荒野行動は死ね


俺たちが出会ったのはまだリリースしたばかりの静かで中華な荒野の地だった。
中部主城がCentral cityになり、今はセントラル街へと名前を変え、3年ぶりにインストールした俺の知っている建物は全てマイナーチェンジをしていた。

大学の授業をサボり、朝までVCをつけて顔も名前も知らない男女と見境もなく交流をしていた二十歳のあの頃、僕たちは出会った。
高校生と、社会人と子持ちと、色んな人がいた。
LINEグループに招待された時は緊張したけど、結局オフ会をするぐらいにはみんな仲が良かった。

やっぱり女性が少ないから、男同士の水面下での戦いも多くなる。
そのうち荒野行動内でオンラインの他に、取り込み中等のステータスを隠せる機能が増え、僕らはコソコソと仲良くしていた。人がやってるのを見るのは気持ち悪いが、それでもやっぱり、あれはどう見ても、青春だった。

3年ぶりに某配信アプリで仲良くしていた女の子に荒野を誘われた。もう戻らないと半分誓っていたものだから何度も断ったが、3年前からずっと人生に迷っていた僕はもう時効だろうと、半ばヤケクソな気持ちもあってまたあの荒野の地に降り立った。

女の子と二人でやる荒野。
かつてリア友と朝までVCで語り合ったあの荒野。
出会いも別れもいざこざもあった荒野。
建物の扉の位置や窓の構造は変わっても、街並みはあの頃のまま。
色んなことを思い出して、寂しくなった。

ログインすれば3年前の仲間がオンラインで、まさかまた会うなんて思ってもなかったけど、知らんふりでいた。

フレンドの欄を漁っていた。ゲーム内の仕様で「カップル」とか「相棒」とかは前からあったけど、「LINEの友達」だってさ。何だこれ。

そこを眺めたら、かつて好きだった人の名前がいた。
どうやらLINEを知っているとその人の荒野のアカウントがわかるらしい。
「最終ログイン七日前」はもうずっとログインしてない証。
でも「最終ログイン五日前」はさっきまでそこにいたってこと。

彼女と最後に話したのはもう一年以上前。
後日文面だけのやり取りもしたが、いまは絶交状態。

ゲーム内で何時間も、いや何百時間も共にした俺のマブダチがそこにはいた。

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