◆8月◆ お盆のホールは危険が一杯
いやはや…自分のスロ収支をリアルタイムで誌面に晒すのがこれほど辛いことだとは思わなかった。思い起こせば当企画・浮草家計簿は、昨年の忘年会で高梨プロとの親睦中に「来年は勝つためのパチスロに徹してプラス百万円を目指します」と言ったのを、地獄耳の岩佐副編集長が聞きつけて誌面企画として立ち上げたのだが、今年も残すところ5ヶ月を切ったにもかかわらず未だにマイナス収支を彷徨っていたりする。
もちろん、この時の自分の発言は、酒の勢いに任せてついうっかりと口を滑らせたわけではない。パチスロに対して極めてストイックな高梨プロに感銘を受け、少しでも氏に近づきたいとの純粋な気持ちから出た言葉なのだ。しかし、自分は元々が「パチスロを楽しく打って結果的に勝てれば御の字」と考えて、ほとんど運だけで勝ってきたいい加減な人間である。「運も実力の内ですよ」と副編集長は慰めてくれるけれど、もはや自分の立ち回りに自信を持てなくなった。だから大負けを叩いて落ち込んだ時などは、心の奥底に潜む別人格の自分が心にもない自虐的なセリフを吐き捨てる。どうせなら、このままどん底まで行っちゃいなよ!
【8月1日(火) 曇り】
ダメ人間は自分で責任を負いたくないから何でも他人のせいにする。低設定台に座ってしまったのは店のせい、深いSTゲーム数と次回ボーナスでバケを選んだのは台のせい、ツキがないのは月のせい…というわけで、月が替わったらツキも戻るんじゃないかと都合よく考えて朝イチからN店へ。原稿ほったらかしで打ちに来たのは、文字量を出すのが遅い担当編集のせいである。
今日の狙いは、数日前に吉宗との入替で導入された『おそ松くん』だ。今はまだ新装期間につき高設定の据え置きもあるだろうと、前日にビッグ40回で万枚オーバーの台に意図的に座ってみたところ、何とコインを投入した瞬間に台枠ランプが点滅を始めた。慌ててフロアの隅にあるデータロボのチェックに行くと、どうやらこの台は前日の閉店直前にビッグ後を引き61Gを消化した時点で閉店を迎えたらしい。設定変更時には台枠ランプの状態が初期化されるだろうから、点滅が残っている以上おそらくは据え置きが確定(本当にそうなのかは不明)。だったら、後は何も考えずブン回すだけである。
すると初期投資こそやや嵩んだが、初の推定・高確チャンス目が見事におそ松チャンスを直撃。しかも、のっけからハイモードを引き当てたようで順調にループして、5連目で遂におそ松兄弟の全員捕獲に成功した。こうなればもうイケイケである。爆連モードの景気の良さはあちこちで耳にしているので気分は最高潮。もしかして、今日だけで年間収支がプラスになるかも?
ところが、信じられないことに僅か2回のループで連チャン終了。6人捕まえた次は必ず継続するわけだから、実質的には単発みたいなものである。この激しい落胆をどこに責任転嫁すればいいのか…答えは遂に出なかった。
本日の収支
マイナス1万5千円
【8月4日(金) 晴れ】
原稿ほったらかしで打ったために2日間ほど徹夜するハメになったが、今日からは晴れて自由の身である。そんな状況でN店から「本日は全機種&全パネルにMAX設定を投入」という会員メールが送られてきたら、3日前の怒りと落胆など奇麗さっぱり忘れてしまうから、我ながらダメ人間は怖い。
ともあれ、座ったのは勝手知ったる『鬼武者3』のカド3である。前日までの出玉状況を見る限り、このシマに最高設定を入れるならこれ以外に考えられないという状況だったが、朝イチの一打目にダダダダッと十数枚のコインを投入してレバーを叩いたところ、木箱+リプレイナビでチェリーが出現したにもかかわらずボーナス放出はなし。この時点でリセットが確定、さらには設定上げの可能性が濃厚になった。
そして、はやる気持ちを抑えてプレイを続けたところ、6Kの投資でビッグを放出したのを皮切りにハマリ知らずで大爆発。鋭い連チャンがないぶん出玉推移はやや緩やかだったが、夜8時までにビッグ18回&バケ8回を叩き出している以上、文句を言ったら罰が当ろうというものである。しかし、設定発表で札が刺さったのは、夕方まであまり稼働のなかった右隣だった。打っている最中は自分の台が最高設定だと確信していただけに、何かの間違いじゃないかとも思ったのだけれど、負けが混んでいる人間の心理として守りに回る気持ちが強くなってしまうのは仕方のないところ。そんなわけで、十分な時間の余裕を残して撤退した。
その後は、高設定札の付いたジャグラーを打ってチョイ浮き。しばらくして自分が捨てた鬼武者にも札が刺さったのは見なかったことにしておこう。
本日の収支
プラス11万3千円
【8月11日(金) 晴れ】
世間一般にいうと明日からはお盆休みということで、今日の夕方から妻の実家に泊まりに行く約束をしている。もちろん、ガイドの原稿書きは全て終わっているので夕方までは何をしていても良いわけだが、ホールに行って高設定をツモったところで打てるのはせいぜい4~5時くらいまで。ならば、自宅でゆっくりと休むのが正解だろうということで、実際にそうするつもりでいたのだけれど、N店から送られてきた意味深なイベント案内メールを無視することがどうしてもできなかった。
《本日はヤンキーVSちょんまげの対決を開催! 連想して狙って下さい》
ヤンキーの方は鬼浜爆走愚連隊だとすぐに連想できる。しかし、ちょんまげとはまた…。普通に考えれば鬼武者ということになるが、それなら「鬼&鬼対決イベント」とでも謳った方が遥かにわかりやすい。それを敢えてちょんまげとする意図は何なのだろう…?
一抹の不安は残るが、数日前に鬼武者の金設定を捨てて悔しい思いをしていた手前もあるので、何となく騙されてみる気になった。そんなわけで、狙いはもちろん鬼武者である。朝イチにメール会員の常連客がこぞって鬼浜と鬼武者に殺到したためにデータを見て台を選ぶ余裕などなかったけれど、何とか台を確保できて一安心。しかし、周囲を見渡しても高設定ぽい挙動の鬼武者は皆無である。これではいかんと空席の出来た鬼浜に移動したが(スイカ出現率が悪くなかった)、低設定と確信した時点でどうしようもなく投資が膨らんでしまっていた。どうやら、今日のイベントは「対決機種のどちらかがオール高設定」という内容だったらしいのだが、ちょんまげがまさか「信長の野望」を意味していたとは…。お盆期間中のホールは危険が一杯である。
本日の収支
マイナス5万円
【8月17日(木) 曇り時々雨】
結婚というのは本当に難しい。男女がお互い認めあい、黒髪に霜が降っても添い遂げることを誓って一緒になるところまでは何の問題もないのだが、同時に結婚は互いの家族との付き合いが始まることをも意味するのである。
お盆休み中、自分は妻の実家で四泊したのだけれど、妻に言わせれば実家に来ている時の自分はとても優しい男に変わるという。むろん、妻と娘と3人で暮らしている普段の生活では全く優しくないというわけではない。いつもは面倒くさがって休みの日は家で寝てばかりなのに、実家に来ている時に家族全員で遊びに行きたいと頼めば絶対にダメだと言わないし、皆で食事に行こうと誘えば結構値の張る料理を好きに食べさせてくれるそうである。
思うにこれは、お義父さんとお義母さんに対する精神的プレッシャーから来ているのではなかろうか。例えば血の繋がった家族であれば、二人っきりでリビングに居て、なおかつ終始会話が無くてもどうということはない。そこに居るのが当然なのだから、お互いが空気のようなものである。しかし、相手が妻の両親の場合には、会話が途切れると妙に気まずい空気が流れる。いきおい、妻の実家に来ている時にはお義父さんやお義母さんと二人きりになるのを極力避けており、だからこそ家族でどこかに遊びに行きたいと言われれば、これ幸いとすぐに喰いついているのだと思う。誰かが似たようなことを書いていたが、男が嫁の両親の前で平常心を保つのは至難の業なのだ。
そんなわけで、今年のお盆は幕張で興行中のボリショイ・サーカスを全員で観に行くやら、お誕生会と称して一席設けるやらで激しく散財(8月は妻の両親の誕生月)。だからこそ、実家から帰ってきた翌朝にN店から「本日は北斗の最強イベント。金設定多数」と書かれたメールが届いたら、散財した穴を埋めるチャンスだと気合いを入れて打ちに行くのも仕方がなかろう。
ところが、朝イチに北斗のシマに駆け込むと凄まじい違和感が…。何とN店ときたら、この期に及んで初代北斗を全台撤去して北斗SEに入れ替えていやがった。これでは無理だと考えて、そのまま家にUターンしたのも仕方ないのである。
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