「スキル獲得の脳科学的アプローチ」⑨ 龍が遺してくれた言葉


はじめに

今日は長い引用文を掲載いたします。
何も言いません。
「スキル獲得」に興味があり、ここまでのnoteを読んでくださった方。
良かったら最後までお読みいただければ幸いです。
内容の解説、実際の応用方法などは次回以降のnoteに書きます。

龍が遺してくれた言葉

能率良く攻撃、防御を行うためには、全身のあらゆる力が統合されなくてはならない。
例えば、初めて行うスポーツに適応する能力には個人差がある。
たやすくこなし、動作が自然な人もいれば、緊張し、動作がぎこちなく、無駄の多い人もいる。
経験のある無しに関係なく生じるこの個人差は一体なぜに生じるのか?
それは神経組織と筋肉とを統合する能力の有無によるものである。
もちろん生まれつき統合能力の備わっている人もいれば、欠如した人もいる。
だが悲観することはない。
統合能力は誰にでも発達させることができるのである。

ある動作を起こそうとする時、筋肉の張力に変化が生じる。
この変化のプロセスを辿ってみよう。
脳からの命令が神経組織に伝達され、神経組織は特定の筋肉に刺激を送り、筋肉は適切な瞬間に収縮する。
ここで問題としているのは、神経組織が筋肉に送る刺激を如何に統合するかということなのである。
正確に統合された刺激は、要求通りの精密な強さで押し寄せ、もう必要無くなれば正確な瞬間にやむだろう。

間違えてはいけない。
統合を行うのは神経組織の訓練の問題であって、筋肉の訓練の問題ではない。
まったく不統合な筋肉を完璧に統合された筋肉へと変化させるには、神経組織内の関係を発達させるしかない。
神経組織内の何兆という数の分子は、各々が直接に接触はしないが、一つの神経細胞の繊維は他の細胞の繊維と極めて近接に絡み合っているので、刺激は一つの細胞から他の細胞へ「誘導作用」によって伝えられる。
この刺激が一つの神経細胞から他の神経細胞へ伝えられる接触点を「イロン連接」
(注:シナプス?)と呼ばれる。
ボールを見て全く不統合な反応しか示さなかった乳児が、やがてすばらしい野球選手になりうるのは、この「イロン連接」
(注:シナプス?)のおかげである。

どうすれば神経組織内に正確な接続を結ぶことができるのかといえば、それは訓練によるしかない。
一定の行動は実行されるたびに関連する接続を強化し、次の実行をより容易に、より確かに、より敏捷にできるようにする。
一つの動作を繰り返し行うことで、その動作は正確に、自然になる。
使わなければ一度作られた接続を弱め、その行動の実行を一層難しく、不正確にするだろう。

実行すること、練習すること、繰り返すことによってのみ、我々は技術を得ることができるのである。
重要なのは絶え間ない練習である。
実行すること、あるいは反応することによってのみ、我々は覚えるのである。

筋肉はそれ自体を導く能力を持たない。
筋肉はどのように神経組織が導いてくれるのかによって完全に支配される。
タイミングのずれた、不正確な動きが、神経組織によって誤った筋肉に伝達された刺激によるか、またはほんの何分の1秒か遅く、あるいは早く伝達されたかによるのである。

動作がぎこちなく、常に適切な間合いを見つけることができないファイターは、相手の虚をつくことは決してできず、自分の企てを相手に悟られてしまう。
統合がうまくいっていないからだ。

よく統合されたファイターは、全てを「順調」に「優雅」に行うのである。
タイミングよくリズミカルに動くことができるので、あらゆる局面において相手に優位に立つことができる。
何よりもまず、よく統合されたファイターは、自分の動作を目的を持って行うことができる。
自分に対して確信を持つことができる。

刺激に対して反応する準備ができていれば、その反応に満足を覚えるだろう。
スピード、耐久力、威力、機敏さ、正確さ、いずれも良く統合された筋肉から生まれる。

繰り返し練習すること、それがチャンピオンになる道だ。

ただ一つ気をつけることは、疲労している時は精密な熟練を要求する動きを練習してはいけないということである。
疲労している時には細かい動作を大雑把な動作に置き換えたり、特定の努力を一般的な努力で代用したりし始めるからである。
誤った動作は進歩を阻む。
疲労してきた時には、主として忍耐力を要する動作の練習に努めるべきだ。
自分自身が新鮮である時だけ繊細な技術を発揮することができるのだということを忘れてはならない。

ブルース・リー


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