本日の収支
マイナス7万8千円

【2月7日(火)雨/曇り】

 1月は悪夢だった。初打ちで信じられないような大敗を喫したのもさることながら、翌朝に身体がダルくて病院に行くとインフルエンザA型と診断されたのである。そして、ヤバいと思って寝室を別にしたが時すでに遅く、親子揃って仲良く一週間ほど寝込んだ。

 この時期のパチスロ店は風邪ウィルスの巣窟である。しかし、よりによってインフルエンザに引っ掛かるとは運が悪すぎるだろう。そして、運の悪さは月末まで続き、全快した後もスロの負債は増える一方だった。これでは、パチスロで勝って生活費の足しにするどころの話ではなかろうよ。しかもあれ以来、娘の態度が妙に冷たい。パパに近づくと風邪を伝染されると思っているのだろうか? 娘の学習能力の高さは実に喜ばしいことなのだが、父親の身としては極めて複雑な心境である。

 ともあれ、このままマイナス街道を進んでは去年の二の舞いなので、今日からはターゲット機種を変えて立ち回ろうと思う。狙いはN店の『鬼武者3』だ。

 鬼武者はとうの昔に旬を過ぎた機種であり、全国的に見ても設置台数は減り続けている。しかし、設定変更時の恩恵が非常に大きいために、設定を入れてくれるホールならこれほど勝ちやすい機種はないのだ。ちなみに、N店の例の札は機種によって意味合いが異なるらしく、必ずしも金=設定6とは限らないようである。ただし、少なくとも高設定に期待できるのは札台の平均出玉状況から考えて明らかだ。

 さて、そんなわけで座ったのは前日までずっと客側がマイナスを叩き続けていた某番台。今日あたり設定が上がるんじゃないかと踏んだのだが、一打目にハァハァと荒い息づかいでミシェルが登場すると「豹柄タンクトップでスイカ揃い→連続演出に発展せず」の特定役解除確定パターンが出現した。

 ところが、待てど暮せどボーナスが放出される気配はなく、この時点で設定変更が確定(鬼武者は設定変更後の1G目に限りガセのボーナス確定演出が発生することがある)。後は設定上げであることを祈るばかりだが、さすがに「同一設定の打ち直し」などという姑息な手段で客を騙す店ではなかったようで、投資13Kで喰い付くや深いハマリもなく順調にボーナスを放出し続ける。しかも、先月の不調の辻褄を合わせるかのように、夕方までに3回も天国B確定の千鬼モードに突入。そして、いずれも天国Bがループしなかったことで「設定6」を確信した。

 ここから先は完全なドル箱わっしょい状態である。日に何度か行われる設定発表では予想通り「金」が刺さり、閉店の30分前までブン回して流したコインは10917枚。まさか鬼武者で万枚を叩き出すとは思いもしなかったけれど、今日は気分よく眠れそうだ。

本日の収支
プラス20万5千円

【追記】

 この日の勝利が弾みとなって、2月はトータルでプラス28万円。1月のマイナス分を補って、何とか年間に百万円勝つための最低ノルマだけはクリアしたけれど、2ヶ月を振り返ってとんでもない事実が発覚してしまった。

 去年までの自分は、パチスロ必勝ガイドライターの義務と考え、自分の担当機種でなくても目に付いた新機種は必ず打ってきた。少なくとも、自分にとって面白いかどうかゲーム性の評価を語れる程度には…である。この基本原則に漏れた機種は、自分の行動半径内に設置店を見つけられなかったか、もしくは完全に旬を過ぎてから遭遇したかのどちらかだ。ところが、今年の自分はどうだろう。年が明けてすでに2ヶ月が経過し、その間に今後のパチスロの主流となる「5号機」が次から次へとデビューしているのに、2ヶ月間で打ったのは番長、吉宗、銭形、アラエボ、ジャグラー、それに鬼武者の6機種だけである。つまるところ、パチスロ必勝ガイドの表紙を華やかに彩るチーパオやキューティーハニーはもとより、クラッシュ・バンディクーも信長もキカイダーすらも触ったことがないのだ。

 これらの新機種はいずれも機械割が甘くないため、勝利を優先するなら4号機を打った方が良いに決まってる。だが、それでいいのか? いや、はっきり言ってパチスロライター失格である。なぜなら、パチスロライターは世の中のパチスロ事情の最先端を走っていなければならないのだから…。

 しかしながら、パチスロで年に百万円勝つという目標を今さら撤回するわけにはいかない。そんなわけで、来月からは新機種を打ちつつも勝利にこだわりたいと思います。…乞うご期待!

1月の収支
マイナス10万9千5百円

2月の収支
プラス28万円

1&2月のトータル収支
プラス17万5百円

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