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剱岳源次郎尾根

剱岳におけるバリエーションルートの中で最もポピュラーで変化に富んだ内容を持つ。本峰に真っ直ぐに突き上げる男性的な尾根。

剱岳東面の尾根として八ツ峰主稜と共に人気があり、左に平蔵谷、右に長次郎谷を従えた稜は日本離れした風景である。下部は樹林帯の木登りで、上部は岩を攀じりながら登高する。絶景の中で30mの豪快な懸垂下降が素晴らしいスパイスとなり、しかも終了点は剱岳山頂で満足度も高い。

たくさんの登山者を迎えている源次郎尾根だが、登られる方に是非お願いしたいことがある。

-ロープを残置しない

-お助け紐やクイックドローは回収する

-懸垂下降ポイントにスリングを足さない(全く必要ないです)

上記はいずれもゴミであり、景観を汚すので掃除がたいへんです。私も行くたびに外しているが、夏はキリがない状態です。

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今回は無雪期の源次郎尾根を紹介する。

「山と渓谷」「岳人」などで過去数回、ルートガイドを執筆させていただき、私自身も思い入れがあるルートである。

剱沢小屋を早朝出発して、明るくなる頃に取り付くことがお勧め。樹林帯の中は暑く、陽が登って気温が上がってからでは不快だ。

取り付きは時期によっては分かりづらい。晩秋の剱沢雪渓が下がった時期、暗い時間だとガイドでも迷っている方が多い。夏の時期なら目印のテープが概ね付いていて明瞭である。

踏み跡があるガレ場を登って行くと濡れた露岩に突き当たる。ここでロープを結び、長い一日が始まる。この岩場がフリーで登れなければ、この先後続パーティの迷惑になるので出直した方が良い。

バリエーション入門ルートということで、近年かなり舐めた方々が気軽に取り付き、他パーティに大顰蹙を浴びているケースが多い。クライミングジムではないので、岩は濡れるし、岩も外れる。よくあるSNS情報の「懸垂下降以外はロープが要らない」は、それなりに実力がある方々のルートコンディションが良い時の話で、落ちたらどうなるか想像力を良く働かせて、ひとつずつパートを慎重に処理して欲しい。

何度ルート上で行き詰まった人を助けたことか…。

剱岳という山の性格上、突発的な雨や雪など天候急変にも準備が必要だ。

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